「すべては絵本作家になるため」挫折、書店員…絵本作家ぬまのうまきさんのこれまで

げんき2024年冬号別冊付録 絵本「くるりん! せなかだあれ?」の著者と編集者によるトークイベントレポート【後編】

げんき編集部

ぬまのうまきさんが手がけた「げんき2024年冬号」の別冊ふろくの絵本「しりたがりのこりすくん くるりん!せなかだあれ?」。
「げんき2024年冬号」の別冊付録の絵本「しりたがりのこりすくん くるりん!せなかだあれ?」。書き下ろしで制作されたこの絵本は、絵本作家・ぬまのうまきさんの優しい色使いとほっこりとした物語が楽しめます。

2024年2月、東京・谷中「ひるねこBOOKS」にて、担当編集者とのトークイベントを開催。絵本作家を志したきっかけや書店員時代のこと、絵本制作にかける思いを語ってもらいました。その中の一部を記事形式でご紹介します。
イベントが開催された東京・谷島「ひるねこBOOKS」 

とにかく絵を描くのが好きだった

──ぬまのうさんは、子どものころはどんなお子さんだったんですか? 

ぬまのうまきさん(以下、ぬまのう):とにかく絵を描くのは好きでした。外にいても砂場で絵を描いて、家にいてもマジックで絵を描いて。幼稚園では段ボールで工作したり。段ボールでパソコンを作ったりしてました。キーボードとかマウスまで。一回作り始めると、完成するまで終われないタイプでした。

やっぱり作ってるときが一番エネルギーを燃やしてるとき。作り終わるとほっとします。
──キーボードまで手作り……! すごいですね。 絵を描く以外に、好きなことはありましたか? 

ぬまのう:音楽も好きで、高校生時代は軽音楽部でした。当時流行っていた椎名林檎とかELLEGARDEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとか。

入学したときの新歓ライブのようなもので、そのときのガールズバンドがマドンナの曲を演奏してたんですよ。「めちゃめちゃかっこいい!」と思って。それで「私も入りたい」って思ったんです。
「作っているときが一番エネルギーを燃やすとき」だと話すぬまのうさん。何本もの色鉛筆を塗り重ねて仕上げられる絵はとにかく緻密。(写真は原画展を開催した書店「ito ito」さんにて撮影)

デザイナーになりたかった

──高校卒業後は、どんな道に進まれたんですか?

ぬまのう:大学は美術系の大学に進みました。そのときはデザイナーになりたかったんです。でも勉強しているうちにわかったというか、デザイナーと作家と編集者、それぞれいろいろな頭の使い方があると思うんですけど、自分がデザイナー向きではないっていうことがそのときわかったんですよね。大学2年生のとき。それで辞めたんです。挫折したんですよね。
そのあと大学内で恩師と出会ったんです。

卒業制作では、2分50秒ぐらいのアニメーションを作りました。全部で5000枚ぐらいの絵を描きました。やってる最中はすごい燃えてて。卒業制作で発表されたときは、もうほっとしてるというか、すっきりした気分になってました。熱量を込めてつくって、すっきりする。その過程のなかで作品を作っていくことは、子どものころから大事にしているところかもしれないですね。

恩師には、自分でいろいろかいたものをたくさんみてもらっていたんです。そのとき、言われたんですよ。「あなたは絵本作家になりなさい」と。「あ、そうなんだ」と思って。「試しに何かコンペ受けてみなさい」と言われました。

もともと絵本は好きだったっていうのもあるし、本そのものが好きなので、先生から「絵本作家になりなさい」って言われたことにも強制でやらされたという感覚は全然ないんです。「そうか」と思って。

ずっと絵は描いていたし、やってみたら「楽しいな、絵本」って思いました。当時がむしゃらにやってたので、全然まわりが見えてなかったと思うんですけど、先生が俯瞰で私をずっと見てくださってたので、絵本作家という道を選ぶことができたのかもしれないですね。

絵本作家になるために書店員になろう!

