【別居・離婚を決意】子どもへの伝え方と絶対言ってはいけないこと

社会福祉士・小森雅子氏「大離婚時代の子どものメンタルケア」#2〜別居・離婚の伝え方編〜

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事・社会福祉士:小森 雅子

直接連絡を取れない場合は第三者を介して

加えて、同居親は、子どもと別居親が互いに会いたがっていて状況が許す場合は、会える環境を整えてあげたいですね。

別居するときも、「いつでも会いに行っていいんだよ」「離れて暮らしても、月に1回は会えるよ」と言うと、子どもは安心するかもしれませんから。

ただ、同居親が別居親に幼い子どもを会わせるには、日時調整の連絡や、現地まで子どもを送迎する必要が出てきます。

別れた相手と連絡を取ったり対面したりすることができない人もいるでしょう。こういうときに選択肢に入れたいのは、全国で40ヵ所以上ある面会交流を支援してくれる事業団体(※4)を利用することです。
※4=参考:法務省「面会交流支援団体等の一覧表」

両親同士が直接連絡を取らなくても、第三者が両親の間に入り、日程調整をして子どもを引き渡してくれたり、面会している間に付き添いをしてくれたりします。もちろん、両親が待ち合わせ場所で鉢合わせしなくて済むよう配慮もしてくれます。

自治体では、東京都、熊本県、千葉県などが行っています(※5.6)。例えば東京都の場合、「東京都ひとり親家庭支援センターはあと」(※7)が実施していて、所得制限など諸条件を満たせば無料で利用できます。
※5=面会交流支援事業に関する取組事例集
※6=自治体等における取組事例
※7=東京都ひとり親家庭支援センターはあと

民間団体では、公益社団法人家庭問題情報センター・「FPIC(エフピック)」などの団体が有料で行っています。例えば「FPIC」の場合、連絡調整と受け渡しをお願いすると1回1万円からですが、元夫婦が折半して払うケースが多いようです。

こうした団体を活用すれば、相手の顔を見ることも声を聞くこともなく、子どもを別居親に会わせられますから、「子どもを会わせたいが別れた相手とは極力関わりたくない」という人にとって精神的負担は非常に軽くなるのです。こういった団体がもっと増えることが必要と考えています。

もしこうしたサービスを利用できない地域に住んでいるなら、親族や友人知人にお願いするのも一つの方法として考えてみてください。別居親・同居親に共通の友人がいて、家族ぐるみで遊びに行ける人などがいれば、協力してもらうといいかもしれません。

ご自身も子連れ離婚の経験があるというNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事で社会福祉士の小森雅子さん。 Zoom取材にて

同居親は別居親の話題もウェルカムな雰囲気づくりを

面会交流のあと、同居親は、「今日パパ(ママ)とどんなことを話したの?」などと根ほり葉ほり聞かないように、そして別居親は、子どもを通して相手の生活のことを聞き出そうとしないようにしましょう。

ただ、同居親は、面会交流で子どもが楽しめたのかは確認したいですよね。そのためにも、同居親は、子どもが別居親の話題をためらいなく出せるようにしておくことが理想です。

離婚して年数が経たないうちは、「元パートナーのことを思い出すだけで、あるいは話題を振られるだけでトラウマがよみがえりそう」「表情や声色が曇ったり、感情的に非難したりしそうで、怖い」という思いから、相手の話を子どもの前で一切しない同居親、子どもから話を振られても、話題を変えてしまう同居親もいます。

もっとも、そういう気持ちになる場合もあるでしょう。でも、もう片方の親のことを一切話題にしなかったり、話をそらしてしまったりすると、「この話題には触れてはいけないんだ」「この話は好きじゃないんだ」と子どもに受け取られてしまいます。

子どもは面会交流で楽しい時間を過ごした場合も、そうではなかった場合も、同居親ともその話を共有したいはず。つらいかもしれませんが、できることなら子どもの話をさえぎったりせず、聞いてあげた方がいいでしょう。

この先も、子どもは折に触れて、「パパ(ママ)がいる家はうらやましい」「パパ(ママ)と○○をしたい」という気持ちがひょっこり顔を出してくるかもしれません。

子どもは、その思いを誰かと共有したい。できれば一番身近で大好きな同居親と。そんなとき、オープンに話せる土台が家庭にあるといいですよね。逆にこの話を同居親と共有できないのは、子どもにとってストレスだと思うのです。

私も子どもが未就学児のとき離婚しましたが、子どもは不仲な両親の仲を取り戻そうとしました。子どもによっては、「また元に戻らないかな」という希望が常にある子もいます。

「絶対無理!」と口から出そうになってもいったん引っ込めて、「本当はパパとママが仲良くしているとあなたもうれしいんだよね」と気持ちを受け止めてあげられるといいですね。そのうえで、「でもそれはできないんだよ」と事実を伝えたいものです。

小森 雅子(こもり・まさこ)
認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事。社会福祉士。自身も子どもが3歳の時に離婚。2018年よりひとり親の支援に携わってきた。

取材・文/桜田容子

※「大離婚時代の子どものメンタルケア」は全3回。第3回「離婚後の生活」編は6月25日公開予定です。
#3【同居親も別居親も】離婚後に気をつけたい親と子どものメンタルケア
#1【悩んでいるパパママ必読】別居・離婚の子どもへの影響をどう考えるか

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こもり まさこ

小森 雅子

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事・社会福祉士

認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事。社会福祉士。同団体ではメール相談のほか、電話にて火曜日と木曜日の週2回、16時から21時まで離婚前後の相談を受けている。自身も子どもが3歳の時に離婚。2018年よりひとり親の支援に携わってきた。同団体による子そだてシングルの応援サイト「イーヨ」では、ひとり親の体験談も読める。 認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ 子そだてシングルの応援サイト「イーヨ」

認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事。社会福祉士。同団体ではメール相談のほか、電話にて火曜日と木曜日の週2回、16時から21時まで離婚前後の相談を受けている。自身も子どもが3歳の時に離婚。2018年よりひとり親の支援に携わってきた。同団体による子そだてシングルの応援サイト「イーヨ」では、ひとり親の体験談も読める。 認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ 子そだてシングルの応援サイト「イーヨ」

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。