子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 病院受診の無理強いがNGな理由を公認心理師が解説

公認心理師・スクールカウンセラーが語る 子どものスマホ依存 #2 病院への受診を子どもが嫌がったら?

公認心理師:中井 ようこ

「スマホ依存を治してもらいたい」という親の思いとは裏腹に、病院や相談を嫌がる子どもも。受診拒否をされた場合、どうすればよいのでしょうか?  写真(イメージ):アフロ

スクールカウンセラーとして、コロナ禍で800件以上の相談を受けた公認心理師・中井ようこさんが解説する、「子どものスマホ依存」。

2回目では、スマホ依存の子どもが、病院受診を嫌がるケースについてです。受診を拒否された場合、親として大切にしたいことは、どのようなことなのでしょうか。実際の事例を交えつつ、解説していただきます。

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公認心理師・中井ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

病院を嫌がるときは無理強いをしないこと

「スマホ依存」の子どもを、いざ病院に連れていこうとすると、受診を嫌がって抵抗されることは珍しくありません。「スマホを取り上げられるかもしれない」「痛いことをされるかもしれない」など、何をされるか分からない不安があるからです。

そんなときに、つい家族がしてしまいがちなのが、「本当のことを伝えずに連れていくこと」。

以前、私のところに寄せられた相談では、「すぐに終わるよ」「行ったら○○を買ってあげる」などと、病院に行く目的をしっかりと話さないまま、子どもを連れて行ってしまったケースがありました。

そのお子さんは、おとなしく受診しましたが「長い間待たされた」「知らない人に聞かれるのが嫌だった」など、ネガティブな体験だけが心に残り、その後受診をしなくなり、さらには部屋に引きこもるようになってしまったのです。

スマホ以外の子どもの悩みを聞く

受診につなげるための子どもへの接し方としては、スマホ以外で子どもが望んでいることは何かを探してみてください。「スマホ以外で?」と思うかもしれませんが、少し視点を変えて声をかけるのがポイントです。

たとえば、勉強や友達、進路など、子どもが悩みを抱えやすい話題について話し合ってみましょう。

「勉強のことがすごく不安」「教室で気軽に話せる相手がいない」など、子どもが心の奥底で抱えている本当の悩みにフォーカスしてみるのです。

子どものニーズがだんだんと分かってきたら、悩みに沿った声かけで受診を促します。次のような例を参考に、子どもとコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。

「病院の相談室やデイケアでは、勉強や進路について話せるみたいだよ」

「同じ趣味の人で集まって話せる場所があるみたいだよ」

このように、病院は決して子どもを苦しめる場所ではなく、悩みや不安を一緒に解決してくれる所だと伝えることが大切です。

子どもが病院に行きにくいようなら、まずは家族だけで診察を受けるのもよいでしょう。家族も病院への信頼感を持てて「とても優しい先生だったよ」などと教えてあげられますね。

病院以外の相談機関や家族向けの支援を利用しよう

子どもと向きあいながら話し合ってみても、うまく病院受診につなげられない場合もあるかと思います。

そのようなときは、子どもを受診させる考えをいったん捨てましょう。家族だけで相談できる場所を探し、信頼できる医師や心理師などの支援者に出会うことが大切です。

子どものスマホ依存を診察する病院の多くは、家族だけでも受診できるシステムが整っています。子どもの様子や家族の悩みについて相談できる場所の一つです。

子どもの依存症に悩む方のために「家族教室」を開催している病院もあります。スマホ依存に関する知識だけでなく、他の家族の体験談やアドバイスを聞くことができる貴重な場です。

さらに、次のような機関でもスマホ依存の相談ができます。

・各都道府県の精神保健福祉センター
・市役所や保健所の子育て相談窓口
・自治体の教育支援センター
・小中学校のスクールカウンセラー


精神保健福祉センターでは、スマホ・ゲーム依存の自助グループや家族会を紹介してくれることも。同じような境遇に悩んでいるメンバーとの出会いは、先の見えない不安を抱える家族にとって大きな心の支えになるはずです。

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