SNSで子ども・家族に誹謗中傷 トラブルを回避する文章を専門家が解説

メディアリテラシー教育研究の第一人者、千葉大学教育学部教授・藤川大祐先生に聞くSNSでの子ども顔出しについて #2 子どもや家族への誹謗中傷トラブル

千葉大学教育学部教授:藤川 大祐

集まったパーティの写真は、勝手にSNSに投稿してもよいのでしょうか?  写真:アフロ

子どもの写真を投稿する際に起こりうるリスクやトラブルについて、メディアリテラシー教育研究の第一人者である千葉大学教育学部教授・藤川大祐先生に解説いただく連載2回目。

1回目では、子どもの写真をSNSに投稿する際の注意点などをお話しいただきました。2回目は、他の家族やお友達が写り込んでしまう場合の対処法やマナーと、家族にも被害が及ぶSNS上の誹謗中傷トラブルについて解説していただきます。

投稿に添える文章やコメントの書き込み方など、投稿する写真以外にも知っておくべき心構えとは一体!?

(全3回の2回目。1回目を読む

わが子とお友達が一緒の写真の投稿はより慎重になるべき

──親子で集まるプライベートなイベントや、運動会、卒園式などの行事では、自分の子だけではなく、お友達も一緒に写り込んでしまいます。集団の写真をSNSにアップする際に注意すべきことがあれば教えてください。

藤川大祐先生(以下、藤川先生):1回目でも申し上げたように、自分の子だけでなく、他のお子さんについても、写真を勝手に投稿していいはずはありません。撮影する前に、本人や保護者の方へ許可を取ることと、個人を特定できないように顔を隠すスタンプを貼るなどの対策をしましょう。

ただ、顔出しのリスクやデメリットに対する考え方はさまざまで、他の子どもの顔にはモザイクやスタンプを貼るから勝手にアップしても問題ないだろうと考えるのは危険です。

そもそも、わが子を撮ってほしくないという保護者もいます。逆に、もし自分の子が知らないうちに撮影され、顔を隠して投稿されたとしても、その写真を勝手に使われたり、タグ付けされたりしたら、親として良い気持ちはしないでしょう。

保育園や学校主催の行事では、事前に保護者全員に了承を得るのは難しいかもしれませんが、集団でいるときこそ慎重になるべきです。

名札が写り込まないように細心の注意を払う、写真を共有しあうときはダイレクトメッセージを使う、信用できるグループだけが見られるようにするなど、保護者の間でルールを決めておくのもおすすめです。お互いに配慮し、納得してSNSを楽しめるようにしましょう。

子どもだけじゃない! 家族にも被害が及ぶSNSの誹謗中傷トラブル

──リスクが伴うのは子どもばかりではありません。家族が対象になるケースもあります。その一つが誹謗中傷トラブルです。

最近、人気プロ野球選手の妻(元アイドル)が、Instagramを通じてチームメイトの奥さんから匿名メールによる中傷被害を受けていた事件がありました。被害者である夫の野球選手は、幸せそうな親子の写真をアップして溺愛ぶりを示したり、妻は子育て中の美容法やライフスタイルについてたびたび投稿していたといいます。一見、問題がなさそうに見えますが、この事件が示唆しているものは何でしょうか?

藤川先生:​中傷された側には全く非はありません。ただ、残念ですが、幸せそうな投稿が、見ている人の嫉妬心を煽ったり、不快感を抱かせたりする可能性はあると思います。

例えば、世の中には子どもが欲しくてもできない。結婚したくてもできない。また、親子関係で悩んでいる人がたくさんいます。そうした人が、投稿をどう受けとめるかを考えることも必要なのかもしれません。

「子育てがつらくて大変」という話題でさえも、子どものいない人にとってはつらいものなのかもしれません。

発信の仕方にはマニュアルもないし、実際には判断が難しいと思います。少なくとも「世の中にはいろいろな立場や考え方があるんだ」という感覚を持つことが大切ですね。

他人の投稿にコメントを書き込む際にも「無意識の偏見」に注意

藤川先生:「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」というのですが、人間は誰でも生きてきた環境や教育によって、考え方にどうしても偏りができてしまう。

例えば、一般的に「子育て=(イコール)楽しいもの」と思われがちです。ひとつの考え方としてはいいけれど、子育てがつらいと思っている人にとって、そういう一般論は親としての自分を否定された気になってしまう。

同様に、「子育てはお母さんが頑張らなきゃ」という根拠のない思い込みも、母親を追い詰めることにつながります。

日本では海外に比べて治安が良い分、リスクマネジメントの意識が弱いとも考えられます。子どもの写真になんら問題がなくても、添えた文章で人に妬まれたり、悪意ある書き込みを招いたり、犯罪の引き金を引いてしまう可能性だってあります。

こうしたことを意識するだけでもトラブルはだいぶ回避できますし、違和感のあるコメントに対しては「そういう考え方もあるんだ」とやんわり受け止め、必要以上に傷ついたり、神経質になりすぎないことが大切だと思います。

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世の中にはさまざまな立場や環境、考え方の人がいる、ということを顔が見えないインターネット上だからこそ、より意識することがトラブル回避につながるということがわかりました。

最終回となる3回目では、祖父母への孫(=わが子)の写真使用についての伝え方について教えていただきます。

取材・文/鈴木美和

※藤川先生に聞く「SNSでの子どもの顔出し」連載は全3回。
1回目 SNS投稿で子どもの顔出し 拡散・悪用のリスクと対策を専門家が解説
3回目 祖父母のSNS投稿で子どもにトラブル! じいじばあばに伝える写真のリスクとマナー
※3回目は2022年12月1日公開(公開日までリンク無効)。

藤川大祐(ふじかわ・だいすけ)
千葉大学教育学部教授。専門は教育方法学、授業実践開発。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学などの授業づくりを研究。学級経営やいじめ問題の研究も行っている。メディアリテラシー教育の第一人者として、著書、講演、TV出演多数。

ふじかわ だいすけ

藤川 大祐

千葉大学教育学部教授

千葉大学教育学部教授。専門は教育方法学、授業実践開発。メディアリテラシー、ディベート、環境、数学などの授業づくりを研究。学級経営やいじ...