中学受験「中高一貫校は豊かな思春期を送るためのゆとり教育だ」教育ジャーナリストが解説

中学受験をする・しない どちらの場合でも親が心得ておくべきこととは #3 受験のタイミングと学校選び

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

受験のタイミングは中学受験、高校受験、わが子にとってどちらのタイミングがよいのでしょうか?  写真:アフロ
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教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏に聞く、中学受験をすることの意味と向き合い方について。
最終回となる今回は、過熱する中高一貫校への受験と学校選びのポイントについて伺います。中学受験を選ばなかった場合は高校受験が待っていますが、どちらの受験のタイミングがよいのでしょうか?

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おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験も。

中高一貫校は豊かな思春期を過ごす「ゆとり教育」である

───中学受験ブームの背景のひとつに、中高一貫校への人気が高まっていることが挙げられます。中高一貫教育について、おおたさんはどうお考えですか。

おおたとしまささん(以下、おおたさん):中高一貫教育は、大学受験のための先取り教育ではなく、「豊かな思春期を謳歌するためのゆとり教育」だと私は考えています。

とりわけ14歳、15歳の多感な時期は、友達と『ハリーポッター』のような冒険をしたり、好きな映画や音楽に触れたり、クラブ活動に打ち込んで過ごすのが、教育学、発達心理学の見地からいっても正しいと思っています。

15歳の高校受験の場合は反抗期と重なるので、親も大変です。家庭内不和になったり、反抗期が強く出すぎている子の場合は受験のパフォーマンスも下がります。逆に、反抗心が抑えられて受験にエネルギーが向かえば、2回目でもお話したとおり、受験システムへの過剰反応が起こる危険もあります。

そんな思春期の6年間を分断し、高校受験をさせているのは世界を見渡しても日本くらいなんですよ。だから、これを回避したかったら中学受験するしかないよね、という意見には私も大きく頷けます。

───中学は地元の公立に通い、15歳で高校受験というのはおすすめしないということですか?

おおたさん:12歳だと、未熟で自分をコントロールできないこともありますが、本人がまだ幼いので、親が騙し騙しあの手この手で受験に向かわせることができてしまいます。だからこそ、子どもを壊したり、傷つけてしまうリスクがある。12歳か15歳のどちらで受験したほうが良いかは一概には言えませんね。

その学校が持つ「ハビトゥス」が学校選びのカギ

───2回目の最後にも少しお話しいただいた中学校選びのポイントについてですが、おおたさんがご著書『なぜ中学受験するのか』(光文社新書)の中で語っていた「ハビトゥス(※注1)」という考え方もすごく印象的でした。

※注1
ハビトゥス…社会学用語で「特定の集団に共通してみられる、思考やふるまいのパターンを生み出す諸要因の集合」を意味する。

おおたさん:ハビトゥスとは、つまり「学校の文化」、その学校が持つ特有の「におい」のようなものです。たとえば、明治維新で江戸幕府が解体された際、新政府が官立の学校を作ったのに対して、維新の負け組はたくさんの私学を作りました。東京でいえば日比谷などの公立に主流派の文化が集中し、麻布や開成をはじめ異端の文化が集中しているのが私立だとざっくり捉えることができます。

そもそも学習指導要領が実質的に法的な拘束力を持っているため、私立と公立で教科書の内容に大差はないし、カリキュラムにもそう大きな違いはありません。しかしそれぞれの学校には教育理念、脈々と受け継がれてきた独自の文化や思想が息づいています。親はそうした目には見えない価値を感じ取り、どんなハビトゥスをわが子に身につけさせたいかを考えるのは学校選びの一つのポイントですね。

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