ぬまのう:絵本作家になるにはどうしたらいいかって考えたときに、作家の三浦しをんさんが本屋でアルバイトしてたっていうのをなにかの記事で読んだんですよ。

「本屋さんで働いたら出版社の人と話せるかもしれない」っていう思いから、本屋さんでアルバイトを始めたのが大学4年生かな。

児童書の担当をずっとしていて、子どもたちに読み聞かせをする機会が結構ありました。

書店員ぬまのうまきの、一押し絵本 

──書店員のご経験もあるぬまのうさん、ぜひ今オススメの絵本をおしえてください。

ぬまのう:これはもうありすぎて、本当に本当にどうしようって思って、昨日夜中3時ぐらいまで悩んでたんです。考えて考えて考えた結果、昔の絵本をおすすめしようかなと思いました。

バーナディット・ワッツの「赤ずきん」
。バーナディット・ワッツは1960年代に活躍したイギリスの方です。彼女の色彩の豊かさみたいなのがすごい好きなんです。シーンがめちゃめちゃかわいい! 白地の中に入れ込むコマのような部分とダイナミックな部分を重ね合わせているので、絵本ではあるけど、アニメーション的な要素もあるかなと思います。お花や木の描き方もすごくいいです。
「赤ずきん」大型絵本(1976年)
文:グリム、絵:バーナディット・ワッツ、訳:生野幸吉/定価:1870円(税込み)岩波書店
私は古書店が好きなのですが、古書の絵本たちを眺めているうちに「あ、こういうの知らなかったな。グリム童話とかちゃんと読んだことなかったかも。じゃあもう1回読み直そう」って思ったのがきっかけです。

1960年代、70年代は、素晴らしいアメリカ、イギリス、ドイツの絵本作家さん、絵本画家の方がたくさんいるんです。グリム童話など古くからある物語の挿絵を描かれている本をもう一度読み返すと、新しい発見があります

大人に読んでほしい一冊

ぬまのう:そしてもう1冊。ライナー・チムニク「クレーン男」。これは読み物なんですが、電車の中で泣きそうになりながら読んだ本です。ファンタジーなんですけど、クレーン男がすごく人間らしいお話なんです。

ある街が発展していく中で貿易を始めるんですが、貨物を移動するのが必要になるので、クレーンを開発するっていうことになって。クレーンを誰が動かすかっていうことになったときに、「俺がやる、クレーンがすごい好きだ」って手を挙げた男がいたんですよね。それがクレーン男の始まりです。

クレーン男はクレーンの上でずっと暮らしながら働いていきます。ちょっと俯瞰的に街を見下ろしているんですが、その視線が神様的な感じもして、街の情景も流れるように見ていくんです。

戦争であったりとか、自分の生きた街が滅びてしまい、そこから新しい生命が生まれていく光景とか、クレーン男はずっとクレーンの上から見ているんです。その一連の流れがすごく面白くて。オススメです。

──ぬまのうさんのご紹介を聞いていたら、すぐにでも読みたくなってしまいました! いろんなことに好奇心を持ちながら、自分だけの表現を見つけていくぬまのうさんは、絵本にでてくる「こりすくん」のようですね。素敵です。
「クレーン男」(2002年)
文・画:ライナー・チムニク、訳:矢川澄子/パロル舎(現在は絶版)

ぬまのうさん作の絵本がふろく!「げんき2024年冬号」好評発売中

ぬまのうまきさんが手がけた親子で楽しめるよみきかせ絵本「しりたがりのこりすくん くるりん!せなかだあれ」が読めるのは「げんき冬号」だけ。ほかにも「サンリオキャラクターズ デザートやさんごっこ」の付録や、しかけページ、シールなどもたっぷりの、大充実の一冊です!
げんき 2024年冬号
発売:2024/01/30
定価:1540円(税込み)

ぬまのう まき

絵本作家

絵本作家。女子美術大学芸術学部デザイン学科卒業。懐かしさが薫る、動物や人々の暮らしを描く。2022年『メルシーのすてきなおへんじ』(ひるねこBOOKSレーベル)『かくれんぼハウスへようこそ』(ほるぷ出版)で出版デビューする。2024年1月に幼年雑誌「げんき」の別冊ふろくで絵本が発売。他に私家版絵本『わたしのおうちで』など。2024年秋に新刊絵本発売予定。

絵本作家。女子美術大学芸術学部デザイン学科卒業。懐かしさが薫る、動物や人々の暮らしを描く。2022年『メルシーのすてきなおへんじ』(ひるねこBOOKSレーベル)『かくれんぼハウスへようこそ』(ほるぷ出版)で出版デビューする。2024年1月に幼年雑誌「げんき」の別冊ふろくで絵本が発売。他に私家版絵本『わたしのおうちで』など。2024年秋に新刊絵本発売予定。

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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