『汝、星のごとく』凪良ゆうが生きづらさを抱える子へメッセージ「自分を不安にさせる場所に居続けるために、自分を削る必要はない」

本屋大賞作家・凪良ゆう特別インタビュー

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『流浪の月』『汝、星のごとく』で2度の本屋大賞を受賞した作家・凪良ゆうさん。多感な思春期、生きづらさや孤独を感じていた凪良さんの心を救ったのは、多種多様な物語の世界でした。

「大人の期待に応えることがすべてじゃない」「無理をして自分を削る必要はない」──。小学生向け実用書『世界一たいせつなあなたの心をまもる本』の序文も手掛けた凪良さんに、自身の原体験や読書のあり方、そして現代を生きる子どもたちへのあたたかなエールを伺いました。
世界一たいせつなあなたの心をまもる本

世界一たいせつなあなたの心をまもる本

ナカムラ アヤナ(絵) 凪良 ゆう(序文) 西坂 小百合(監)

発売日:2026/10/30

価格:定価:本体1800円(税別)

──思春期のころに出会った小説や漫画のなかで、夢中になった作品を教えてください。

凪良:小学生から中学生のころは、漫画をたくさん読んでいました。小学校低学年で熱狂したのは、『ベルサイユのばら』や『リングにかけろ』です。思春期真っ只中の中学生のころは、高橋留美子さんの『うる星やつら』、吉田秋生さんの『吉祥天女』、成田美名子さんの『CIPHER』、清水玲子さんの作品すべて、などが特に好きでした。

子どものころは情緒もあっという間に豊かになっていくので、年齢ごとに夢中になる作品も変わっていった記憶があります。悲しいとき、落ち込んだとき、淋しいときは、その時々の状況にあわせて、さまざまな作品が心を救ってくれました。わたしにとっては気持ちの向くまま、多種多様な創作物に触れられたことが一番の救いでした。

──子どものころ、文章に触れること自体にはどんな想いや体験がありましたか。その体験には、作家を目指すようなきっかけがあったのでしょうか。

凪良:幼いころから物語が慰めや救いでしたし、書くことは好きだし得意だったし自由に書いているときはとても楽しかったです。でも学校の作文などで教師から好まれたのはほどほどに手を抜いたもので、全力で書いたものほど「子どもらしくない」という理由で受けが悪かったです。

同じ理由で卒業文集に載せる作文は書き直しをさせられました。再提出した『子どもらしい』作文に教師は満足そうで、大人って……とモヤモヤしたことをこの年齢になっても覚えています(笑)。

幼いころは親や教師という存在はとても大きく感じられますが、大人も不完全なひとりの人間で、間違うこともあるし、大人の期待に応え続けることが常に正解とは限らない。それを知っておくだけで心が軽くなることもある……というのは自身の体験から学んだことです。

──特に現代を生きる10代の子どもたちに、読んでもらいたいおすすめの作品はありますか。

凪良:中学生や高校生なら、伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』、辻村深月さんの『嚙みあわない会話と、ある過去について』、大島弓子さんの『秋日子かく語りき』、よしながふみさんの『フラワー・オブ・ライフ』をぜひ読んでほしいと思います。
──読者から届いたメッセージで、心を動かされた言葉や、執筆の糧となった言葉はありますか。

凪良:メッセージはすべてありがたく受け取っていて、応援や感想の言葉すべてが励みになります。読んでいておもしろいと思うのは、感想って最初の数行だけで、そこからは「わたしは~」という読者さんの自分語りになることが多いことです。

みなさん物語の中に自分の欠片を見つけて、「自分自身の物語」を読んでいることが伝わってきます。わたしが書いたひとつの物語が、それぞれの読者さんの中で、無数の色とりどりの万華鏡のように展開しているのだと思うと、とても不思議で嬉しい気持ちになります。

──読書体験は、誰かと分かちあうべきだと思われますか。それともひっそりと一人で楽しむべきでしょうか。

凪良:正直に言うと読書は自分の心の領域というか、中でもとても繊細な部分と共鳴するものなので、あまり分かち合うという意識がありません。たまたま読んだ本が同じで感想を言い合えたりするのは楽しいと思う一方で、すべてを言語化してシェアすることを推奨され、それがまた優秀さの証であるというような最近の風潮には首をかしげています。

小説や漫画やすべての創作物は、作り手が(トークという意味での)言語化ができなかった感激や衝動から生まれるので、自分だけの心の領域を守って育てていくことも大事なのではないかと思っています。読書は好きだけど感想をうまく言語化できない、そもそもコミュニケーションが苦手という子もいるでしょうし、たった一冊の本の感想でも、言語化できないほどその子にとってとても大事ななにかだったのかもしれません。

それらはいつか本人も予想しない形で芽吹くかもしれないし、その子自身が作り手側となって作品という形でアウトプットされる可能性もある。だから感じた気持ちは誰かと分け合っても、大事にしまっておいても、どちらでもいいよと伝えたいです。

──現代の子どもたちは日々多くの情報を見聞きしながら、繊細な人間関係を構築しなければならず、生きづらさを感じている子どもが増えています。そんな子どもたちに凪良先生が声をかけるとしたら、どのようなメッセージになるでしょうか。

凪良:50代のわたしですら日々迷ったり不安になったりします。今の時代は大人とか子どもとかセクシュアリティに関係なく、みんな悩んでるし、不安だし、完全に正しい人なんていません。クラスの友達も、教壇に立つ先生も、お父さんも、お母さんも、みんな自分と同じ。そう考えると少し気が楽になる気がします。

それでもどうしても不安なときや悲しいときは、無理せずそこから離れればいいと思います。自分を不安にさせる場所に居続けるために、自分を削る必要はありません。学校は広い世界の中のほんの小さな一部分に過ぎません。外にはもっといろんな楽しい場所があるので、ためらわずそちらに行ってください。
凪良ゆう
作家。京都府在住。2007年にデビュー。初期代表作に『美しい彼』シリーズや『おやすみなさい、また明日』など。2019年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。2020年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。2022年刊行の『汝、星のごとく』は第168回直木賞候補作、第44回吉川英治文学新人賞候補作などに選ばれ、2023年に2度目となる本屋大賞を受賞。2026年『多類婚姻譚』が第175回直木賞候補作に選ばれる。

早くも16万部突破! 現代の結婚を鮮やかに描く『多類婚姻譚』

どうして結婚はこんなに難しくなってしまったのだろう。セクシュアリティ/ジェンダー、金銭感覚、世代間格差、成育環境……。『流浪の月』『汝、星のごとく』で2度の本屋大賞を受賞した著者が、今そこにある愛のかたちを描きます。

凪良ゆうが序文を執筆! 『世界一たいせつなあなたの心をまもる本』

友達とケンカしてしまったとき、仲間はずれにされたとき、既読無視されたとき、うそをつかれたとき、勝負に負けて悔しいとき。小学生の子どもたちが抱える、「心のモヤモヤ」との向き合い方を学べる本です。

本書の序文は、『流浪の月』で本屋大賞を受賞、『汝、星のごとく』で第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補、本屋大賞受賞作に選ばれた凪良ゆうさんが執筆しました。

子育て中の保護者225名へのアンケートからわかった、子どもたちの身の周りで起きる具体的なトラブルを扱い、その対処法をイラストとともに解説します。社会生活のはじめの一歩を学ぶ大切な期間である小学校で、人間関係に悩む子どもたちに届けたい一冊です。
写真/安田光優(講談社写真映像部)
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