
「育ちのよさ」がにじみ出る言葉遣いとは? わが子の人生を豊かにするために今すぐできる親の工夫【マナー講師が解説】
「親子・お受験作法教室」代表の諏内えみさんにインタビュー (2/3) 1ページ目に戻る
2025.11.20
「育ち」は気づいたときから育める
「育ち」は変えられないという思い込み
「まだ小さいのにしっかり“ありがとう”が言えるなんて、育ちがいいのね」などと、一般的に使われる「育ち」という言葉。なんだかあいまいな表現にも感じられますが、そもそも「育ち」とは何を指すのでしょうか。
文脈によっては家柄や学校、裕福さを指すこともある言葉に対して、諏内さんは違和感を覚えることがしばしばあるといいます。
「お受験教室にいらっしゃるご両親から『私は育ちがいいわけではないので』という言葉をお聞きすることが実は少なくないのです」
特にカウンセリング時に、「育ち」という言葉がネガティブな内容で使われる場面がよくあるのだそう。自身のコンプレックスとして感じている方が多いようです。
「先日も、『自分はお箸がちゃんと持てなくて。親を恨みますよ』とおっしゃった30代男性生徒さんがいらっしゃいましたが、自身の振る舞いが気になる思春期も過ぎ、成人となって久しいのですから、いつでもご自身で改善できたはず。まだ親のせいにされることに大きな疑問を持ちました」
自分のことを「育ちが悪い」と感じている方にとって、「育ち」は変えられないものと思い込んでいるのではないでしょうか。「育ちは変えられます」と、諏内さんは強調します。
「育ち」とは何か
それでは、具体的に「育ち」とは何か、育ちがいい自分になるための方法から考えてみます。
「生まれ育った家庭の裕福さや家柄にこだわるのではなく育ちがいい自分になるためには、自身の所作や立ち居振る舞い、言葉遣いを見直し、変えていけばよいこと。つまり、自分で自分を育んでいくということです」
ふとした瞬間の態度や何気ない言葉に、自然とにじみ出るのが「育ち」。些細なことで、周りの人に伝わってしまうものです。意識せずとも上品さがただよう人になるためには、やはり日々の積み重ねが不可欠なのですね。では、まだ小さなわが子に対して、親にできることはあるのでしょうか。
「しつけというのは、どの家庭の親でもわが子にして差し上げられること。お子さんが小さいときから素敵な振る舞い方や言葉の選び方を伝えていくと、将来お子さんにとって宝物になると考えています」
育ちのよさは所作や言葉遣いに宿る
育ちがいい人®には、どんな共通点があるのでしょうか。
「やはり、育ちがいい人®に共通してお見受けすることは、所作が丁寧。言葉遣いが丁寧。ながら作業をしないということです。立ち止まってから挨拶をする、ドアを完全に閉めてから歩きだすなど、複数のことを同時に行わない方には育ちの良さを感じます」
「大人がちゃんと顔を見て『おはようございます』とあいさつをすれば、子どももそれを真似ます。寝る前も、きちんと『おやすみなさい』のあいさつを交わしてからベッドに入る。そういう習慣が実は大切なのです」
帰ってきた人に歩きながら言う「おかえり」も、ながら作業と同じ。ひとつひとつを丁寧に行うことが、育ちのよさにつながるようです。
「私が考える、育ちがいい人®が大切にすることとして、“余韻・余白・余裕”の3つをお伝えしています。これらは話し方にも所作にも通ずることです」
ほかにも、机の上が整っていて余白があると気持ちがいいこと、時間に余裕を持って焦らずに準備をすれば安心感があることなど、日々のさまざまな場面で子どもにも伝えられそうです。“余韻・余白・余裕”は、きっと子ども自身も心地よいと感じられるでしょう。
「育ちがいい人®」が選ぶのは自分自身を豊かにする言葉
所作が美しくて、言葉遣いに思いやりを感じられる「育ちがいい人®」には、周りの多くの人がいい印象を抱きます。しかし、「育ちがいい人®」に育てることには、マナーや礼儀作法が身につくだけではない大きなメリットがあるといいます。
「丁寧な所作や言葉は、その人の心の姿や形をあらわすもの。粗雑な言葉遣いの方は、必ず動きも雑になります。もちろん、その逆も同じです。親子で丁寧な言葉遣いができれば、自然と所作も美しくなり、生活自体が整って、自分自身が豊かに感じられて幸せになれるでしょう」
単なる形式にとどまらないのが所作や言葉の不思議な力。「こんな言葉をかけたら相手はうれしくなるわよ」と親が伝えることで子どもの人生が豊かになるのだとしたら、言葉遣いを教えることは、わが子への何よりの贈り物になるのではないでしょうか。
また、言葉遣いを意識することは、自分自身を好きになるきっかけにもなると諏内さんは話します。
「もし乱暴な言葉を使ってしまったら、その子自身の心も荒れますよね。もちろん、相手もよい気持ちはしません。でも、やさしい言葉を発すると、心がちゃんと整って、自分のことが大好きになれるんです」






















