子どもにクルミアレルギー急増! NG食材は食べてはいけないの? 専門医に聞く

アレルギー専門医・岡本光宏先生「子どもの食物アレルギー最新事情」#3〜アレルギーのある食材との向き合い方〜

兵庫県立丹波医療センター小児科医長・アレルギー専門医:岡本 光宏

ナッツアレルギーかなと思ったら

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岡本先生の小児アレルギー外来でも、お菓子に入っているクルミを食べてしまったケースがよく見られると言います。

「ナッツアレルギーは少量食べただけでも強いアレルギー反応が出るので、注意が必要です。ナッツ類を食べてアレルギーが疑われた場合は病院を受診してください。

ナッツアレルギーの大多数を占めるクルミ、カシューナッツは血液検査で特定しやすいため、卵アレルギーの子どもを診察する際に、あわせて検査をすることがあります。

食物アレルギーの診断は、問診で『食べてひどい目にあった明確なエピソード』の確認と、検査による『感作が陽性であること』の2要件から判断すると前回申し上げました(#2)

しかし、クルミ、カシューナッツは、血液検査で陽性が出たら明確なエピソードがなくてもアレルギーと診断するケースがあります。

また、ピーナッツアレルギーがある人の40%は、ナッツアレルギーを持っているので、お子さんがピーナッツアレルギーだとわかっている場合、ナッツを食べさせる前に主治医に相談するといいでしょう」(岡本先生)

ナッツのなかにはアレルギーを引き起こす成分が共通しているものもあると言います。

「例えば、クルミとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオなどの組み合わせです。そのため、クルミアレルギーの人はペカンナッツが、カシューナッツアレルギーの人はピスタチオが食べられないことがわかります」(岡本先生)

食物アレルギーに悩むパパママや子どもたちのことを考えて、言葉を選びながら慎重に答えてくれた岡本先生。  Zoom取材にて

食物アレルギー「必要最小限の除去」

食物アレルギーだと診断されれば、原因食材との向き合い方をかかりつけ医と相談する必要があります。親はどのような心構えでいればよいのでしょうか。

子どもが食物アレルギーだとわかった場合、その食材をまったく食べないようにすればよいかというと、そうではなく、「基本は、必要最小限の除去をすべき」と岡本先生は言います。

「まず、病院で行う食物経口負荷試験(※1)で、アレルギーのある食材をその子がどのくらい摂取できるかがわかる『域値』を探し出します。この『域値』の範囲内で食べることが【必要最小限の除去】です。

また、その食材を『域値』内で食べ続けることで、アレルギーが治る可能性も示唆されています」(岡本先生)
※1=食物経口負荷試験

岡本先生の病院で行う食物経口負荷試験では、卵アレルギーの場合、1.3gの粉末状の卵白(ごはん13粒くらいの量)を、子どもに食べさせて様子を見ることから始めます。

「卵アレルギーと診断されたお子さんでも、1.3gの卵白が食べられることがわかれば、食べ物の選択肢が広がります。

例えば、ヤマザキの6枚切りの食パン『ダブルソフト』には卵が4.4g入っているので、4分1枚なら食べられる計算になります。

牛乳の場合も同様です。バターはほとんど脂質でできているため、牛乳が1ml飲めることがわかれば、大さじ1杯のバター(15g)が食べられるように。そうなると、ほうれん草のバター炒めやバターを塗ったトーストも食べられます。

そうやって少しずつ食べていくうちに、卵アレルギーが治るお子さんもいるのです。

まずはどのくらい食べられるかを知ることが大切。そのためにも、食物経口負荷試験を行っている病院のアレルギー専門医に相談のうえ、『域値』を調べることをおすすめします」(岡本先生)

園や小学校では「完全除去」

「食物アレルギー対策の基本は、最小限の除去」とのことですが、保育園・幼稚園や小学校では事情が異なります。

「保育園・幼稚園、小学校では、完全除去です。厚生労働省や自治体が作成する「生活管理指導表」には、完全除去の指定しかありません。

さまざまな程度のアレルギーの子どもがいる保育園・幼稚園、小学校では、部分除去などの個別対応が難しく、万が一の間違いが起こらないように完全除去をしています」(岡本先生)

現場の手違いから、子どもが給食でアレルギーのある食材を誤って口にしてしまう事態を避けるためにも、完全除去を徹底する必要があると言います。

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