400人を取材した『不登校新聞』代表が確言 不登校で得るスゴイ“強み”

シリーズ「不登校に苦しむキミとその親へ」#1‐2 不登校新聞代表理事・石井しこう氏~不登校で得た力~

不登校新聞代表理事:石井 しこう

人生の「正解」は自分の中にしかない

『不登校新聞』は、不登校で苦しんでいる僕に寄り添って、役割を与えてくれました。暗闇の中で光が見えずに苦しんでいた自分にとっては、とてもありがたかった。

創刊当時から続いている著名人へのインタビューのコーナーがあって、その取材はボランティアスタッフも含めて、不登校の当事者が自分の会いたい人に悩みや疑問をぶつけるんです。本気で聞くから、向こうも本気で答えてくれる。あんなに熱量のあるインタビューは、なかなかないでしょうね。

そのコーナーは『学校に行きたくない君へ』と『続 学校に行きたくない君へ』(いずれもポプラ社)という本にもなっています。樹木希林さん、リリー・フランキーさん、西原理恵子さん、羽生善治さん、中川翔子さん、糸井重里さん……。たくさんの「大先輩」たちが、不登校で苦しんでいる子どもたちに生き方のヒントを語ってくれています。

石井さんの著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ新書)、全国不登校新聞社編集の『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)など。  写真:日下部真紀

10代の僕は、何度かインタビューに同席させてもらって、ときには質問もぶつけました。そこで学んだのは、どの人もそれぞれの考え方で、別々の答えを持っているということ。

それまでは、与えられた答えに合わせることばかり考えてきた。そうじゃない。人生の「正解」は世の中のどこかじゃなくて、自分の中にしかないんだと気づくことができました。

でも、あまりにも緊張しすぎて、インタビュー中に寝ちゃったこともあるんですよね。僕以外でも、前の日に興奮して寝られなくて現場で寝ちゃったり、道に迷って遅刻してきたりなんてことは珍しくありません。寝ちゃった子のひとりは、のちに全国紙の新聞記者になりました。

演出家・宮本亜門氏に取材中の『不登校新聞』のボランティアスタッフたち。  写真提供:不登校新聞社

伝えたいメッセージは「自分を大切にしよう」

インタビューの現場では、全員にやるべき任務があります。「ボイスレコーダーのスイッチを入れて、録音できていることを確認する係」の子もいる。たとえ小さな役割でも、本人には「自分はいてもいいんだ」という実感につながります。

私たちは、ボランティアスタッフを「使ってあげている」わけではない。不登校の彼ら彼女らから、貴重な経験から生み出されるたくさんの宝石をもらっているんです。その宝石のおかげで新聞を作り続けることができるんです。

『不登校新聞』では、ボランティアで関わってくれるスタッフを「普通」に戻すための活動はいっさいしません。紙面にも、読者や読者の子どもを学校に戻すことを目的とした記事は、いっさいありません。

伝えたいのは、「自分を大切にしよう」というメッセージであり、そのためにはどうすればいいかというヒントを示すことです。

この夏は「不登校生 動画選手権」を開催しました。「学校へ行きたくない私から学校に行きたくない君へ」をテーマに、TikTokに動画を応募してもらうというものです。

不登校の子どもたちには、不登校の“強み”に気づいてほしいし、不登校だからできるという役割を見つけてほしい。そんな願いを込めた企画です。

おかげさまで、全部で300本もの動画が集まり、総再生数は1000万回を超えました。投稿作品は「不登校生動画選手権」(※1)で見ることができます。よかったらご覧ください。

※1=「不登校生動画選手権」

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次回は、現代の不登校最前線について伺います。

構成/石原壮一郎

フリースクールとはどんな場所か、選ぶ基準等々、不登校経験者でもあり、数々の不登校児童やその家族を取材してきた不登校新聞代表理事・石井しこう氏が詳しく解説『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。
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石井 しこう

Shikou Ishii
『不登校新聞』代表理事

『不登校新聞』代表理事。1982年東京都生まれ。中学2年生から不登校になりフリースクールに通う。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙『不登校新聞』のスタッフとなり、2006~2022年に編集長を務める。2020年から代表理事に。これまで不登校当事者、親、有識者など400人以上を取材。不登校にまつわる著作やメディア出演も多数。 最新刊は『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。不登校の親同士が気軽に話せる親専用コミュニティ「親コミュ」を毎月開催。 【URL】 ●全国不登校新聞 ※不登校新聞の購読は紙版、Web版、note(Web)、Amazonで購入可能。 ●不登校の親専用のオンラインコミュニティ「親コミュ」

『不登校新聞』代表理事。1982年東京都生まれ。中学2年生から不登校になりフリースクールに通う。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙『不登校新聞』のスタッフとなり、2006~2022年に編集長を務める。2020年から代表理事に。これまで不登校当事者、親、有識者など400人以上を取材。不登校にまつわる著作やメディア出演も多数。 最新刊は『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。不登校の親同士が気軽に話せる親専用コミュニティ「親コミュ」を毎月開催。 【URL】 ●全国不登校新聞 ※不登校新聞の購読は紙版、Web版、note(Web)、Amazonで購入可能。 ●不登校の親専用のオンラインコミュニティ「親コミュ」

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか