【中学受験】国語の「物語文」で迷わないために…入試で頻出の“王道3作品”

中学受験の国語で必ずといっていいほど出題される「物語文」。

暗記が効くわけでもなく、読解のコツを覚えても作品が変われば振り出しに戻る……「どう対策すればいいの?」と迷うご家庭は多いのではないでしょうか。

実は、入試に“よく出る”小説には、一定の傾向があります。

本記事では、その中でも多くの中学校が繰り返し出題してきた“王道の3作品”をご紹介し、受験のプロである早稲田アカデミー・本多弘篤先生に出題のポイントについて解説をしてもらいました。

「読書が苦手」「活字に抵抗がある」というお子さんにとっても、物語の入り口として手に取りやすい作品ばかりです。

“入試のための読書”を、ぜひ気負わずに始めてみてください。

和菓子職人の成長物語

『お菓子の船』
著者:上野 歩

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出題校:2024(令和6)年度 鷗友学園女子中学校/城北中学校など多数

【あらすじ】
和菓子屋だった祖父のどら焼きを再現するため、浅草で和菓子職人の修業を始めた和子(わこ)。

調べるうちに、祖父が太平洋戦争中、海軍の船で和菓子を作っていたと知る。忘れられない味を求め、奔走する先に待っているものは──。

たったひとつの和菓子が、時代を超えて人を突き動かす。心温まる、おいしい青春譚。

【早稲田アカデミー・本多先生のコメント】
作品全体を貫く「成長」という王道のテーマに加えて、「戦争」「職人の世界の価値観」「男性中心の社会でたくましく生きる女性」といった近年の中学入試では欠かせない要素がふんだんに盛り込まれた作品です。

祖父のどら焼きに近づくために和子が一つひとつ課題を克服し、謎を解き明かしていく展開は、中学入試への意識を抜きにしても面白く、引き込まれます。

また、タイトルにもなっている「お菓子の船」こと戦地に食料を運ぶ船「間宮」や、そこで人気を博したという「間宮羊羹」は実在していたものなので、戦時中のことに興味を持ち、調べてみる入り口にもできる一冊です。

ブラインドマラソンを舞台に、兄弟、家族の関係を描いた作品

『朔と新』
著者:いとうみく

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出題校:2021(令和3)年度 淑徳与野/浦和明の星/ラ・サール/栄光学園  2023(令和5)年度 昭和学院秀英

【あらすじ】
第58回野間児童文芸賞受賞作品。

兄の朔(さく)が1年ぶりに家へと帰ってきた。朔と弟の新(あき)は、一昨年の大晦日、父親の故郷で正月を迎えるために高速バスで仙台に向かい、バスが横転する事故に巻き込まれた。朔は視力を失い、盲学校での生活を送っていたのだ。大晦日に帰省することになったのは、新が母親と衝突したことが原因だった。本来の予定より一日遅れでバスに乗ったのが、運命を変えたのだ。

中学時代、新は長距離走者として注目を浴びていたが、ランナーとしての未来を自ら閉ざし、高校に進学した後も走ることをやめた。

そんな新に、突然、朔が願いを伝える。

「伴走者になってもらいたいんだ、オレの」

激しく抵抗する新だったが、バスの事故に巻き込まれたことへの自責の念もあり、その願いを断ることはできなかった。かくして兄と弟は、1本のロープをにぎり、コースへと踏み出してゆく――。

ブラインドマラソンを舞台に、近いからこそ遠くに感じる兄弟、家族の関係を描き切った青春ストーリー。

【早稲田アカデミー・本多先生のコメント】
今年度(2026年度)入試では、「病気」や「障がい」を抱えた本人やその周囲の人々の葛藤を描いた作品が目立ちましたが、本作品はその先駆けともいえる一冊です。

交通事故で視力を失った兄と、自身がその一因となったことへの自責の念に駆られる弟が、ブラインドマラソンに挑戦する中で互いの苦しみを理解し合う過程が丁寧に表現されています。

また、彼らを見守る周囲の人々も個性豊かに描かれているため、中学入試で求められる「異なる立場にある人物のそれぞれの視点に立ち、その思いを推し量る」という経験を積むのにも最適な作品です。

芥川賞候補作にもなった作品

『氷柱の声』
著者:くどうれいん

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出題校:2022(令和4年)年度 麻布/海城ほか

【あらすじ】
盛岡に暮らす美術部の高校2年生・伊智花は東日本大震災を経験し、被災県に住むものの被災者とは言えない自分の立場に葛藤する。

依頼を受けて被災地を応援する「絆」の絵を描くが、取材する記者は絵よりも「高校生の描く希望」を見ているような気がして──。

言えずにいた思いが会話の中で滴りはじめる初小説。第165回芥川賞候補作。

【早稲田アカデミー・本多先生のコメント】
「震災」を背景に持つ作品は、近年の中学入試でも根強く出題されています。現在小学生のお子様は東日本大震災をリアルタイムで経験したわけではないため、こうした作品を通じて、当時の社会状況や被災した人々が抱える苦しみに触れることには大きな価値があるでしょう。

中学入試で出題されたのは主に序盤の伊智花が学生のころの部分ですが、中盤以降、伊智花が大人になり社会に出る中でどのように自身の葛藤と向き合い、折り合いをつけていくのかという部分も是非、読んでみていただきたいところです。

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今回は、中学受験対策に役立つ“王道の3作品”をご紹介しました。

まずは気になった一冊から、お手に取ってみてください。

本多 弘篤
ほんだ ひろあつ

本多 弘篤

Hiroatsu Honda
早稲田アカデミー中学受験部上席専門職・国語科統括責任者

早稲田アカデミー中学受験部上席専門職・国語科統括責任者。 NN志望校別コース「桜蔭クラス」「女子学院クラス」国語科責任者を歴任。早稲田アカデミー本社でカリキュラム・教材作成や講師研修を担い、国語科を牽引するトップ講師。 早稲田アカデミー https://www.waseda-ac.co.jp/?bid2=header

早稲田アカデミー中学受験部上席専門職・国語科統括責任者。 NN志望校別コース「桜蔭クラス」「女子学院クラス」国語科責任者を歴任。早稲田アカデミー本社でカリキュラム・教材作成や講師研修を担い、国語科を牽引するトップ講師。 早稲田アカデミー https://www.waseda-ac.co.jp/?bid2=header