過熱「中学受験」不適切にもほどがある? 昭和育ちが令和の「お受験親」に助言!

コラムニスト・石原壮一郎の「昭和~令和」ものがたり【05】 「子どもの受験に熱を上げるのが“親心”なのか?」

近年、白熱する中学受験。「子どものため」と胸を張る令和の親たちへ、昭和育ちのコラムニスト・石原壮一郎がカツ!  イメージ写真:アフロ

子育てをめぐる状況は、令和に入って大きく変わっている。しかし、世間や自分自身の中に染みついた「昭和の呪い」が、ママやパパを悩ませ苦しめている場面は少なくない。

昭和に生まれ育ち、平成に親になり、令和で孫に遊んでもらっているコラムニスト・石原壮一郎ジイジが、ガンコな「昭和の呪い」を振り払いつつ、令和の子育てを前向きに楽しむ極意を指南する。

今回は、昔も今も親を右往左往させる「受験」について。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)PROFILE
コラムニスト。1963年三重県生まれ。1993年のデビュー作『大人養成講座』がベストセラーに。以降、『大人力検定』など著作100冊以上。最新刊は『押してはいけない 妻のスイッチ』(青春新書プレイブックス)。現在(2024年)、5歳女児の現役ジイジ。

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現在の「受験」事情

「お受験」という言葉は、平成に入ったころからよく目にするようになりました。ただ、令和の今も私立小学校に通う子どもの割合は全体の1%程度です。当事者である親と子にとっては大問題だし何かと話題にはなりますが、一般的な選択肢とは言えません。

いっぽうで中学受験は、どんどん「身近」になっています。首都圏の場合、2023年の入試では5人にひとりが中学受験をし、東京の11の区では私立中学校への進学率が3割を超えているとか。近年は、偏差値が高い学校を目指す「エリートコース」志向だけではなく、子どもの個性に合う学校に進学させたいという気運が高まっています。

昭和のころの中学受験は、ダメもとで記念受験するケースも多かったりなど、どこかノドカさがありました。しかし令和では、親も子も切実な雰囲気をまとっています。

公立中学校のイメージや信頼度も、大きく変化しました。昨今はSNSなどに玉石混淆の情報があふれています。とくに親は、そんな中で冷静さを保つのは容易ではありません。

【根深く残っている「昭和の呪い」】
・いわゆる「エリートコース」に乗せれば将来は安泰である

・厳しくムチを入れれば入れるほど子どもの能力を伸ばせる

・少しでも「いい教育」を受けさせるのが親の務めである

「正解」がわからないだけに親の悩みは尽きない

昭和のころは「受験」の話題と言えば、もっぱら大学受験でした。偏差値を重視する風潮への批判は、今より強かったかもしれません。それぞれの受験生も、悩みや葛藤や焦りを抱えていました。しかし、あくまで「当人の問題」だったと言えるでしょう。

親世代で大学に行っていたのは少数派だったし、当人も18歳という「もう子どもではない年齢」です。親は心配はしても、基本は「自分で考えればいい。まあ、がんばれ」というスタンスでした。一部には「教育熱心」すぎる親もいるにはいて、その弊害が指摘されたり悲しい事件につながったりすることはありましたけど。

令和の親子を激しく悩ませている受験は、中学受験(いわゆる「中受」)です。私立小学校を目指す「お受験」も、一部の人には大きな問題かもしれません。ただ、多くの人にとっては「そういう世界もあるらしい」という話なので、いったんおいておきましょう。

昭和の大学受験と違って令和の中受は、親こそが判断したり選択したりする当事者という一面があります。

「子どもがやりたいと言ったから受験させるんだ」と本気で思っているとしたら、無意識かつ無責任に子どもを追い詰める素質があるかもしれません。

「中受をさせたほうがいいのか、させないほうがいいのか」
「“いい中学”に入ることが、我が子の幸せにつながるのか」


親の悩みは尽きませんが、誰にも「正解」はわかりません。「させる」と決めたとしても、塾はいつからどんなところに通わせるのがいいのか、志望校はどこにするか、子どもの勉強に親がどこまで口を出すかなど、正解がない選択と決断を次々と迫られます。

正解がないだけに、どんな道を選んでも安心できないし満足もできません。

わかっているのに「落とし穴」にハマることも

昭和の親と違うのは、令和の親(とくに我が子に中受をさせるのが当然と思っている親)は、自分自身も中受を経験しているケースが多いところでしょうか。

自分の人生を肯定的に捉えている場合は、「させる」以外の選択肢は考えられないでしょう。後悔があったらあったで、我が子でリベンジしたいという無意識の欲求に突き動かされそうです。

いろんなドラマや記事では「中学受験の落とし穴」がさんざん取り上げられています。親が入れ込みすぎて子どもをスポイルしてしまう、志望校に合格できなかった子どもが(親も)立ち直れない、SNSにあふれている情報に振り回されて子どもも親自身も疲弊してしまう……などなど、あげ始めたらキリがありません。

令和の親は「受験生の親」としてウブだった昭和の親よりも、よっぽどこの手の「落とし穴」に詳しいはず。メディアには「残念な例」ばかり取り上げられますが、大半の親は気を付けているに違いありません。

ただ、気を付けてはいても、ハマってしまうケースが後を絶たないのが、受験の怖いところであり子育ての難しいところではあります。

昭和の祖父母世代の中には、いまだに「エリートコース幻想」や「スパルタ教育幻想」を持っていて、子育て中の我が子にそれを押しつけてくる人もいそうです。振り回されたり素直に影響されたりしないように、眉に唾を付けながら適当に聞き流しましょう。

我が子に「いい教育」を受けさせたいと願っているのは、昭和の親も令和の親も同じです。ただ「いい教育」や「いい環境」のイメージは、昭和のころからほとんど変わっていません。

情報があふれている分、細部へのこだわりや親がすべてお膳立てしてあげなければという使命感が強まっているかも。子どもにしてみれば、ちょっと迷惑な話です。

子どもの幸せを願うのは“親心”ですが、受験に熱を上げることが“親心”とは限りません。「受験させる派」の親も、その前提は心の片隅に刻んでおきたいところ。「子どものため」という言葉を頻繁に口にする人の頑張りは、たいてい「自分のため」です。

もうすぐ新学期。第1志望の中学に進む子もいれば、中受で挫折を経験した子もいるし、中受とは無縁で地元の公立中学に進む子もいます。未来に無限の可能性が広がっているという点では、どの子もまったく違いはありません。

それを信じることが、もっとも大切な“親心”ではないでしょうか。親が訳知り顔で余計なことを言って「違い」を作ってしまうのは、どのケースにおいても、極めて無神経で残酷な行為です。

【令和のパパママに贈る言葉】

受験に関しては、あちこちから「怖い話」や「不安になる話」が聞こえてきます。しかし令和のパパママは、受験にも情報の取捨選択にも、昭和のパパママよりはるかに詳しいはず。夫婦でしっかり話し合った上で出した結論なら、どんな道も、それが我が子にとっての「正解」です。

どうして妻はいつもイライラしているのか、すぐ不機嫌になるのか。なぜならば夫が押してはいけない“妻のスイッチ”を押してしまっているからなのです。このスイッチは一体にどこにあるのかを石原壮一郎氏が詳しく解説。夫婦の平和と円満をめざす夫のためのバイブル的な一冊『押してはいけない妻のスイッチ』(青春新書プレイブックス)が発売中。