体温を保つクロマグロ

時速100km以上の高速で移動できるひみつとは?

広い大海原を泳ぎまわるクロマグロ。体長3m、体重350㎏以上にもなる巨体が、群れをなして泳いでいる光景はさぞかし豪快なものでしょう。
日本人とのつながりも古く、貝塚の中から貝殻に混じってマグロの骨が見つかっています。
石器時代の昔から日本人はよくマグロを食べていたのですね。

しかし、その生態についてはあまり良く知られていなかったようで、昔は日本近海のクロマグロと、アメリカのカリフォルニア沖のクロマグロは別の種とされていました。しかし、日本近海から標識をつけて放流したクロマグロが、ちょうど2年後にアメリカ西海岸で捕獲され、さらに、アメリカ西海岸で放されたものが、その後日本近海で捕獲されて、それらは同じ種であったことがわかりました。
クロマグロは太平洋を横切って1万8千㎞にもおよぶ旅をしていたのです。

そんな広い範囲を、ときには時速100km以上の高速で移動できるのには、ひみつがあります。
みなさんもご存じのとおり、魚は変温動物で、体温は周りの水温とほぼ同じはずですが、なんと、クロマグロは、体温を温かく保つことができるのです!

体の中心部の体温は、周りの水温よりかなり高く、水温の低い海中でも、筋肉の活動の低下を防ぎ、高速で泳げる仕組みをそなえているのです。
クロマグロは、太平洋の南北に広い範囲を生活の場にしていて、その水温は5℃~30.5℃と幅があります。このように広い水温でも快適に暮らせるように、毛細血管からなる特殊(とくしゅ)な熱交換機(ねつこうかんき)を体内にもち、体温を保つ機構が発達しているのです。水温の低い所にいるときには、マグロの体温は、周りの水温より10度以上も高いときがあるそうです。

<参考資料>
鈴木克美『魚の本』1975久保書店
中村泉『マグロ学』2011講談社

■関連:「魚」138-139ページ