中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。
第11回は「入学試験期」です。
合格した親が注意するべきこと
お受験生活のフィナーレ、都内の名門私立小学校の入学試験が11月1日から始まります。
両親・親子の事前面接などもありますが、いわゆる「本番」といわれる入試はここから。都心部の「本命校」とされるほとんどの学校が、わずかこの数日間に集結して怒涛のごとく試験を行なっていくのです。何年もかけた準備時間を思うと、秒速で通り過ぎてしまう感覚です。
なかでも女子校は1日で入試を終え、その翌日か翌々日には合否が出てしまうところが多い。
そうなると園内では、女子校合格組のママたちが、スッキリ晴れやかな顔で先生にご挨拶をしたり、お互いに喜びを分かち合ったりしはじめます。
「見事、〇〇小学校に合格しました! ありがとうございます!」
「きゃー! 私たち、同じ学校ね〜!」
嬉しそうです。
母子ともにまばゆいばかりの勝者オーラに包まれている。
しかし、忘れてはいけないのが、試験期間が長く合否発表を待たされる学校の受験者や、なかなかご縁に恵まれず、頑張り続けている人たちの存在です。うっかりハシャギ過ぎて周りが見えなくなり、
「そちらはどう?」
なんてふる人も出てきます。イヤ、一緒にお祝いしたいのは山々ですが、今それを聞かれるのはツライのです。
まあ、そこまでデリカシーのないママは滅多にいませんが、周りの人に探りを入れたり、言葉にこそ出しませんが、あからさまに興味しんしんで、態度や顔がとてもウルサイ人はいたりします。
そういう方たちの、受験を終えた余裕から他の人の状況が気になったり、合格の喜びを共有したくてウズウズしたりする気持ちも分からないではありません。
でも、経験した立場からいうと、それはやめて下さい。せめて11月下旬まで。試験期間中ずっと休み続けるわけにもいかないので通園こそしていますが、進学先が決まるまでハラハラドキドキを通り越して、ギューっと胸が締めつけられているような、毎日立っているのもギリギリの精神状態でいたりするのです。下手につっつくと暴発する可能性もあるので、そっとしておくのが一番。
受験してから合格が発表されるまでの間、生きた心地がしないのは誰もが同じ。それを頭の隅に置いて、もう3週間だけ、静かに喜びを噛みしめていて下さい。その頃には、良くも悪くもだいたいの結果が出揃い、気持ちも落ち着いているでしょうから。
それに、結果はいずれ分かりますから。通う小学校は1校だけ。4月になればみんなどこかの小学校に入学しているのですから、いちいち好奇心を満たすためにリアルタイムで合否を探らなくてもいいじゃないですか。どうしても気になるなら、4月以降に見に行けばいいでしょう。
記念受験は想像以上にダメージ大
また、筆記試験の学校ばかりでなく筆記以外の考査方法をとる学校(いわゆるノンペーパー校)もある小学校受験では、偏差値も出ないため、気軽に「記念受験」を考える人もいます。
ですが、これもオススメできません。
なぜなら、ノンペーパー校ほど、多岐に渡って細かく厳しい入学審査が行われているからです。とてもじゃないけど、綿密な計画なくして、ご縁をいただけるような甘いものではない。
我が子の生誕前後から、練りに練ったお受験対策をしてきた猛者(もさ)たちが、そこらじゅうから集まってくるのです。まず「まぐれ」などは起こらないものと思っていいでしょう。
下手に「本命校」の前に受験したりすると、ムダに凹んだり体力を消費するハメになってしまう。その時は想像できなくても、結果が出た時のことを考えてみましょう。残念な報告の場合、「不合格」の3文字を目にすることになるのです。
この3文字の視覚効果がもたらすダメージは絶大。その前に「合格通知」を1つでもゲットしていれば、そんな無慈悲な3文字も受け流す余裕があるかもしれませんが、そうでない場合、非常にあせることになる。
それがまだ受験の真っ最中であれば、なおさら最悪です。精神衛生面に、このうえなく悪いこと間違いない。その後の受験に悪影響すら与えかねないのです。
誰しも「拒否」されるのはツライことです。それは思いのほか深い傷を残し、いつまでも家族の記憶に残ります。だから「不合格」など、できるだけ経験しない方がいいのです。
繰り返しになりますが、どうせ通う学校は1つなのですから「合格」も1つあれば充分。そういうことで、受験する学校はできるだけ絞った方が、親も子も、肉体的、精神的に快適だと思うのです。
実際、私の周りで合格したほとんどの家庭が、本命校1、準本命2校の計3校という受験スタイルでした。みんな、本命校以外の2校に対しても入念な準備をしていたので、もはや「これでダメだったら仕方ない」と割り切る覚悟ができていたのかもしれません。
それに、もしかすると、本当に志望する3校だけを受験したからこそ、子どもへの負担が少なく良い結果につながったということもあるのかも。
また、そのような家庭は、たとえ結果が不本意に終わったとしても、スッパリ頭を切り替えられるようです。希望する学校を絞れるということは「小学校受験に依存し過ぎていない」からこそできることなのでしょう。
ダメならサッサと中学校受験へと舵を切るのです。そして、その子たちは高い確率で難関中学校に進んでいました。それは、もともと家庭内の教育ポテンシャルが高かったからともいえるでしょう。