不登校24万人! 広島県教育委員会「校内フリースクール」の最適な学びとは?

子どもの居場所 ルポルタージュ #4~前編~ 広島県の校内フリースクール

ジャーナリスト:なかの かおり

多様な選択肢と個別最適な学び

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「広島県では、全ての児童生徒の主体的な学びの実現に向け、多様な選択肢と自己決定を意識した教育活動が必要として2019年度に、『個別最適な学び担当』を新設しました。

そして、こうしたSSRの取り組みを通して、個々に応じた学びを支援しています。不登校の児童生徒も、『ここなら来られる』という環境作りを心がけています。

広島県の平川理恵教育長が、前任の横浜市で、同じようなルームを作って始めた取り組みを参考にしています」(蓮浦さん)

SSRを作ることにより、少人数で安心できる場が確保され、学校に行きやすくなります。教室のざわざわした感じが苦手な子も、配慮された部屋になら集まりやすい。

これまでは、教室がしんどくなったら、帰るしかなかったけれど、「SSRに行く」という選択肢ができたおかげで、学校に来られなかった子が、ほぼ毎日、SSRに来られるようになったケースもあります。

2020年度、県内の指定校11校のうち9校の不登校児童生徒数は、前年度以下になりました。こうした校内にあるSSRに通うと、一定の要件のもと,所属校の判断で出席扱いとすることもできます。

広島県教育支援センターSCHOOL“S”のロビー。カラフルなソファーが印象的です。  写真提供:広島県教育委員会

目指すのは学級復帰ではない

意外にも、SSRに通う子たちの通常の学級への復帰は、前提とされていません。

「SSRでは、困った時にSOSを出すといった、『相談する力』と、『自分の強み』を知るメタ認知の育成に力を入れています。社会で生きるには、その2つの力が必要なんです。これらの力をつけるために、短期と長期の目標を立てます。

単なる居場所でなく、成長できる場になることを目標にしています。ひとりひとりの状況をアセスメントして目標を立て、子どもたちと共有し取り組み、そして専任の先生が、保護者や子どもたちと話したり、担任の先生や保健室の先生と情報交換したりしながらサポートします。

また、佐賀県のNPOが作った、メンタルの判定指標があるのですが、そちらを使って児童生徒のメンタルストレスなどを測り、ツールのひとつとして先生が話をする手がかりにしています」(蓮浦さん)

広島県教育支援センターSCHOOL“S”の学習室。 写真提供:広島県教育委員会
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