ミズウオの胃に入っていたものとは!?(EX MOVE 深海の生きもの)P47に関連
2017.05.10
◆なんでも飲みこむ大食らいの魚◆
大きな口とするどい歯をもち、なんでも食べてしまう深海魚のミズウオ。
この魚の胃を調べると、ふだん私たちには見えない海の中のようすが見えてきます。
44尾のミズウオの胃を解剖した調査では、1尾の胃の中から、平均でおよそ20種の生きものが見つかっています。
胃に入っていた生きものは、表層から深海底近くにすむものまでさまざまです。
海の中で出合ったものはなんでも見境なく食べてしまうようです。
<胃袋に入っていた生きものは?>
調査全体でミズウオの胃から特に多く見つかった生きものは、軟体動物ではアカイカのなかまが計31個体、節足動物ではオオタルマワシが計141個体、原索動物ではサルパのなかまが計273個体、魚類ではマアナゴが計160個体でした。
ミズウオがこれらを好んで食べているというよりは、海中でのこれらの生きものの生息数が多く、出会いやすいのではないかと考えられます。
またこの調査では、ユウレイイカやテンガイハタなど、まれにしか採集されないめずらしい深海生物も見つかりました。
<ミズウオが伝える深海のゴミ問題>
ミズウオの胃からは、しばしばビニール袋などのゴミも出てきます。
2000年代前半の調査では、海岸に打ち上げられたミズウオのうち、なんと75%の個体がゴミを飲みこんでいたといいます。
人間が海にすてたゴミが深海をただよい、生きものたちに影響を与えているのです。
<子孫を残すための戦略!>
ミズウオには、実は雌雄同体という特ちょうもあります。
一般的な動物はオスが精巣、メスが卵巣をもち、オスとメスが出会って子孫を残します。
しかしミズウオは、ひとつの体に卵巣と精巣を両方もっています。
深海では繁殖の相手と出会う機会が少ないので、ほかのミズウオと出会ったら子孫を残すチャンスをむだにしないよう、いざというときにはオスとメスどちらの役割も果たせるようです。
生きものの数が少ない深海で生きのびるための戦略です。