『ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK vol.18』はシリーズ初の「原点回帰」作品『ゴジラ対ヘドラ』だ!

祝『ゴジラ-1.0』アカデミー賞視覚効果賞ノミネート!  強烈な「社会的メッセージ」を放つゴジラ映画の魅力

テレビマガジン編集部

山崎 貴監督作品『ゴジラ-1.0』の第96回アカデミー賞視覚効果賞ノミネート(大賞の発表は日本時間2024年3月11日月曜日午前8時から)は、あらためて「ゴジラ」という作品の世界的影響力の大きさがうかがえる出来事でした。

本作のゴジラは、第1作の『ゴジラ』(1954年公開)同様「核」のメタファーとしての性質をもち、最新のVFXでより強大な「恐怖」を纏った存在として見事に描かれていました。

今回はこのゴジラ映画のもつ「恐怖」という側面から、1971年に制作された『ゴジラ対ヘドラ』をご紹介します。

文明批判的なメッセージこそがゴジラ映画において重要な要素だと見直され、キャラクター路線からの「原点回帰」をめざした作品の背景にあるものとはなんだったのでしょうか?
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「公害怪獣 ヘドラ」誕生!

1970年代初頭、第2次怪獣ブームの後押しを受け、「あたらしいゴジラ映画」を製作するにあたりヒントになったのが、東京で起こった「光化学スモッグ」事件や全国各地の公害訴訟といった社会問題でした。

豊かになる人々の生活の裏で大きくなる公害を最大の「悪」として据え、誕生したのが「公害怪獣 ヘドラ」だったのです。

隕石に付着して飛来した鉱物性生物「ヘドリューム」が、ヘドロの中で汚染物質を食料にして成長し、当初のオタマジャクシ程度の姿から複数の同個体が融合することで巨大化。

やがて海坊主のような怪獣へと変貌し、田子の浦(駿河湾西岸)からついに日本に上陸します。
のちのデストロイアやシン・ゴジラにもみられる「変態」という要素も、ヘドラの大きな特徴である。  ©TOHO CO.,LTD.

「恐怖映画」としての原点に回帰

1954年公開の第1作『ゴジラ』では、街をゆく水爆の化身の足元で被災する人々にフォーカスすることで「もう、どうしようもない」恐怖・絶望が描かれていました。

一方、あらゆる公害を吸収して巨大化したヘドラもまた、市井の人々に数々の災難をもたらします。

雀荘で遊戯に明け暮れるサラリーマン、ビルの屋上看板の作業員、運動中の生徒たち……皆ヘドラから飛散する有害物質で次々と被害に遭うのですが、その描写の残酷さたるや……。

そんなヘドラの進撃にくわえて、人々の前に突如姿をあらわしたゴジラ。2大怪獣を前に、果たして人類に生き残る未来はあるのでしょうか……!?

ちなみに、この戦いでゴジラを満身創痍の状態にまでボロボロにしたヘドラこそは、最強のライバル怪獣といっても過言ではない! と、筆者は思うのです。
ヘドラと激突するゴジラは、人類の味方ではなく「怒れる生態系」の代表なのだ。  ©TOHO CO.,LTD.

アート性の高い映像表現と主題歌

サイケデリックな映像と共に流れる主題歌「かえせ!太陽を」はこの作品を語るうえで欠かせない要素であり、同時にこの時代の若者文化が当時のアメリカのカウンターカルチャーというものに大きな影響を受けていたことを興味深く伝えます。

「豊か」であることの裏に公害という「危うさ」を内包した社会に対し、当時の若者が何を感じ、どう動こうとしたのか。

本編ラストの舞台となる富士の裾野では、主人公の一人である若者は仲間を集め、ヘドラという「社会悪」に対して驚きの方法で対抗します。

昨今の「怪獣映画」とは一線を画し、アヴァンギャルドやカルト的と評される怪作『ゴジラ対ヘドラ』を、ぜひとも本書と共にご覧になってみてはいかがでしょうか。
アングラバーでキマッている主人公の目に映る客たちの顔は皆……?  ©TOHO CO.,LTD.
【書籍情報】
『ゴジラ&東宝特撮OFFICIAL MOOK vol.18 ゴジラ対ヘドラ』
価格:税込定価 880円
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ゴジラ&東宝特撮OFFICIAL MOOK vol.18 ゴジラ対ヘドラ(税込定価 880円)発売中  ©TOHO CO.,LTD.
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テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga