猛暑後の秋冬はリスク大! 乾燥の季節に続出する“乳児の肌トラブル”と正しいケア[医師監修]

#2 皮膚科医・野崎誠先生に聞く乳児の肌トラブル「秋冬対策」 (2/3) 1ページ目に戻る

皮膚科医:野崎 誠

──今夏(2025年)は強烈な猛暑でしたが、その後の秋冬は「乳児の肌トラブル」が起きやすいと聞いたのですが?

野崎誠先生(以下、野崎先生):夏の猛暑の影響で、秋になってから、乳児の虫刺されによる受診が増えています。猛暑が長く続くと蚊の活動が少なく、気温が落ち着く秋になってから活動が盛んになり、刺される機会が増える傾向があります。

乳児の虫刺されは、大人とは反応の仕方が異なります。刺された直後には、腫れやかゆみを感じないことが多く、半日ほど経ってから症状が出る場合が多いです。また、症状が長引きやすく、1週間ほど続くこともあります。これは免疫の働きによるもので、初めて蚊に刺された赤ちゃんや、今まで刺される機会が少なかった赤ちゃんほど、遅れて強く反応するためです。

秋になり、幼児の手荒れも増加しています。夏は外遊びを控えていたぶん、涼しくなって公園や砂場で遊ぶ機会が増えたのが原因です。これには、砂遊びによる摩擦、また砂の中に含まれるダニや金属成分に対するアレルギー反応が関係している場合もあります。

いくつかの要因が複合的にかかわることがあるため、明確な原因を特定することはむずかしいです。症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

乾燥で増える乳児の肌トラブルとおうちケアの2大ポイント

──乾燥しがちな秋冬に増える乳児の肌トラブルとは? また、月齢による症状の違いはあるのでしょうか。

野崎先生:一般的に、空気が乾燥するこの時期は、乾燥性湿疹、乳児湿疹、アトピー性皮膚炎が増えます。秋から冬にかけて新たに発症したり、症状が悪化したりするケースも多いです。

また、なかでもアトピー性皮膚炎は、月齢によって、症状の出やすい部位に傾向があります。はじめに症状が出やすいのは生後3~6ヵ月の乳児ですが、生後6ヵ月を過ぎると湿疹が下半身にも広がってくるようになります。月齢に応じて赤ちゃんの肌の状態を注意深く観察し、変化に気づいたら早めにケアすることが大切です。

──皮膚の乾燥を防ぐために、家庭でできる対策はありますか?

野崎先生:大きく2つ、注意してほしいポイントがあります。

〈アドバイス1:エアコン使用時は加湿もおこなう〉

乾燥対策で重要なのは「部屋の湿度」です。理想は湿度50%以上。石油ファンヒーターは灯油が燃焼する際に二酸化炭素と水分が発生するため比較的乾燥しにくいのですが、エアコンは室内の空気を乾燥させ、肌の水分も奪いやすくなります。そのため、エアコンを使用する際は、かならず加湿器も併用してください。

〈アドバイス2:保湿剤は“天気”によって使い分ける〉

保湿剤は1種類だけでなく、湿度や天候に応じて使い分けるのがおすすめです。ローションは塗りやすく伸ばしやすい反面、保湿力は控えめ。一方、クリームはやや塗りにくいこともありますが、保湿力が高く乾燥する日には最適です。湿気の多い秋雨の日はローションで十分ですが、乾燥する日はクリームを使うなど、天候や湿度に合わせて使い分けをするとよいでしょう。

また、ワセリン(プロペト)は皮膚に油膜を作り水分を閉じ込めますが、肌本来のうるおい成分を補うことはできません。より効果を高めるには、「セラミド」や「ヘパリン類似物質」が入っているものなど、肌の保湿成分を補えるものを選ぶと安心です。

──SNSでは「おすすめの石けん」「保湿剤ランキング」なども話題ですが……。

野崎先生:どんな石けんを使うかはあまり重要ではなく、「よく洗って、その日に合わせた保湿をすること」が大切です。SNSでは広告目的の商品情報も多くあり、“売るため”の投稿や口コミも増えています。赤ちゃんの皮膚トラブルで迷ったときは、ぜひ病院や薬局で専門家に相談してみてください。

また、皮膚薬については、ステロイドに対して不安を持つ方もいらっしゃいますが、最近はステロイドが入っておらず副作用の少ない次世代型の抗炎症外用薬も増えています。「モイゼルト」や「コレクチム」などがそれです。その結果、私のクリニックでも2025年の今はステロイド薬の使用が10年前のおよそ10分の1に減っています。

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