料理家・栗原友さんのメリハリ論「手間を省きつつ“母の味”もしっかり残す」

料理家で乳がん闘病経験者・栗原友さんの子育て&食育論#3~「手作りごはんと手間省きごはん」

料理家:栗原 友

子どもの作った作品や手紙を栗友さんはスクラップブックに貼って保存。ワクチン注射を怖がったクリトモさんを見た娘・朝ちゃんが『鬼滅の刃』の登場人物・煉獄さん風に書いたというメッセージがかわいい。
写真:菅沢健治

娘のお弁当は手作りにこだわるワケ

一方、娘のお弁当は基本的には100%手作り。

もちろん、時間がない朝は市販の冷凍食品やお惣菜、自然解凍できるおかずをいれてもいいと思うし、そうしている方も多いでしょう。

ただ、もし世の中のお弁当係の親御さんたちが、100%市販のもので詰まったお弁当に罪悪感を持っているならば――。その冷凍食品は、自分で作っておいたものなら罪悪感は消えるのではないでしょうか。

「作り置きする時間がない」なら、夕飯のおかずを作った時、冷凍できるものはお弁当用に取り分けておいて、小出しにお弁当に入れていくのもいい。夜に作ったおかずを翌朝の朝食とお弁当のおかずにすると3食連続になりますが、バラけさせれば、同じになりません。

ジッパー付きポリ袋に入れて冷凍する。その袋をいっぱい作って、「今日はこの袋の中のおかずを入れよう」と思えば立派な一品になりますよね。

「なぜそこまでする必要があるの? 100%市販のおかずでいいじゃん」

――そう思う方もいるかもしれません。これはあくまでも私の持論ですが、手作りのおかずが一つもないと、「お母さんのお弁当のあのおかずがおいしかった」という思い出が、子どもにできないかもしれない。それがもったいない気がして。

将来、娘が結婚するとき「お母さんのお弁当が美味しかった!」って言ってくれたら、「作ってきてよかったなー」って思うはず。その時のことを想像して作っているんです(笑)。

私の母が私の学生時代に、毎日おいしいお弁当を作ってくれたことは前回(#2)お伝えしましたが、あの味は、幸せな記憶として私の体内にしっかり刻みこまれている。

だから、今の時間を取るか、娘に与える幸せな記憶を取るか。この2者択一なら、私だったら絶対、娘に幸せな記憶を残したいなーって思うんです。

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「娘は何があっても守る」(1回目)、「お弁当は好きなものだけがうれしかったし、娘にもそうしている」「舌の記憶は大事」(2回目)、「上手に手間を省きつつ家庭の味を作る」(3回目)などなど、食への思い、そして娘への愛があふれたクリトモさんのインタビュー。

「○○を通じて子どもを幸せにしたい」という思いは、多くの親にあると思います。クリトモさんの場合は、それが“おいしいごはん”でした。料理が苦手な記者(7歳男児のママ)ですが、何をもって我が子に「幸せな記憶」を与えられるのか、改めてちゃんと見つけ我が子に幸せな記憶をいっぱい与えたいと考えさせられる話でした。

2021年10月発売から10日で1万部を突破した栗原さんの最新刊『ひとりぶん、ふたりぶん 刺身パックでさかなつまみ』(プレジデント社)。

取材・文/桜田容子

※栗原友さんのインタビューは全3回です
第1回目(#1) 料理家・栗原友「乳がんになった私が4歳の娘にした病気の伝え方と生き方」
第2回(#2) 料理家・栗原友さんが母・はるみさんから受け継いだ“おいしい幸せ”の記憶

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くりはら とも

栗原 友

料理家

料理家 2005年から料理家としてレシピを紹介。東京・築地場外の水産会社に勤務しながら食育の講演会、料理教室、執筆など活動を広げる。現在は、「株式会社クリトモ」代表として、コンサルティングやメニュー開発などのほか、東京・目黒の飲食店「クリトモ式混ぜ麺」「クリトモ式ツナマヨ混ぜカレー」を運営、2021年1月には築地の鮮魚店「クリトモ商店」をオープンさせるなど、経営者としても精力的な活動を行っている。 著書に『ひとりぶん、ふたりぶん 刺身パックでさかなつまみ』(プレジデント社)、『クリトモの大人もおいしい離乳食』 (扶桑社BOOKS)など。父は元キャスターの栗原玲児さん。母は料理家・栗原はるみさん。3歳下の弟は料理家・栗原心平さん

料理家 2005年から料理家としてレシピを紹介。東京・築地場外の水産会社に勤務しながら食育の講演会、料理教室、執筆など活動を広げる。現在は、「株式会社クリトモ」代表として、コンサルティングやメニュー開発などのほか、東京・目黒の飲食店「クリトモ式混ぜ麺」「クリトモ式ツナマヨ混ぜカレー」を運営、2021年1月には築地の鮮魚店「クリトモ商店」をオープンさせるなど、経営者としても精力的な活動を行っている。 著書に『ひとりぶん、ふたりぶん 刺身パックでさかなつまみ』(プレジデント社)、『クリトモの大人もおいしい離乳食』 (扶桑社BOOKS)など。父は元キャスターの栗原玲児さん。母は料理家・栗原はるみさん。3歳下の弟は料理家・栗原心平さん

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。