
受験なし! 偏差値なし! 「日本と全然違う」 デンマークで高校生が自ら勉強する「当然」の理由とは?
受験も宿題もないのに才能が伸びる! デンマークの教育 #2高校・大学編 (2/3) 1ページ目に戻る
2026.07.09
答えの正誤じゃない! プロセスが評価される「卒業試験」
日本の小学校~中学校が一体となったデンマークの義務教育「フォルケスコーレ」では、基本的にテストはありません。しかし、9年生(中学3年生)になると「卒業試験」が実施されます。
この卒業試験の内容が、日本でイメージする「テスト」や「試験」とは大きく異なるのだとニールセン北村さんはいいます。
卒業試験は、5つの必須テストと直前に受ける教科が抽選で決まる選抜テストがあり、試験科目は全6科目で構成されています。科目によって筆記テストか口頭テスト、またはその両方があります。
日本ではあまり馴染みのない「口頭テスト」とは、どんなものなのでしょうか。
「口頭テストでは、与えられたテーマについて、面接官の前で自分の考えをプレゼンテーションします。導いた結論以上に、『考えたプロセス』が評価されます。どんな筋道を立てて結果を導いたかが注目されるんです」(ニールセン北村さん)
テーマは教科ごとに異なりますが、全体として「社会問題」が設定される傾向にあります。ニールセン北村さんの息子さんが受けた数学の口頭テストは、以下のような驚きの内容でした。
【数学の口頭テストのテーマ】
今社会で課題となっているリサイクルとエネルギーの問題について、あなたの意見を述べてください。
日本の数学の試験から見ると、同じ教科とは思えない問題ですが、想定される回答は次のような内容です(あくまで一例)。
【回答例】
デンマークのリサイクル率は●●%で、1%向上させるためには、リサイクル量を××トン増やす必要があります。しかし、リサイクルよりも廃棄物そのものを減らしたほうがCO2排出量を削減できるため、廃棄物の減量が優先課題だと考えます。
リサイクル1%に相当する廃棄物量を一人当たりに換算すると◆キログラムになり、これは毎日の食品ロスを●グラム減らすことで実現できます。
※その後、食品ロスを減らすために有効な社会の取り組みなどを話す。
「卒業試験では、これまで学んだ内容を総合的・論理的に用いて考えているかが問われます。だから数学でも、計算結果の正誤より、計算式や理論の実践的な活用が求められるんです。
自分の考えを述べたあとに試験官と対話する時間もあり、コミュニケーションをしながら意見交換するイメージです」(ニールセン北村さん)
正解が1つではない試験では、公平な採点ができるのか……といった疑問が湧きます。しかし、試験官は外部から派遣されるなど、中立性が担保される仕組みが導入されています。
ちなみに、ニールセン北村さん自身も卒業試験の外部試験官を務めた経験があり、学生の熱意に感動したそう。
デンマークの義務教育は、普段の授業から卒業試験まで一貫して、「学習した知識や技術を使いこなし、自分の考えを表明できる」ことを目指しています。
評価はありますが「合否」を決めるものではなく、点数が発表されて順位を競うこともないため、自らの学びに集中できるのです。
ギャップイヤーって何? 義務教育後は選択肢がたくさん
義務教育後の進学先としては、高校と職業技能教育校の大きく2つがあります。高校は専門分野が異なる4種類で、その後は大学などの高等教育に進みます。職業技能教育校も専門ごとに分かれ、卒業後はプロとして即戦力で働くことができます。
高校、大学が仕事と直結しにくい日本とは異なり、デンマークは義務教育以降の選択がその後の進学先や職業に大きく影響します。
それだけに、ここでの進路選択は重要になりますが、先述のように受験はなく、進学の判断にはフォルケスコーレの最終学年と卒業試験の成績が用いられます。
どの学校も、卒業試験の評価基準(-3から12までの7段階)で平均5以上なら問題なく入学でき、評価が足りなくても、校長との面談などを経て進学できる手立てもあります。
「成績不足や迷いなどで進学先が決められない場合には、『フォルケスコーレ10年生』として、再度、もう1年間必修科目を復習することができます。
さらに、義務教育を卒業してもすぐに進学せず、全寮制の私立スクール『エフタスコーレ』で数ヵ月~1年ほど過ごす選択肢もあります。つまり、ギャップイヤー(猶予期間)です。
エフタスコーレでは、特定のテーマ(スポーツ、アート、自然など)を学ぶことができます。好きなことに向き合ってリフレッシュしたり、じっくり考えたり。そういう時間を持つことで、後悔なく次のステップに進めるのです」(ニールセン北村さん)
デンマークでは、「ギャップイヤー」の取得が社会的に広く認められています。このため、義務教育終了後(高校入学前)だけではなく、高校を卒業したあと、大学などに進学する前にもギャップイヤーを取得する人が大半です。なんと、学生の9割近くが高校卒業後に1年以上のギャップイヤーを選択しています。
実際、ニールセン北村さんの息子さんも、義務教育卒業後にエフタスコーレで1年間のギャップイヤーを過ごしました。さらに、高校を卒業したあともすぐに大学には進学せず、現在4年目のギャップイヤー中です。
ギャップイヤーの間は、アルバイトで資金を貯めて長期の旅行に出かけたり、フォルケホイスコーレ(17.5歳以上なら誰もが入学できる全寮制の教育機関)で普段の生活圏や人間関係と離れて自分や社会と向き合ったり、「誰からも評価されずに自分の軸で過ごす」時間として、「今」しかできないことに思う存分、取り組んでいます。
このように、「将来についてゆっくり考える時間」を自ら選択できることは、学生の前向きな進路選択を支えています。加えて、国がそうした選択を支援する制度やツールをしっかり整備している面も、日本とは異なるといいます。

































