妊娠中のダイエットはNG! 管理栄養士が説く「妊娠中の食事」 避けたい食材と体重増加の目安 

管理栄養士・岩見真由美さん「妊娠中の食生活」で知っておきたいこと #1 積極的に摂りたい5つの栄養素と避けたい食材

管理栄養士:岩見 真由美

妊娠中の食事は何に気を付けたらいいのでしょうか?  写真:アフロ

厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」が、2021年3月、15年ぶりに改定されました。妊娠期間中の望ましい体重増加についての目安も変更になっています。

改めて、妊娠中の食生活で気を付けたいこととは、どのようなことなのでしょうか?

管理栄養士・岩見真由美さんに、妊娠期間中の体重増加の目安と避けたい食材について解説していただきました。


(全3回の1回目)

妊娠中ダイエットはNG! 

妊娠すると、赤ちゃんの成長と出産・産後への備えのために体重が増えます。なかには、今までの人生で最も体重が重くなったという方もいるかと思います。

妊娠中の順調な体重増加は喜ばしいことですが、なかには妊婦さんで食事を控えたり、運動量を多くしたりと、ダイエットに励んでしまう人も。

また、若い女性の「痩せ」に対する意識が高まる傾向にあり、妊娠前からエネルギーや栄養素が足りていない人が多くいます。

そのため、日本では近年、低出生体重児2500g未満の出生割合の増加が問題となっています。2500g未満で生まれた赤ちゃんの割合は、最も少なかった1975年の5.1%から増加し、2004年以降は、9.5%前後に。

さらに、低体重で生まれた赤ちゃんは、大人になってから肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすいこともわかってきました。

このことから、妊娠中の適切な体重増加の管理は、健康な赤ちゃんを産むためや、赤ちゃんの将来の健康、ママ自身の健康のためにも必要なのです。

低出生体重児「リトルベビーハンドブック」の記事はこちら

妊娠中の体重増加の目安は?

そこで、母子ともに安心・安全なお産のためには、妊娠中の適切な体重増加の目安を知っておくことが大切です。

厚生労働省「妊産婦のための食生活指針」改定の概要(2021年3月)

(例)身長160cm、妊娠前の体重が50kgの人の場合
50÷1.6÷1.6=19.5となります。体格は「普通」となるため、妊娠中の体重増加量の目安は10~13kgです。

ちなみに、2006年の『妊産婦のための食生活指針』では、体格「普通」の妊娠中の推奨体重増加量が7~12kgだったのに対して、2021年3月の改定版では、上記のように10~13kgと増量に見直されました。

ここで知っておきたいのは、妊娠中の体重は増えて当たり前ということ。

ママはお腹の中で、大切な命を育てているという立派な仕事をしているため、妊娠中のダイエットは避けるようにしましょう。とはいえ、「2人分食べてもいいよね」と、食べすぎるのもよくありません。体重が増えすぎると、難産や予期しない形で帝王切開になったり、ママ自身が妊娠糖尿病になったりとリスクが高まることも。

妊娠中に不安なことがあれば、かかりつけ医に相談して、ママと赤ちゃんにとって望ましい体重増加を目指すようにしましょう。

一日3食/うす味/野菜 妊娠中に心がけたた3つ

赤ちゃんの身体は、ママが食べたもので作られます。ママの健康維持と、赤ちゃんの健やかな成長には、栄養バランスのよい食事が欠かせません。朝食を食べなかったり、妊娠前のダイエット中の食事をそのまま続けていたりという場合は、普段の食生活を見直すことから始めましょう。

①一日3食 可能な限り規則的にバランスよく
毎食ごとに、ご飯などの主食と肉や魚を使ったメインのおかず、野菜やきのこ、海藻が入ったおかずをなるべく摂るようにしましょう。

特に妊娠中は、必要なエネルギーが増加するため、主食(ご飯、パン、麺類など)を毎食ごとに過不足なく摂る必要があります。例えば、ご飯だと茶碗に普通盛り1膳(約150g)が目安。一度に食べ切れない人は、おにぎりなどをおやつとして摂っても。

一日を振り返ってみて、食べていなかったり少なかったりした食材があれば、次の日に食べるようにするなどして、3日単位でバランスをとるとよいでしょう。

②うす味を心がける
塩分の摂り過ぎは妊娠中のむくみや、血圧の上昇などの不調につながるため、うす味を心がけましょう。以下を塩分の代わりに取り入れれば、うす味でも満足感がアップします。

・レモン汁や酢などの酸味を活用する
・ねぎやしょうが、青じそなどの香味野菜をアクセントに使う
・スパイスをきかせる
・だしをきかせる
・ごまや青のり、焼きのりなどの風味豊かな食材を利用する

③野菜は一日350g以上を目標に
便秘の予防や改善、たんぱく質などの栄養素をスムーズに体に取り入れるためには、ビタミンやミネラルが必要です。不足しがちな栄養素なので、毎食野菜を摂るように心がけましょう。

1日に350g以上摂るのが目標で、目安としては、野菜のおかず5~6皿分。朝に1皿、昼と夕に2皿ずつと考えるといいですね。

野菜は加熱するとかさが減るので、豚汁やミネストローネなど、具だくさんの汁物にするとたくさん摂りやすいですよ。

葉酸/鉄分/カルシウムなど 摂りたい栄養素5つ

母子ともに健やかな妊娠生活を送るために、積極的に摂りたい栄養素と食材は次の5つです。

①たんぱく質
おなかの赤ちゃんとママの健康維持に欠かせない栄養素が「たんぱく質」です。たんぱく質は、体を作る主成分。赤ちゃんが大きくなる妊娠後期は、より積極的に摂る必要があります。

【たんぱく質を多く含む食べ物】
牛肉、豚肉、鶏肉、さけ、いわし、さば、さんま、かつお、あじ、たら、豆腐、厚揚げ、納豆、卵など

②葉酸
「葉酸」は、胎児の発育や造血に不可欠な栄養素。特に、赤ちゃんの脳や脊髄の元になる「神経管」の形成に影響することがわかっています。厚生労働省では、食事に加えて、葉酸をサプリメントを併用することを推奨しています。

【葉酸を多く含む食べ物】
ほうれん草、ブロッコリー、モロヘイヤ、枝豆、アスパラガス、いちご、バナナ、納豆など

③鉄分
妊娠中は赤ちゃんの成長や出産に備えて、多くの「鉄分」が必要です。ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂れば、吸収率がアップ!

【鉄を多く含む食べ物】
レバー、赤身の肉、かつお、あさり、しじみ、厚揚げ、豆乳、納豆、小松菜、ほうれん草、切り干し大根など

④カルシウム
おなかの赤ちゃんの骨や歯を形成するのに必要な栄養素が「カルシウム」です。

【カルシウムを多く含む食べ物】
牛乳、ヨーグルト、プロセスチーズ、干しエビ、木綿豆腐、納豆、モロヘイヤ、小松菜、大根の葉、チンゲン菜、切り干し大根など

⑤食物繊維
便秘しがちな妊娠中に欠かせないのが「食物繊維」。食物繊維が豊富な玄米や、全粒粉を主食にしてもよいでしょう。

【食物繊維を多く含む食べ物】
モロヘイヤ、ブロッコリー、ごぼう、菜の花、オクラ、えのきだけ、しいたけ、玄米ご飯、おから、ゆで大豆など

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