【不登校】 “オンラインフリースクール”で家から出られない子が変わる 最初の「半歩」を踏み出すための活用法とは[教育ジャーナリストがルポ]

『フリースクールという選択』ハイライト版3/4〜“オンライン”フリースクール〜 教育ジャーナリストおおたとしまさ 全4回 (3/3) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

代表の辻田寛明(ひろあき)さんは学生時代に東南アジアで貧困問題のフィールドワークを行っていました。

貧困の状態にあるはずの海外の子たちに触れれば触れるほど、逆説的に、日本の子どもたちが抱える生きづらさを痛感するようになり、ビジネスを通して社会課題を解決するボーダレス・ジャパンという会社に新卒で入社します。

2020年、同僚社員の子どもが不登校になったのをきっかけに事業化したのが、一対一のオンライン家庭教師サービス「夢中教室」でした。勉強を教えない家庭教師です。

子どもの「好き」を自己表現できて、「このひとだったらなんでも話せる」と思えるような大人とのつながりが、オンラインでもいいからつくれないかと考えました。

するとこんどは、夢中教室で出会った子どもたちから「友だちがほしいけど身の回りにはいない」「もっと家から一日を通した学びをしてみたい」という声が聞こえてきました。そこで、「ひとりの大人と密な関係のなかで学ぶ」ことに加え「仲間とつながり学び合う」機会もオンラインでつくっていきたいという思いが生まれます。

現在事業リーダーをしている松岡達也さんとの出会いもありました。もともと公立・私立の小学校で14年間教員をしており、学校の中だけで本当に子どもたちに必要な学びを届けられるのかという疑問を抱えていました。ふたりの想いが、2024年春に夢中カレッジとして結実します。

午前、小4から中学生を対象としたコースは2つに分かれます。ぐんぐん学びコースは友達とつながりながらプロジェクト学習に取り組み、一部教科学習サポートがあるコースです。じっくりサポートコースは先生とのマンツーマン対話を重視するコースです。1クラスは12人までの少人数制とし、それぞれのクラスに2人の先生がつきます。

低学年コースは1クラス6人までです。午後は「カレッジひろば」というオンラインの遊び場が開放されます。子どもたちはそこでいっしょにゲームをしたり、イラストを描いたりしています。

カメラで顔を見せながらのオンライン授業。  画像提供:夢中カレッジ
すべての画像を見る(全5枚)

東京学芸大学と連携し、SEL(セル/社会情動的スキル学習)の研究にも取り組んでいます。「知識ではなく『自己肯定感』や『つながる力』を育てることこそ、私たちの学びの核」と辻田さんは語ります。

「冬=安心」「春=自己理解」「夏=探究」「秋=発信」と段階を区切る季節モデルという独自のアセスメント手法も確立し、いまその子がどの段階にいるのかを見立てながらかかわり方を考えます。各段階を上とか下と序列化するのではなく、それぞれの子どもに訪れる季節のようなものだととらえます。

保護者には随時LINEでの報告を行っているほか、3ヵ月に1度は個人面談を行い、保護者座談会なども開催されます。

「春」や「夏」の段階の子どもたち向けのリアルイベントも定期的に行います。

「リアルで会うとぜんぜん違う。画面越しでは声も小さくて恥ずかしがっていた子が、リアルで会うとすごく元気で、友だちと走り回っていたりする。そういう姿を見ると、やっぱりリアルの機会も大事だなと感じます」と辻田さん。

いま構想中なのが、水族館でのリアルフリースクールです。普段オンラインで交流している魚好きの子どもたちが平日昼間にリアルな水族館に集まってともに学ぶというものです。

これができるなら、科学館や博物館などでも同様のことが可能になります。不登校でない子が来てくれてもいい。であるならばもうそれは、不登校の受け皿としてのフリースクールではありません。辻田さんはパラレル登校という概念を提唱します。

夢中カレッジでは学校復帰を促すようなことはいっさいしていませんが、結果的には約7割がなんらかの形やペースで学校に通うようになるようです。リアルなフリースクールとの併用も1〜2割います。

AIに一覧表をつくってもらうのもおすすめ

オンラインフリースクールは無数にあります。しかもオンラインですから、居住地域に関係なく、すべてが選択肢になり得ます。

選択肢が多すぎて困ってしまうという場合には、オンラインフリースクールを内容や料金で比較する一覧表をAIにつくってもらうのもおすすめです。オンラインフリースクールはどこもホームページが充実しているので、それが可能です。

そのうえで、ほとんどのオンラインフリースクールが体験期間を設けていますから、実際にいろいろなサービスを体験してみましょう。もちろん自宅から体験できます。

ちなみに、多くのオンラインフリースクールが、出席認定の対象になっている一方で、自治体のフリースクール等利用料の助成金の対象になったケースはまだ少ないようです。

なお、拙著『フリースクールという選択』の「第3章 オンラインで踏み出す最初の半歩」ではほかにも、オンライン習い事教室から派生した「SOZOW(ソウゾウ)スクール小中等部」、体験マッチングプラットフォームから派生した「aini(アイニー) school小中等部」、大手学習塾系の「クラスジャパン小中学園」と「シンガク」、完全個別オンラインフリースクールの「SUPER SCHOOL」を詳しく紹介しています。

ただし、拙著掲載のフリースクールは、多様性優先で選んだ結果であり、優良なサービスだけを選りすぐっているわけではありません。おおたとしまさが太鼓判を押しているわけではなく、あくまでも事例集としてご覧ください。

この本は、フリースクールという選択を検討しはじめた家族とともに、フリースクールという世界がどんなところなのかをざーっとひととおり見て回るガイドツアーのような本です。ただしガイドブックではありません。

各フリースクール運営者には、PRポイントよりも葛藤を詳しく聞いています。ある意味ネガティブな部分です。そこにフリースクールの現実があるし、それを語ってくれることこそが、フリースクールという選択を検討する家族の不安な気持ちに対する誠意だと思うからです。

上記6つのオンラインフリースクールの「中のひと」たちも、正直に、本音を語ってくれました。オンラインフリースクールというしくみが便利な半面、決して魔法の杖ではないことも伝わると思います。

取材・文/おおたとしまさ

おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

全4回の3回目
1回目〜小規模な個人商店型〜を読む
2回目〜大手通信制高校系〜を読む
4回目〜オルタナティブスクール〜を読む※2026年5月19日より公開

\予約受付中/▼【コクリコからのお知らせ】▼
『フリースクールという選択』(講談社+α新書)刊行。
お子さんの「学び」「居場所」の新しい選択肢。多様化するフリースクールの理想と現実をルポしました。

フリースクールという選択

フリースクールという選択

おおたとしまさ(著)

発売日:2026/05/11

価格:定価:本体1200円(税別)

この記事の画像をもっと見る(全5枚)

前へ

3/3

次へ

27 件
おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。