小学生にも分かる「食べ放題」店が潰れない理由とは? 著者累計120万部のFP夫婦が明かす
小学生にお金の仕組みを教える「お金の教科書」 第2回
2023.09.06
ファイナンシャルプランナー:高山 一恵
子どもも大人も大好きな食べ放題。どんなに食べても同じ料金だから、お得な感じがしますよね。もし子どもから「どうしてたくさん食べてもお店が潰れないの?」と聞かれたら、どうこたえますか。
食欲旺盛な11歳のヒロくんも、たくさん食べてもお店が潰れないことに疑問を持った様子。そんなヒロくんに、FPであるパパとママは、どんなふうに解説するのでしょうか。3人の会話をのぞいてみましょう。
食べ放題では肉をたくさん食べたほうがお得!?
ママ:ヒロは食欲旺盛だからね。食べ放題だと好きなだけ食べてもらっても、お会計は変わらないからありがたいわ。
ヒロ:でもさー、僕みたいにたくさん食べる人ばかりきたら、お店が潰れちゃうんじゃないのかなー。ほらっ、あの人もお皿いっぱいにローストビーフを盛っているよ。
パパ:確かに心配になるよね。でも、ちゃんとお店側は潰れないように考えているんだよ。食べ放題のお店が潰れない理由は、商売の基本にヒントがあるよ。
ヒロ:えーっと、商売の基本は「売上-経費=利益」だったよね。
パパ:そう! よく覚えていたね。じゃあ、食べ放題で利益を出して儲けるためには、どうしたらいいとヒロは思う?
ヒロ:うーん、売り上げを増やすことも大切だけど、経費を減らすことも大切だったよね。ここの食べ放題はすごく人気で、たくさんのお客さんがきているから、売上は多そうだよね。それで経費は……。
パパ:レストランの経費って、どんなことに使うお金だろうね?
ヒロ:お料理の材料費とか? あとは、店員さんのお給料もあるよね。
パパ:そのとおり。
ヒロ:うーん、食べ放題だと、お客さんがたくさん食べるから、材料もたくさん必要で、材料費がかかっちゃいそうだよね。
パパ:そうだね。それでも利益がでるようにするには、どうしたらいいかな?
ヒロ:材料の安い料理をたくさん出すとか?
ママ:うん、いい視点ね。レストランみたいな外食のお店では、材料費のことを「原価」、売上に対する材料費の割合のことを「原価率」っていうのね。
で、ここのお店みたいに、ローストビーフやステーキ、パスタ、ピザ、カレーなんかを出す洋食のビュッフェレストランの場合、原価率はだいたい30~40%くらいといわれているのよ。
ヒロ:じゃあ、僕らが1000円払ったら、そのうち、300~400円が原価?
ママ:そうね。でも、メニューによって違いがあるのよ。外食の会社で働いている人に話を聞くと、ローストビーフやステーキなどのお肉料理は、原価率が高めで40%くらいのことが多いんだって。
一方、パスタやピザのような小麦からつくる料理や、カレーなどのご飯ものの原価率はだいたい20~30%で低めなのよ。
ヒロ:そうなの? じゃあ、お肉料理をたくさん食べたほうがお得ってことだよね。
パパ:そうなんだよ。でも、人によっては、パスタやピザが好きでそればかり食べる人もいるよね。
ヒロ:それ、僕のことだね♪
パパ:ある人が原価率の高いお肉ばかり食べたとしても、ヒロみたいに原価率が低いパスタやピザを好んで食べる人もいる。パパはステーキが好きだけど、そればっかりだと飽きちゃうから、ヒロほどじゃないけど、パスタも食べる。そうやって全体としてはバランスがとれるんだよ。
つまり、お店側としては、原価の高いものと低いものを組み合わせて提供することで、全体では利益が出る仕組みにしているってことだね。
ママ:それにお客さんにとっても、いろんな料理があったほうがいいでしょ。
ヒロ:そうだね。僕もお肉ばっかりでパスタのない食べ放題なんてイヤだもん。
ママ:さっきの外食業界の人に聞いた話だと、ファミリーレストランの飲み放題のドリンクの原価はだいたい30円くらい。コーラみたいな炭酸飲料やコーヒーは特に安くて1杯15~20円くらいなんだって。最近はインフレで物価が上がっているから原価はもっと高くなっているかもしれないけどね。
ヒロ:うちがいつもいくファミリーレストランのドリンクバーセットは200円、僕は小学生だから100円だよね。僕のコーラは7杯飲まないと元がとれないんだね。
ママ:ママのコーヒーなんて14杯以上飲まないとだめね。
ヒロ:えっとー、店員さんのお給料があったよね。「人件費」っていうんだよね。
パパ:お、よく知っているな!
ヒロ:あっ! 食べ放題のビュッフェだと、自分でお料理を取りにいくから、店員さんがたくさんいなくても大丈夫だよね。そのぶん、食べ放題では人件費が減るってことか!
