夏休みに絶対やりたい“虫遊び”と本当に楽しめる自由研究を専門家が伝授

こんちゅうクンに聞く「夏休みにやりたい“虫育”」#3 ~夏の昆虫遊び~

磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長:こんちゅうクン

こんちゅうクンが考える昆虫食の意味

夏休みの一味変わった昆虫の楽しみ方として、こんちゅうクンは「昆虫食」もおすすめします。こんちゅうクンは昆虫食好きとしても知られていて、子ども向けの昆虫食イベントも開催しています。

2023年2月、徳島県の県立高校で希望者が昆虫食を試食したことが、ネットで大炎上。こんちゅうクンは大炎上の情報の伝わり方を問題視しながらも、昆虫食への世間の嫌悪感も再認識し、改めて昆虫食の意味を考えたそうです。

「僕も昆虫食が嫌いだという人から『なんで食べるんですか』『こんなもの食べなくてもいいじゃないですか』と言われたことがあります。僕は昆虫食が嫌いな人はいていいし、嫌いなら食べなくてもいいと思っています。

でも僕はいろいろ食べてきました。初めて食べたのが素揚げしたセミで、あまりにもおいしくて驚いたんです。信州では今もイナゴやハチの子を伝統食として食べています。海外にも昆虫を食べる文化はあります。

今回、昆虫食が炎上したけれども、そもそも昆虫食が注目を集めたきっかけは、2013年に国連が食糧問題の解決策の一つとして推奨したことでした。豚や牛の飼育ではコストやメタンガスの問題があるので、代替食として打ち出されたのが昆虫食だったんです。

全部コオロギでまかなうのは、僕も無理だと思います。豚肉のほうが好きですし(笑)。みんなもそうだと思うんです。だけど体験したり、昆虫を知ったりすることで、食糧問題や食文化について考えるきっかけにもなります。

これは食育にもつながります。今まで無頓着に肉や魚を食べてきたのに、昆虫を食べるとなるといきなり命を身近に感じるんです。これは今まで感じていなかった、肉や魚の命をいただくありがたさにもつながります。昆虫食はただの代替食としてではなく、教育的な側面もあるのが魅力だと思っています。

無理強いはしません。でも昆虫を食べてみたいという子はいるので、そういう子どもたちのためにイベントを企画したり、情報を発信したりやっていきたいです」(こんちゅうクン)

自分の「好き」に胸を張れる生き方を

子どものころから昆虫が大好きで昆虫の魅力を伝える活動をしているこんちゅうクン。小学校への出張授業では、子どもたちに「自分が好きなものを貫いてほしい」とも伝えているそうです。

「来館する子どもの中には、『学校ではゴキブリが好きって言えない』という子もいるんです。ここにはゴキブリの研究者もいますし、ゴキブリ好きが集まってきます。でもそうではないところでも、自分の好きを尊重できるようになってもらいたいなって思います。

いまは人と違うことを言ったり、行動したりしづらい世の中だと思うんです。人と違うことを言うとすぐにSNSで叩かれる。でも自信を持って周りの目を気にせずに自分を貫いてほしい。

自分の得意分野を理解して、それをどう生かすかが、すごく大事になってくるのではないかなと思います」(こんちゅうクン)

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あらゆる生物種の中で最も多様化し、進化してきた昆虫たち。その小さな命から、我々大人が学ぶこともたくさんあります。

虫取り網で捕まえた昆虫は奇跡の命をもった1匹。そんな視点で夜や早朝の昆虫ワールドを親子でのぞいてみるのもいいかもしれません。

取材・文/大楽 眞衣子
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こんちゅうクン

磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長

北野伸雄(きたののぶお)。1985年生まれ。幼いころから昆虫が好きで、九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)に勤務し、2020年に館長就任。静岡県内外での出張授業や講演活動を通して、子どもから大人まで幅広い世代に昆虫の魅力を伝える活動を展開している。 著書に『みんなの昆虫学校』(くまふメディア制作事務所)、『こんちゅうクンのいちばん虫ずかん』(シャスタインターナショナル)があるほか、『百人一首風みんなのこんちゅう和かるた』(くまふメディア制作事務所)も制作。サッカーJリーグ「ジュビロ磐田」のジュビロクラブアンバサダーも務める。保育士資格取得。クワガタメガネがトレードマーク。 ●磐田市竜洋昆虫自然観察公園

北野伸雄(きたののぶお)。1985年生まれ。幼いころから昆虫が好きで、九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)に勤務し、2020年に館長就任。静岡県内外での出張授業や講演活動を通して、子どもから大人まで幅広い世代に昆虫の魅力を伝える活動を展開している。 著書に『みんなの昆虫学校』(くまふメディア制作事務所)、『こんちゅうクンのいちばん虫ずかん』(シャスタインターナショナル)があるほか、『百人一首風みんなのこんちゅう和かるた』(くまふメディア制作事務所)も制作。サッカーJリーグ「ジュビロ磐田」のジュビロクラブアンバサダーも務める。保育士資格取得。クワガタメガネがトレードマーク。 ●磐田市竜洋昆虫自然観察公園

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」