春に子育てをするツバメ 暑い夏ごろにはどこに行ってしまうの?

【ちょっとマニアな夏の生きもの】サイエンスライター・柴田佳秀先生が見つけた生きもののふしぎ

生きものジャーナリスト:柴田 佳秀

ツバメの巣を見たことがありますか?


「お家の玄関にあるよ」、「学校にある」、「近所のお店でみたことがある」などなど、こんな答えが返ってきそうです。

渡り鳥であるツバメは、春に日本へやってきて、家の軒下などに巣を作り、子育てをします。大きな口を開けてエサをほしがる元気なヒナたちの姿は本当にかわいいですね。でも、そんな姿を見られるのはだいたい7月くらいまで。

夏の暑い頃になると、ツバメの姿をまちでは見かけなくなります。はてさて、ツバメはどこに行ってしまったのでしょうか? もう、南の国へ飛んでいってしまったのでしょうか。

じつは、ツバメはまだ日本にいます。昼間はエサの虫がいる田んぼや川の近くにいて、夜は川や湖の岸辺にあるヨシ原(ヨシという草がたくさんはえた草原)に集まって寝る生活をしているのです。鳥の寝る場所を「ねぐら」といいますが、大規模なものになると、ツバメの数は数万羽にもなります。
ツバメのねぐら 撮影/柴田佳秀
ツバメがねぐらに帰ってくるのは、日が沈むとき。それまでほとんどツバメなんか飛んでいなかったのに、太陽が地平線に沈んだころに、いつの間にか空がツバメだらけになります。

そして、10分くらい飛び回ったあとに、ヨシの茎に止まりはじめ、そのまま眠ってしまいます。水辺のヨシ原は地上から肉食動物が近づけない安全なところ。ツバメはそのことを知っているので集まってくるのです。

日本でツバメが生きていくには、巣が作れるまちの建物と、寝る場所になるヨシ原の両方が無いとダメなんですね。ツバメがヨシ原にねぐらをつくる8月には、日本野鳥の会が主催の観察会が開かれることがあるので、インターネットで検索してみてください。

数万羽のツバメは迫力満点。きっと忘れられない光景になりますよ。

【ツバメのねぐら】撮影:科学ジャーナリスト・柴田佳秀先生

しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。