ママ:そうなのよ。それにビュッフェの場合、注文をとってから、お料理をつくるわけじゃないでしょ。あらかじめお店側が選んだ料理をまとめてたくさん料理しておけばいいから、その意味でもわりとラクなのよ。
パパ:ほら、うちでもママやパパが忙しかったり、疲れていたりするときは、週末にまとめてつくったカレーで夕飯を済ませたりするじゃん?
ヒロ:あ、そうだね。料理って、まとめてたくさんつくっておくほうがラクなんだね。
パパ:そう、お客さんを喜ばせながら、いろんな工夫で経費を減らして、利益を出すんだ。そういうのを「儲けの仕組み」とか「ビジネスモデル」と呼ぶよ。
ヒロ:そっかー。「儲けの仕組み」があるから、僕がどれだけ食べても、お店は潰れないんだね。よーし、安心してモリモリ食べるぞ!
「食べ放題」の儲けの仕組みを解説!
商売の経費で大きいものといえば「原価」と「人件費」です。
「原価」とは、商品を製造するのに必要な費用のことで、飲食店の場合は「材料費」です。そして、売上に対する原価の割合のことを「原価率」といいます。
飲食店の原価率の目安は一般に30%程度です。洋食のビュッフェレストランの場合、原価率は30~40%くらいといわれます。ただし原価率はどの商品(メニュー)も一律に同じではありません。ステーキなどの肉料理は、原価率が高めで40%程度、パスタやピザ、カレーなどの炭水化物中心の料理の原価率の相場は20~30%程度が一般的です。
さまざまなメニューの原価率の相場は、ネット検索でもわかります。具体的な数字を調べながら、なぜそうなるのかを子どもと話しあうと結構、盛り上がります。例えば肉料理がお得だと、それを目当てにくるお客さんが増えるんじゃないかとか、パスタやピザは、原価率が低くても注文するお客さんが多いんじゃないか、など。
原価率の高い商品と安い商品を組み合わせて提供することで、お客さんを満足させると同時に、お店の利益を確保しているというわけです。100円ショップも、原価率が高い商品と低い商品をうまく組み合わせています。
「原価」と並んで大きい「人件費」は、働く人のお給料などです。ビュッフェは、さまざまなかたちで人件費を抑えられるという意味で、お店にメリットがあります。
ビュッフェはセルフサービスで、お客さんが自分で料理を取りにいきます。そのぶんスタッフがすくなくて済みます。また、料理をあらかじめ大量に準備できるのも大事なポイントです。飲食店では一般に、ランチタイムなどの混む時間帯に多くの人手を必要とします。けれど、あらかじめ大量に準備しておけば、それほどの人手はいりませんし、ムダな材料がかからないという意味でもメリットがあります。
食べ放題のお店には、利益を上げるための工夫がほかにもいろいろあります。ぜひ、お子さんと一緒に楽しく考えてみてください。
ポイント 儲かるかどうかは「原価」と「人件費」にかかっている。
・「食べ放題のお店が潰れない理由」を考えるカギは「経費」にある。経費として大きいのは、一般に「原価」と「人件費」。
・食べ放題のお店は、原価の高い商品と低い商品をうまく混ぜているもの。
・食べ放題のお店は、人件費を抑えやすい仕組みでもある。
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頼藤太希(よりふじたいき)
株式会社Money&You代表取締役。中央大学商学部客員教授。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に株式会社Money&Youを創業し、現職。月間400万PV超の女性向けWebメディア「Mocha」やYouTube「Money&YouTV」を運営。『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。
高山一恵(たかやまかずえ)
株式会社Money&You取締役。慶應義塾大学文学部卒業後。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間代表取締役を務め退任。その後、株式会社Money&Youの取締役に就任。講演活動、執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の話を伝えている。『はじめてのNISA&iDeCo』(共著、成美堂出版)など著書多数。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。ファイナンシャルプランナー(CFP)。
高山 一恵
慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画し、10年間取締役を務め、退任。その後、2015年に株式会社Money&Youの取締役として参画。結婚、出産、夫の転勤、親の介護など人生の多くの転機が訪れる女性にこそお金の知識が必要不可欠という信念のもと、公演、執筆、個人相談等さまざまなチャネルを通して、「女性」にお金の知識を伝えるべく精力的に活動を展開している。明るく、親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。 『Mocha』 『マネラジ。』 『1日5分でお金持ちラジオ』 『Money&You TV』
慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画し、10年間取締役を務め、退任。その後、2015年に株式会社Money&Youの取締役として参画。結婚、出産、夫の転勤、親の介護など人生の多くの転機が訪れる女性にこそお金の知識が必要不可欠という信念のもと、公演、執筆、個人相談等さまざまなチャネルを通して、「女性」にお金の知識を伝えるべく精力的に活動を展開している。明るく、親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。 『Mocha』 『マネラジ。』 『1日5分でお金持ちラジオ』 『Money&You TV』