
【子どもの鼻水ケア】「乳幼児の鼻水は、直接口で吸い出す」は感染のリスクあり 正しい鼻水の取り方と受診の目安〔小児科医が解説〕
#17 令和の「子どもホームケア」~子どもの鼻水ケア~ (2/2) 1ページ目に戻る
2026.06.09
小児科専門医:森戸 やすみ
鼻水にはウイルスや細菌が含まれている
鼻水は、子どもに多い症状のひとつ。自分で鼻をかめない子の場合、昔は「親が直接口をつけて吸い出すとよい」などと言われていましたが、令和の現在、どんな方法がよいのでしょうか?
子どもの鼻水の取り方や鼻水が出ているときの受診の目安について、森戸やすみ先生に聞きました。
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鼻水の症状はつらいものですが、鼻水にはウイルスや細菌などの異物を外へ追い出す大事な役目があります。そもそも鼻には、鼻毛や粘液、線毛(粘膜に生えた細かな毛)により、外から入ってきた異物を追い出す仕組みがあります。
それでも防ぎきれず、ウイルスや細菌が体内に入って感染すると、空気の通り道である気道が炎症を起こします。そして、粘膜の腫れや鼻づまり、鼻水といった症状が現れるのです。
いわゆる鼻風邪を引き起こすライノウイルス、乳幼児に多いRSウイルス、秋冬に猛威をふるうインフルエンザウイルスは、鼻水の中に存在します。また、鼻やのどにはインフルエンザ菌、肺炎球菌などの細菌が存在していることも。
常在菌のひとつとしているだけでは悪さはしませんが、粘膜から体内に侵入すると、細菌性髄膜炎(さいきんせい・ずいまくえん)や肺炎、気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などを起こします。なお、まれですが、髄膜炎菌が鼻やのどに保菌されていることもあり、重い感染症を起こすことがあります。
こうした感染の原因となる鼻水は、ひんぱんに取ることが大切です。昔は、いつでもどこでもできる方法として、親が子どもの鼻に口をつけて吸い出すこともありました。でも、子どもの鼻水が口に入れば、当然感染のリスクがあります。家庭用の便利な鼻吸い器がある今、あえて口で吸い出す必要はないでしょう。
医療機関での吸引より「家庭でこまめに取る」
鼻水は、耳鼻科や小児科で吸引するのが最善と思われるかもしれませんが、実はそうとも限りません。たとえ奥まで取っても、またすぐに出てきてしまいます。
鼻はとてもデリケートな場所で、子どもの体をぐっとおさえなければならず、医療機関での吸引が苦手なお子さんも多いですよね。怖い思いをさせても、すっきりした状態は長く続かないのです。
それよりも大事なのは、家庭でこまめに取ること。子どもは月齢・年齢が小さければ小さいほど、気道が小さくやわらかいため、鼻水が出ると呼吸がしづらくなります。
自分で鼻をかめる子にはかませて、自分でかめない子は鼻の穴のまわりを拭くだけでもいいので、ひんぱんに取ってあげましょう。
色のついたネバネバの鼻水なら「鼻水するする」という方法も有効です。
ティッシュペーパーを縦1/4に細長く折りたたみ、親の片手の人差し指にタオルのように掛けて、子どもの鼻の下にあてます。反対の手で、子どもの鼻の下のほうからティッシュだけをゆっくり下に引っ張ると、鼻の穴の出口にある鼻水がティッシュにくっついてするすると出てきます。
痛みもなく嫌がるお子さんも少ないので、試してみてくださいね。
鼻のかみ方は、鼻の穴を片方ずつふさいでティッシュを当てて「ふんって、出すんだよ」などと教えます。また、「はなかみ練習器」という商品もあります。鼻息をうまく出せると風船に描かれたゾウのイラストが飛び出すもので、とても画期的だと思います。こうしたアイテムを使うのもおすすめですよ。
練習は何歳から始めてもいいのですが、鼻をすするクセがつく前がいいでしょう。鼻をすすって鼻水がのどや耳のほうに下りると、風邪の治りが遅くなったり、中耳炎を起こすこともあります。
市販の鼻吸い器のメリット・デメリット
よりしっかり取るには、市販の鼻吸い器を使うといいですね。鼻吸い器には、大きく分けて「手動」と「電動」の2タイプがあります。使いやすいものを選びましょう。
手動で多いのは、ダブルチューブ式。1本のチューブを赤ちゃんの鼻へ、もう1本は親が口にくわえて鼻水を吸い出す形状です。
ボトル内に鼻水がたまる仕組みで、直接吸い込むリスクがありません。小型で携帯しやすく、リーズナブルなのがメリットです。
デメリットは、子どもをおさえながら鼻にチューブを入れ、さらに吸引もするので、子どもが嫌がるとひとりでは少々大変なところです。
手動では、ポンプの力で鼻水を吸い出すスポイト式もあります。吸引力は商品によってさまざまですが、口で吸引しない分より衛生的です。
電動には、家庭用の据え置き型と、携帯に便利なハンディ型があります。
鼻吸い器の中でもっとも吸引力が高いのは、電動の据え置き型。メリットは、親がひとりでも吸いやすいこと。親が身構えないからか、子どもも怖がらないことが多く、幼児の中には自分で鼻吸いをするという子もいます。
デメリットは、置き場所を取ること、高額なこと。1万円前後の商品が多いですが、長い子育て期間を考えたら、持っていて損はないと思います。ハンディ型は、据え置き型に比べると吸引力は劣りますが、お出かけや旅行の際に便利ですね。
いずれの鼻吸い器も、使用後は水洗いなどの手入れが必要です。洗った後は、鼻水を手に残さないようにしっかりと手洗いをしましょう。
鼻水以外の症状がある場合は受診を
鼻水が出ているだけならすぐに受診する必要はありませんが、ほかにも症状がある場合は受診しましょう。
鼻水が出る病気は、風邪のほかにもアレルギー性鼻炎や花粉症、副鼻腔炎などがあり、麻疹(ましん)という可能性も。耳やのどに痛みがあるときは耳鼻科がいいでしょう。熱がある、咳も出ているときは小児科へ行きましょう。
鼻水の症状だけでも、お子さんがつらそうなとき、色のついた鼻水が1週間以上続くときは受診をおすすめします。
症状に合わせて、鼻水や痰の分泌をおさえる抗ヒスタミン薬、痰を排出しやすくする去痰薬などが処方されることが多いですが、アレルギー性鼻炎の鼻水と違い、風邪の鼻水は薬でピタッと止めることができません。鼻水は絶え間なく出てくることが多いので、こまめに取りましょう。
鼻づまりがつらいときは、生理食塩水の鼻スプレーが処方されることもあります。スポイトの先端を鼻に入れて噴霧すると、ネバネバの鼻水がやわらかくなり、鼻吸い器などで取りやすくなります。
鼻の粘膜が乾燥すると、分泌物が固まったり、鼻の線毛運動が低下したり、粘膜が刺激されたりするので、それらを改善する効果もあります。
鼻水には塩分が含まれているためかぶれやすく、また、こまめに鼻をかんだり拭いたりしていると肌が荒れがちです。鼻のまわりに市販のワセリンを塗ると、保湿をしながら肌を守ることができますよ。
【子どものホームケアの新常識 その17】
子どもの鼻水を直接口で吸い出すと、感染のリスクがある。鼻水のケアは市販の鼻吸い器を使うなど、家庭でこまめに取ることが大事。
取材・文/星野早百合
●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。



































森戸 やすみ
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。