
命の誕生を赤ちゃんの視点で描いた絵本
赤ちゃんが生まれる──。ご家族にとって、とても待ち遠しい出来事ですね。親御さんは、上のお子さんに、赤ちゃんが生まれることをいつごろ伝えるのでしょうか。
生まれた赤ちゃんのことを兄姉の視点から描いた絵本はたくさんあります。生まれる前から、家族みんなで赤ちゃんが誕生する喜びを共有できたら素敵ですね。
上のお子さんに余裕を持って絵本を読んであげられるのは、実は出産前なのではないでしょうか。新たな赤ちゃんが生まれるまでの数ヵ月間を、ご家族で心ゆくまで楽しんでほしい。そんな想いが贈る相手に伝わるような2冊を選んでみました。
最初にご紹介するのは、『おへそのあな』(BL出版)。お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんが、実はおへその穴から、お兄ちゃんやお姉ちゃん、お父さんの様子をのぞいているという、ユニークな視点で描かれた絵本です。

「みて みて、 ロボット つくったよ。うまれてくる あかちゃんに あげるんだ。」
はじめに登場するのは、お兄ちゃん。赤ちゃんと一緒に遊ぶためのロボットを作っているようです。赤ちゃんの誕生を今か今かとワクワクしながら待っている気持ちが伝わってきますね。すると、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんが語りかけます。
「おへその あなから みえる みえる。」
「おにいちゃんが みえる。なにしてるのかなぁ。」
赤ちゃんは頭を下にしてお母さんのお腹の中にいますから、見える景色がすべて上下さかさま。そんな絵の描き方もおもしろいですね。赤ちゃんがたしかにそこに存在していることが、上のお子さんにしっかりと伝わる構成になっています。
そのころ、お姉ちゃんは何をしているかというと、きれいな花を赤ちゃんに見せてあげようと、植木鉢の小さな芽に水をあげています。お父さんは、ギターを抱えて赤ちゃんを歓迎する歌を作っているようです。家族みんなが、赤ちゃんの誕生を心待ちにしているのですね。
そんな家族のようすを眺めたり、優しい声を聞いたり、においをかいだりして、赤ちゃんは満足げにほほえんでいます。
上のお子さんは、赤ちゃんに会えるのが楽しみで仕方がないという気持ちに共感すると同時に、「みんなが待っている」それは「きっとうれしいことだろう」と、赤ちゃんの気持ちを想うこともできるでしょう。
そして、ラストシーンに描かれた美しい満月と、今まさに咲こうとしている花。その絵とシンクロするように語られる赤ちゃんの言葉が、じーんと胸に染み渡るとてもドラマティックな絵本です。非常にわかりやすくやさしい文章で書かれているので、小さなお子さんへのプレゼントにもおすすめですよ。