子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 病院受診の無理強いがNGな理由を公認心理師が解説
公認心理師・スクールカウンセラーが語る 子どものスマホ依存 #2 病院への受診を子どもが嫌がったら?
2024.01.17
公認心理師:中井 ようこ
病院受診を拒み、スクールカウンセラーを受けた実例
ここで実際に担当した相談事例をご紹介します。教育支援センターの不登校相談を利用し、カウンセラーとの面談によって少しずつ子どもの心がほぐれ、本人が納得した上で受診できたケースです。
(プライバシー保護のため、事実を基に構成しています)
息子は中学校に入学してからスマホを使いはじめました。最初は友達や部活内の連絡に使う程度でしたが、そのうちオンラインゲームにハマるように。1日10時間以上、ひどいときだと15時間くらいするようになりました。
ゲームをしながら寝落ちする日々が続き、昼夜逆転の生活のため学校にも行けなくなってしまいました。家族ともほとんど話をすることがなく、私たち家族もどうすればよいか分からない状態でした。
学校のスクールカウンセラーに相談に行かせようとしても、登校自体を嫌がるので無理でした。仕方なく家族だけで相談に行き、どうやら息子はスマホ依存だと分かりました。
スマホ依存を診察してくれる病院が見つかったのですぐに予約を取りましたが、受診は半年待ち。でも、少し希望の光が見えた気がして、病院にいく日を心待ちにしていました。
いざ当日になると息子は部屋から出てきません。どれだけ説得しても「行かない」の一点張り。そのうち返事もしなくなり、仕方なく家族だけで病院に向かいました。
病院では、無理強いは良くないと教えてもらいましたが、今後どうしたらよいか分からず途方に暮れてしまい……。以前相談したスクールカウンセラーに連絡をしました。
スクールカウンセラーからは教育支援センターをすすめられました。そこでもカウンセリングが受けられるし、学校とは違った居場所もできるのでぜひ行ってみてほしいとアドバイスをもらいました。
息子にはスマホ依存のことは話さず「人と話したりボードゲームができたりする場所もあるみたいだよ」と誘ってみました。すると、学校や病院ではないことに安心したのか「行く」と一言。
実際に行ってみると、教室よりも少し広い部屋に机やホワイトボードが置いてあり、スタッフと将棋をしている子がいました。別の部屋では卓球やクッキングもできるとのこと。
想像よりも明るい雰囲気のセンターと、優しそうなスタッフの笑顔のおかげで、たまに教育支援センターに通えるようになりました。
心理師のカウンセリングを受けるなかで「勉強が分からない」「友達とすぐにけんかになってしまう」などの悩みも浮かび上がってきました。息子がそんなふうに悩みを人に話せるのだと、ただただ驚いたのを覚えています。
学習やレクリエーションの合間に受け続けたカウンセリングを通じて、心理師とも信頼関係ができ、息子の心がほぐれていくのが分かりました。「次はいつ?」と聞いてくるようになったからです。
私自身も先の見えない不安に押しつぶされそうなとき、スタッフの方にポロっと打ち明けたことがあります。決して親を責めることなく、子どもや親に寄り添ってくれる場所があったから、一日一日をなんとか乗り越えられたのだと思います。
心理師さんの後押しもあり、息子は翌年の春に病院を初受診できました。
このように、家族が長期にわたって子どもを支えるには、家族自身をサポートしてくれる機関を見つけることが大切です。治療以外の具体的なアドバイスが欲しい場合は、病院受診と並行して他の相談機関を利用するのもよいでしょう。
ときには、子どもとまったく関係のないコミュニティに参加してみると、新しい発見があるかもしれません。家族それぞれが自分の世界を広げることは、子どものスマホ依存とうまく付きあっていくコツとも言えます。
誰かに相談するのは勇気がいることかもしれませんが、家族だけで悩みを抱えず、子どものスマホ依存を解決するための大きな一歩を踏み出しましょう。
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まずは子どもの気持ちにしっかりと寄り添うことで、スマホ依存の背景にある子どもを本当に苦しめているものを一緒に見つけてあげる。そして、子どもに寄り添い、支えるためにも家族自身の心も大切にしなければなりません。「苦しい」「助けてほしい」。そんな気持ちを抱いたときには無理や我慢をせず、専門家や相談機関を頼ってくださいね。
次回3回目では、小学5年生の息子がスマホ依存になり、親としての自信を失ったママパパの実例をお伝えします。
監修・文/中井ようこ
子どものスマホ依存記事は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(※3回目は2024年1月18日公開。公開日までリンク無効)
メディペン
医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen
医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen
中井 ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。