「コミュニティ型こどもホスピス」が増え始めた 小児がん・心臓疾患・重い病でも「子どもらしく」いられる“特等席“の中身

「こどもホスピス」#1 ~成り立ちと施設について~

フリーライター:浜田 奈美

3年で約670家族 2500人が利用した

毎年11月になると、横浜市金沢区にあるこどもホスピス「うみとそらのおうち」では、この施設を利用した子どもたちと家族の写真展が開かれます。3周年を迎えた昨年(2024)11月下旬の週末にも、50枚以上の写真を展示。2日間で約300人が訪れました。

うみとそらのおうち、通称「うみそら」を運営する認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクトの代表、田川尚登さん(67)は、「ここを利用するご家族の様子を、ご家族やスタッフが撮った写真を地域の方にご覧いただき、知ってほしいと考えて写真展を続けています。来場者も増えて、こどもホスピスの存在が少しずつ周知されていると感じますね」と話します。

うみそらは、医療機関とは異なる、国内2例目の「コミュニティ型」のこどもホスピスとして、2021年11月21日に開設されました。2階建ての施設には、利用者のニーズに柔軟に対応するためのフリースペースや、大勢で料理できる対面型キッチン、家族で入れる大風呂や寝室を兼ね備えています。

オープン翌年の22年から順調に利用者が増えており、累計で約670家族、のべ約2500人。田川さんも「この施設の存在が、社会に認知され始めていると感じます」と語ります。

ここで、「こどもホスピス」がどんな施設なのかということを、説明しましょう。

日本では「ホスピス」というと、多くの人が、「末期のがん患者などが痛みなどの緩和ケアを受けながら余命をまっとうする施設」を思い浮かべると思います。しかしこどもホスピスを正しく理解するうえで、既存の「ホスピス」のイメージとはまったくの「別物」ということを前提としなくてはなりません。

いうなれば「こどもホスピス」とは、病や障害とともに生きる子どもたちが治療から離れ、子どもらしく生きる時間を取り戻すための「特等席」のような場所であり、取り組みなのです。

「うみとそらのおうち」の外観。優しいクリーム色の壁面と、魚のイラストが躍動する窓ガラスが目を引く。室内と庭にしつらえたブランコは、子どもたちに大人気。  写真:浜田奈美
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