「地獄の吸血イカ」と呼ばれる不思議なタコがいる!? タコなのか、イカなのか? その正体とは

「日本一のタコ博士」が教える「タコ入門」(4)

池田 譲

「地獄の吸血イカ」と呼ばれる生き物がいます。

えっ? イカって血を吸うの?
いいえ、イカはタコの親戚ですが、イカもタコも血は吸いません。
地獄の吸血イカは、コウモリダコという名前のタコとイカの仲間です。
イラスト:まいまい堂
すべての画像を見る(全5枚)
コウモリダコは深海に暮らしています。そのため、生きた姿は誰も知りませんでした。死んだ標本から想像されたのが、おどろおどろしい吸血イカだったのです。アメリカのモントレー湾水族館研究所の調査チームがROVを水深600メートルから900メートルの深海に沈め、コウモリダコの生きた姿を撮影しました。

その映像を見ると、コウモリダコは全長が30センチほどの大きさで、体全体がくすんだ赤紫色、ビー玉のような青い色の目をしています。傘膜(さんまく)がはった腕をバフリバフリと動かして、ゆっくりと深海を泳ぎます。

と、次の瞬間、8本の腕を大きく広げて裏返し、外套膜(がいとうまく)のほうにピタリとくっつけました。すると、腕から出ているトゲトゲしたヒダがまるでサボテンの棘のように並んでいます。このヒダは吸盤に沿って生えている皮膚の一部です。

腕が8本ならコウモリダコはタコなんじゃない? 名前もタコだし。
そうですね。どうしてコウモリダコが吸血イカなのかというと、8本の腕に他に細長くヒョロロと伸びる2本の触手があるからです。

これらの触手を腕と見ればコウモリダコの腕は全部で10本となり、腕が10本ならイカとなります。鰭(えら)があるのもイカのように見えます。
次のページへコウモリダコの正体は一体…?
17 件