【不登校という選択】 小中学生・不登校35万人時代 子ども・親・学校はどこへ向かうの? 有識者・著名人が徹底的に考えた
【不登校】2024年 大きな反響を呼んだ記事8選をハイライトで
2024.12.28
不登校の小中学生は11年連続増加し、現在は34.6万人(2023年度/文部科学省調べ)。コクリコではこの状態をどうすればいいのか、有識者・著名人など、さまざまな方々に聞き、探り続けています。
多くの子どもたちが学校へ行けない・行かない今。親と教員、学校制度は、現状をどのように受け止め、変わるべきなのでしょうか。
2024年に公開した不登校に関する記事で、反響の大きかった8つの記事を振り返り、25年への展望を探ります。
目次
1)鴻上尚史さん「我が子の切実な訴えを受け止めて」
近年の不登校の増加に対して、作家で演出家の鴻上尚史さんは、「僕は何が問題なのかよくわからない。行きたくないなら、行かなくていいんじゃないかな」と見解を述べつつ、学校に行けないことが人生の失敗につながるなんてことは、まったくないと強調します。
さらにすでに学校に行かないを選択している子どもを「とても立派」「自信を持ちましょう」と肯定し、不登校で悩んだり自分を責めている子どもには、次のようにエールを送ります。
「今の自分にとって『いちばん大事なこと』は何かを考えてください。自分を守る道を選んでください。選ぶことができた自分をホメてあげてください。ゆっくり休んで、自分の道を歩き始めましょう」
また、「学校は人間関係を学ぶ場。マイナスの人間関係しか学べないなら行く意味はない」とも。無理に嫌いな人を好きにならなくてもよいけれど、嫌いな相手と対立しないコミュニケーション術はあるとアドバイスをくれました。
では親はどうすればよいのか。鴻上さんは、「親御さんとしては大きなショックを受けるでしょう」と親の気持ちに寄り添いつつも、「とにかく本人は今、“そうせざるを得ない状況”にあるんです」と諭します。そして親は「何はさておき、我が子の切実な訴えを受け止めてください。話を聞いてあげてください」とも。
なぜなら学校に行けない子どもはとても苦しんでいるから。そんな子どもにいちばん大事なのはまず「守ること」。心が悲鳴をあげている子を無理やり学校に通わせるのは、ブラック企業でも我慢して勤め続けるような人間に育てようとしているようなものだ、とも。
また、「悩む」と「考える」の違いを親は知っておこうとアドバイス。「困った困った」とアワアワするのは「悩んでいる」だけ。でも「考える」を始めると次の展開が見えてきます。鴻上さんの具体的なメッセージは行き詰まった親にも勇気を与えてくれます。
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2)学校の未来をみんなで考える
NHKも、よく「不登校」を番組テーマに取り上げています。2024年1月に放送された『NHKスペシャル“学校”のみらい~不登校30万人から考える~』(NHK総合)では、国内外の学校やフリースクールを紹介。専門家や不登校経験者をスタジオに招き徹底討論しました。
コクリコでは同番組の岡本朋子チーフプロデューサーにインタビュー。岡本さんが心に残ったシーンについて聞きました。
ひとつめは山形県の天堂中部小学校です。6年前、前校長が「子ども主体の学校にするんだ」と熱い思いを持って学校改革を行いました。
授業は一斉授業が全体の8割、子ども自身が学び方を選択する授業が2割で、その中には「フリースタイルプロジェクト」という、自分の興味のあることを自由に学んでいい時間があります。漫画を書く子や熱心にお化粧に励む子どももいたそうです。
「天童中部小学校の子どもたちの真剣な表情は素敵でしたし、イキイキとしていましたよね。そもそも学校改革は不登校対策で始めたことではありませんが、今、不登校の子どもはいないそうです」(岡本さん)
また、番組出演者の中で心に響いたメッセージも聞きました。麴町中学校の元校長の工藤勇一先生です。工藤先生も麴町中学で大幅な学校改革を行ったことでとても話題になりました。
