料理家・栗原友さんが母・はるみさんから受け継いだ“おいしい幸せ”の記憶

料理家で乳がん闘病経験者・栗原友さんの子育て&食育論#2~「子どもに残したい“舌の記憶”」

料理家:栗原 友

キッチンで調理をしながら、カウンター越しにダイニングテーブルにいる娘・朝ちゃんと会話をすることも多い。
写真:菅沢健治
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前回(#1)、ご自身のがん経験と、闘病中の子どもとの向き合い方について教えてくれた料理家のクリトモこと栗原友さん。

現在(2021年12月)7歳になる一人娘のママでもあり、子どもの食育にも力を入れ、講演会や料理教室を開催、離乳食の本も出しています。そんな栗原さんは、家庭でどのような食育をしているのでしょうか。(全3回の2回目#1を読む

バランスがよければ刺激物もジャンクフードもOK

私が娘の食事で気をつけていることがあるとしたら、どんなものでも食べさせること。「これは大人の味だから」「味が濃いから」と排除することはありません。

カレーライスも、娘のためにお子様カレーや甘口のルーを買うことはないし、食卓に並べるごはんも、大人用と子ども用とで分けていません。

辛いものも、離乳食が終わって通常食になった頃から食べさせています。友人と焼き肉店に行って、娘がキムチに手を伸ばした時、友人が「これはまだちょっと早いかな~」と気づかってくれることもありました。

でも私は、「大丈夫。うちは食べさせているから」と、そのまま食べさせました。しょっぱいし辛いかもしれないけれど、そういう味があるんだということを私は娘に知ってもらいたいから。

娘が口に入れてみて、この味は苦手だなと思えばそれ以上食べなければいいし、大丈夫そうなら「ごはんに乗せてちょっと食べてみたら?」と勧めます。そこで一つ好きな物が見つかったら、娘の食の世界は広がりますよね。

ちなみに娘の大好物は四川麻婆豆腐。結構辛い麻婆豆腐でもイケちゃいます。最初から、「これは辛いからまだ早いよ」などと分けなかったことで、変に先入観がなく、素直に受け入れられるようになったのかもしれません。

私は、何でもバランスだと思っています。キムチもしょっぱいけど、毎日食べるわけではない。カレーもそうだし、麻婆豆腐だってそう。

確かに味が濃いかもしれないけれど、それ以外の食事は味を薄めに作っていますから。たまに食べるから、おいしく食べられるわけで、毎回すべての食事が脂っこくってしょっぱかったら、子どもは高血圧になって太っちゃいますよ(笑)。

ジャンクフードも、添加物が多いとか体に悪いといって避ける方は多いですが、後で反動が来そうなので、たまには食べさせています。

昨晩の娘の夕食はハンバーガーやフライドポテト。まさにジャンクフードを食べましたが、今朝はパンと目玉焼きを焼いて、サラダを出したら、レタスをバリバリバリバリ、何もつけずにひたすら食べていました。自分でも無意識にバランスを取れるようになっているようです。

もちろん私の方でも栄養バランスには気をつけています。「今日は手作りのチキンラーメンを作ってほしい」と言われたら、鶏ガラから手作りしたスープに野菜もたんぱく質もたっぷり入れる“健康ラーメン”を作ります。

ある日は、鶏むね肉を低温でしっとりと茹でてスライス。そうすると柔らかいむね肉ができるので、きれいに並べて乗せて、茹でたほうれん草や小松菜などを添え、最後のネギをパラパラッと。味の濃いものも手作りならば、栄養を管理できますよね。

楽しそうに料理をしている姿を見せる

私が「親子クッキング」と呼んでいる娘との調理も、食育の一つ。娘とは3歳くらいから一緒に調理をしています。

きっかけは、娘の方から「一緒に作りたい」と言ってきたこと。

娘が平日の夕方リビングにいて宿題などをしている間、私はリビングとカウンターを挟んだキッチンで調理しています。楽しそうに調理しているのを見ると自分も真似したくなるし、そのごはんがおいしいと、「どうやって作っているのかな」と気になるのかもしれませんね。

しかも、ママがいつもいる場所がキッチンだと、そこが自然とコミュニケーションの場になる。親子クッキングはその延長でしょう。3歳から包丁を使って食材を切りたそうにしていたので、その気持ちも尊重して、安全な使い方を教えました。

この間は、自分の創作菓子を作りたいって言っていました。娘の頭の中に「チョコチップを入れて~」と、創作お菓子を作る手順や完成形ができているようで、それを形にしたいから手伝ってほしいと言われたんです。

私がレシピを見ずに作るから、娘も創作しようとしたのでしょう。やはり子は親の真似をするんですね。それなら、楽しそうに料理している姿を見せた方がいいと思います。

食べることも思いっきり楽しみます。私は一食もまずいものを食べたくない。その時に食べたいものをなるべく食べるようにしています。前にお伝えした通り(#1)、私は2019年に乳がんの治療を受けました。

その経験で、一層「一食一食を大事にしたい」という思いは強くなったかもしれません。いつ死ぬか分からないし。

だから、ごはんを作っている時から次のごはんのことも無意識で考えてしまうし、旅行も、食べ物を中心にプラン立てします。出張に行くときも空き時間に何を食べるか前々から決めちゃいます(笑)。

「おいしいものであれば、すべてがていねいに作られたごはんでなくてもいい。休みの日の朝に起きて、『今日はケンタッキー行こうか!』という日もあります」(クリトモさん)
写真提供:栗原友
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