夏休みに絶対やりたい“虫遊び”と本当に楽しめる自由研究を専門家が伝授

こんちゅうクンに聞く「夏休みにやりたい“虫育”」#3 ~夏の昆虫遊び~

磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長:こんちゅうクン

チョウやトンボが舞う磐田市竜洋昆虫自然観察公園。園内には昆虫が好む植物がたくさん植えられている。  写真:大石真弓
磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)の大人気館長として、活躍する「こんちゅうクン」こと、北野伸雄さん(37)。クワガタメガネと半袖半ズボンがトレードマーク。館内ではいつも子どもたちに囲まれる人気ぶりです。

これまで1万人以上の子どもたちに昆虫のおもしろさを伝えてきたこんちゅうクンに、夏休みだからこそ楽しめる昆虫遊びについてインタビューしました。
※3回目/全3回(#1#2を読む)
こんちゅうクンPROFILE
北野伸雄(きたののぶお)。1985年生まれ。磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長。幼いころから昆虫が好きで、九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)に勤務し、2020年館長就任。静岡県内外での出張授業や講演活動を通して、子どもから大人まで幅広い世代に昆虫の魅力を伝える活動を展開している。

夏休みに絶対やるべき 昆虫レジャー

朝から鳴り響くセミの声──。夏は昆虫たちの動きが活発になる季節です。比較的、時間に余裕があり、ちょっぴり夜更かしもできる夏休みは、昆虫観察の絶好のチャンスとも言えます。

手軽で興味深い昆虫観察について、磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)の大人気館長、「こんちゅうクン」こと、北野伸雄さん(37)に伺いました。こんちゅうクンのおすすめは定点観測です。

「毎日同じ時間に庭や公園に来る虫をチェックする。それだけで定点観測になります。ゴマダラカミキリやケラ、コガネムシが来るかもしれません。場所と時間を決めて毎日観察します。夏休みだから保護者も一緒なら夜でもいいですね。

公園の一角だけでもいいです。晴れと雨の日の違いもあるかもしれません。1本の木だけでもいいです。その樹液を観察して、どんな虫が集まるかを定点観測します。

セミがたくさんいる木もいいですね。セミは何匹かな、と調べて記録するだけでもおもしろいです」(こんちゅうクン)

夏休みこそ真夜中の昆虫ワールドへ

たまには夜更かしもOKな夏休み。夜の時間を使った親子の昆虫探しもおすすめです。

「夜の街灯を回ってみるとおもしろいですよ。これは車での旅行中も楽しめます。山が近い道の駅やサービスエリア、コンビニに立ち寄って虫を探すとおもしろいです。

街灯を見ると運がよければカブトムシやノコギリクワガタ、シロスジカミキリ、シンジュサンがいることもあります。

でも最近はLED化が進んでいて、虫が集まりにくいんです。LEDは紫外線が少ないからです。なので古い街灯、水銀灯付近のほうがおすすめです」(こんちゅうクン)

昆虫採集が楽しめることも夏の醍醐味です。やみくもに探すのではなく、どんな習性があるか、どんなエサを食べるか、どうやって飛ぶかなど、予備知識を備えて臨むとより捕獲率も上がるそうです。

「例えばカブトムシだと夜はどこにいるか、昼はどこにいるかを本やネットで調べておくと、昆虫採集も楽しくなります。

バナナトラップもおすすめです。焼酎に浸したバナナをストッキングに入れてカブトムシがいそうな木に巻きつけて、夜8時ごろ、または朝5時ごろ見に行くんです。

捕まえ方にもコツがあります。高いところにいるクワガタは網で下からつつくと捕まえやすいです。自分が使いやすい網をハンガーとみかんのネットで手作りするのもおもしろいですよ」(こんちゅうクン)
セミの捕り方を実演するこんちゅうクン。「虫の種類ごとに点数をつけて、親子で競い合うのもおもしろいですよ」  写真:大石真弓

自由研究のためはNG! 「楽しい」を突き詰め本来の自由研究を

夏休み✕昆虫というと、自由研究のネタにつながりそうですが、宿題の自由研究のための昆虫採集ではなく、楽しいことを突き詰めるための自由研究をこんちゅうクンは推奨します。その背景にはハイレベル化しすぎている自由研究の在り方への懸念もあります。

「定点観測もそうですが、おもしろくてついやっちゃってること、楽しいこと、遊んでいることを自由研究につなげられるといいなと思っています。子ども自身が知りたいと思うこと、楽しいことでないと継続しないからです。

うち(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)でも自由研究の相談会を開いていましたが、親御さんのほうが熱心なケースもあります。

個人的には賞をとるかどうかは二の次だと思っています。今は子どもの力だけでは無理だろうと思われる研究が受賞するケースも珍しくありません。

本来、自由研究は本当に“自由”なんです。自主性、主体性を持って楽しめる自由研究をおすすめしたいです。子どもが楽しんでいることをどうやって研究に持っていけるか、というアドバイスができる大人がいるといいですね」(こんちゅうクン)

2021年、埼玉県の小学6年生の男の子が、カブトムシが夜行性とは限らないことを自由研究で突き止め、アメリカの専門誌で紹介されました。小学生でも大人顔負けの研究ができることが話題に。

身近な昆虫でも興味があれば独自の視点を持つことができ、大発見につながることを証明した昆虫研究でした。こんちゅうクンも「発想がおもしろかった」と絶賛します。

これまでに見てきた自由研究でおもしろかった事例を伺いました。

「バッタのジャンプ力を測る、というおもしろい研究がありました。種類や大きさによっても違うかもしれないので、その違いを楽しむという内容です。

スタートラインからピョンと飛んで測るという子どもらしい発想でした。こういう簡単だけど発想がおもしろい、という研究がいいと思います。

あとはカブトムシの幼虫について研究する子もいました。となると、夏だけじゃなくて1年かけて研究しているんですね。僕らでも驚くほど上手に幼虫を飼育している子もいます。好きだから続けられることです。

ほかには昆虫食を調べる子もいました。どれも楽しんでやっているのが伝わる内容で、そういう研究がいいなと思います」(こんちゅうクン)
次のページへ昆虫食から学ぶこととは?
16 件