「工藤勇一先生の『子どもたちは、生まれたときはみんな主体的な生き物。教育を受ける中で、どんどん主体性を失って、受け身になっていく』との言葉です。
悲しいことですよね。私を含め、大人たちは良かれと思って、子どもに『あれやれ』『これやれ』と言ってきましたが、今までの日本の教育のままでは、子どもが受け身になってしまうと問題提起してくださっています」(岡本さん)
日本の学校の課題とこれからをあらためて考える機会になります。
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3)何はなくとも“睡眠”が大事
発達脳科学者として35年以上さまざまな特性を持つ子どもを診てきた成田奈緒子先生。不登校の原因は子どもによってさまざまで、必ずしも「ふたたび学校に通うこと」がゴールではなく、学校に行かないことも選択肢のひとつで、どうにか学校に行かせようとするのは間違いなく逆効果と言います。
また、子どもが不登校になったという出来ごとは、親が家族のあり方や子どもへの向き合い方を見直すチャンスでもあるとも。学校や勉強のことはひとまず横に置いて、まずは家庭の穴ぼこを埋めるのが先決と言います。
「『不登校は親のせいだ』と言いたいわけではありません。でも、不登校の原因がどうあれ、親が、つまりは家庭が変わらないと、子どもの苦しい状態は変わらないのです」(成田先生)
親と家庭が変わる手段として、成田先生が言い続けていることはひとつ「睡眠をとらせれば、子どもはよくなる」。早寝早起きの生活リズムを整えて、朝ご飯をちゃんと食べることです。
子どもだけでなく、親も寝ないとダメ。大人も十分に寝て脳を休ませないと、悲観的なことしか考えられなくなるからです。「親子でしっかり睡眠を取れば、笑って話せるようになります」と成田先生は言います。
生活リズムを整えて改善しなかったケースはゼロだったと断言します。成田先生は、無気力な子どもや、親に反抗的だった子どもが、生活リズムを整えて見違えるように変わっていく姿をたくさん目の当たりにしてきました。
何はさておき「早寝早起き朝ごはん」、まず「これだけは守る!」と決め挑戦する価値は十分ありそうです。
➡注目記事➡ 発達脳科学者が断言 「子どもが不登校」の保護者が変えるべき「生活リズム」と「親の姿勢」
4)サボリじゃなく起きられない「起立性調節障害」
朝起きられない子どもの中には「起立性調節障害」というケースもあります。朝に自律神経がうまく機能せず、体調不良が起こるため学校に行きたくても通えない症状で、近年、小中学生で増加傾向です。
昼以降は改善することが多いため親は「頭痛いってウソだったのね!」と誤解しやすい面も。発症しやすい子どものタイプ、親の対応、病院のかかり方など、作業療法学博士の野藤弘幸氏に詳しく聞きました。
「起立性調節障害と診断される年齢は小学校高学年から中高生が中心ですが、幼児期からその兆候が見られることもあります。就学前から寝つきが悪く眠りが浅い、朝の機嫌が波打っている状態などが続く子は、身体の様子を十分に見てあげる必要があるかもしれません」(野藤氏)
特に気をつけてあげたいのが、注意力の狭さと感受性の敏感さ、2つの特性を合わせ持つ子どもです。
「『感受性』『注意力』という視点で常に子どもを観察していれば、不調のシグナルに気づき、その時々で必要な対応をとることができますよね。(中略)
表に出てくる『困った行動』を子どもの気持ちの問題だとすまさず、幼児期から子どもを理解しようとする思いを持ち続けてほしいです」(野藤氏)
➡注目記事➡ 「起立性調節障害」発症のリスクあり 「感受性」と「注意力」に特性のある子は「幼少期からの対応」がカギ
5)小島よしおさんが語るSNSと不登校
子どもに大人気の芸人・小島よしおさん。イベントなどでは子どもから「学校に行ってないんだ」と打ち明けられることもあるそうです。特に最近の子どもとSNSの関わりを危惧しています。