漫画を読むプロ・漫画研究家の読み聞かせは「絵本」ではなく「漫画」だった! そのワケとは⁉

「漫画研究家の本棚」 #2 星槎道都大学美術学部デザイン学科准教授・竹内美帆先生

漫画話は世代を超えて盛り上がる!

──息子さんが漫画を読み始めてから約1年が経ち、変化を感じる部分はありますか?

竹内先生:漫画のほかに、お友達や映像作品などの影響もあると思いますが、ボキャブラリーが増えたように感じています。漫画のワンシーンを、息子と私でキャラクターを担当し、再現して遊ぶことがあり、それも発語の機会になっているのかなと思います。

また親族との集まりで、漫画の話で息子と大人たちが世代を超えて盛り上がっているのを見るのは、新鮮な光景で楽しいですね!

「はたらく細胞」がお気に入り

竹内先生:最近では『はたらく細胞』(著:清水茜/講談社)も息子のお気に入りです。もともとアニメは観ていて、あるとき病院の待合室にあったので、診察待ち時間に一緒に読んだところハマりました。

自分が風邪をひいたときに、漫画を例に出して「体では今、ああいうことが起きているんだよ」と話すと理解がスムーズで。予防接種も怖がらなくなったという、いいこともありました(笑)。

くしゃみをすると「今、くしゃみ1号が出た!」と言ったり、体の仕組みの理解にかなり役立っています。

「はたらく細胞」著:清水茜(講談社)
すべての画像を見る(全8枚)

漫画でも海外の環境や文化を学べる

──将来的に、息子さんに読んでほしい作品はありますか?

竹内先生:海外の漫画を読んでもらいたいなと思っていて。漫画家の生きている環境や文化、表現の仕方など、日本とは異なるところが、非常に面白いです。旅行をせずとも、その国のことを考えたり、理解したりする際のヒントにもなります。

『だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる』(著:バヴア/花伝社)は、多くの移民・難民を抱えるイスラエルに住む人たちの体験とエッセイをもとにした漫画です。小学校高学年からは、十分に理解できると思うので、こういった海外作品にも触れ、今後は多様な表現を知ってもらいたいと思っています。

『だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる』著:バヴア(花伝社)

次のページをめくるワクワク感を!

──今後の子どもと漫画の付き合い方については、どのように考えていますか?

竹内先生:近年はデジタルの娯楽が非常に多いですが、子どもと紙の本に触れる機会を大事にしたいと思っています。デジタルと紙、それぞれによさがありますが、紙の漫画のページをめくるときの、あのワクワク感を息子にも感じてほしいと思っています。

また、漫画に限らず、本を読める人間になってほしい。本を読むという行動が、常に日常の中にあるような、そういう人生を送ってもらいたい、そう思っています。

───◆───◆───

3回目はマンガ研究の中心的人物の一人として多岐にわたり活躍されている京都精華大学国際マンガ研究センターマンガ学部専任教授・吉村和真先生にお聞きします。

「漫画研究家の本棚」連載は全3回。(※公開時よりリンク有効)

竹内 美帆(たけうち・みほ)

北海道出身。京都精華大学大学院マンガ研究科博士後期課程修了。2013年ライプツィヒ大学日本学部客員研究員、2015年以降筑紫女学園大学、北九州市立大学等での非常勤講師を経て、現在、星槎道都大学美術学部デザイン学科准教授。研究テーマは「漫画を『描く/読む』行為とその文化に関する感性論的研究」。

この記事の画像をもっと見る(全8枚)

前へ

3/3

次へ

42 件