第44回講談社絵本新人賞受賞作家 みやもとかずあきの制作日記②(4コマ漫画つき)

新人賞受賞やてぇ!? のその後。の巻

作家:みやもと かずあき

制作日記 第2回

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↑鬼と桃太郎ご一行が揃ったら……。『ももたろう』をやるしかないですね!
すべてはこの連絡から始まりました。

「講談社絵本新人賞にみやもとさんが応募した作品『福の神』が選ばれました」

やったー!! 新人賞やてぇ! ほんまにぃ!?

で、そのあとなにがおこるのでしょうか。制作日記第2回はそのあたりのお話から始めたいと思います。

金屛風の贈賞式

まずは贈呈式当日の様子を。

講談社絵本新人賞の贈呈式は金屛風の前でとても盛大に催していただきました。審査員の先生にご挨拶に行くと、新人にしては年配なのと、ネクタイをしめているせいか講談社のお偉いさんに間違われたりして、服のチョイスが違っちゃったかなと思いました(笑)。

受賞のスピーチは、人前で話すのが苦手な僕にとっては針のむしろのような時間でしたが、佳作の方々は堂々としていてとても素敵なお話を聞くことができました。

式の後、審査員の4人の先生方から作品に対して感想、アドバイスをいただく時間がありました。

苅田澄子先生からは、終わりに近い場面の鬼が寂しそう。

北見葉胡先生からも、終わりに近い場面は鬼がちょっとかわいそうな気がする。

三浦太郎先生からは、主人公の顔をど真ん中においた表紙にもっと工夫を!

藤本ともひこ先生から、登場する家族が元気をなくす場面の表現が絵本というより漫画的だから他に表現方法を考えてみては。

他にもいろいろとお話しいただき、たいへんありがたく貴重な時間でした。

和歌山に住んでいるため、東京でのスケジュールは大忙し。贈呈式後、講談社の本社ビルに場所をかえて担当編集者と出版に向けての打ち合わせをしました(ちなみに担当編集者は新人賞受賞の連絡をいただいた声の主、僕にとっての福の神が担当してくださることになりました)。

打ち合わせの際、担当編集者の福の神から編集部の年賀状のイラストを描くよう指令が出ました。家に帰ってから張り切って何枚か描き、主人公の鬼の青くんと福の神がハイタッチしている絵に決まりました。のちのち、このハイタッチの絵がもとになり、受賞作の絵本の表紙を飾ることになったのです。
↑ハイタッチ表紙はこちら! ぜひぜひ書店さんで見かけたらお手にとってご覧ください! タイトルは『福の神』から変わって『あおくんふくちゃん』に。タイトルが決まるまでの裏話はまた次回。12月17日くらいから並び始める予定です。

鬼と福の神はこうしてできた!

ぼくが応募した『福の神』は舞台は昭和、ちょっとおとぼけの青くんと、しっかりちゃっかりものの福ちゃんがおりなすドタバタを描いた作品です。

ここからは鬼と福の神のキャラクター設定がどう決まったかをお話ししたいと思います。

鬼といえば、いかつい顔で身体が大きく、乱暴者、悪の権化というイメージです。

ですが、鬼を調べてみると、場所によっては神様だったり、厄除けだったり、悪い鬼ばかりではないみたいです。鬼の字が入った苗字もたくさんありますよね。

そんな身近な鬼、いろんな顔を持つ鬼のことが気になり、以前、鬼のお話をひとつ作りました。

『あな』という未発表の作品です。その『あな』には赤鬼と青鬼が出てきます。

赤鬼は丸顔、青鬼は四角い顔、どちらが主役かというと丸顔の赤鬼。でも、描いていて好きになったのは少しとぼけた青鬼のほうでした。

ここでまた、映画『スターウォーズ』に例えればルーク・スカイウォーカーより脇役のハン・ソロ船長のほうが人気が出たのと一緒です。

のちに『ハン・ソロ』がスピンオフで映画化されていますよね。

まさに『あな』のスピンオフが、今回の応募作品『福の神』なのです。

青鬼は『福の神』で主役をつかんだのでした。

青鬼の名前はいまでは青くんですがお話ができた当初、名前はなかったのです。

僕は先にテキストを考えてから、絵をつけて行く場合が多く、『福の神』もテキストが先で絵は後でした。ラフの段階で、青鬼の家がでてくる場面があり、入り口の上に看板を描いてました。看板には何を描くかは決めていなかったので、「○○庵」みたいな感じにしようかと考えましたが、なかなかよい名が浮かびません。

えーい、青鬼だから青くんでいいや。

こんなノリで看板には青くんと描き入れ、青鬼の名前は青くんに決まったのです。

対する福の神の名前ですが、これもまったく考えていませんでした。ところが打ち合わせのとき担当編集者の福の神から、

「青鬼もよいのですが私はこの福の神のキャラがかわいくて、気に入っています。福の神に名前があるのですか?」
「いいえ、ありません」
「そうなんですか。私、勝手に福ちゃんって呼んでいます!」

そういういきさつもあって、呼びやすくてぼくも福の神を福ちゃんと呼ぶようになりました。やがて本編でも「ふくちゃん」の名前が登場するようになります。

ふくちゃんのキャラクター設定は、気がつけばこんなふうになっていたというのが正直なところです。容姿は福の神といえばふくよかなお顔立ちのお多福さんというイメージ。ふくちゃんの性格は、ぼくの身近な人たちがしっかりちゃっかりした人が多いので、見ていたら自然とそうなったのだと思います。もちろん良い意味で。そこは強調しておきます(笑)。

ともあれ、こうして鬼と福の神のキャラクターが出来上がっていきました。

タイトル変更の長い旅が始まった

さて、応募したときにつけていたタイトルの『福の神』ですが、さきほど書影をお見せしたように、最終的に『あおくんふくちゃん』の名前で出版されることとなりました。

担当編集者福の神が
「タイトルを変えませんか」
の一言でなんと『福の神』が名前を変えることになったのです。

長ーい、長ーい、命名変更作業の始まりです。

このつづきはまた次回。
↑鬼もいろいろ苦労が絶えませんね。

講談社絵本新人賞 受賞作既刊

19 件

みやもと かずあき

Kazuaki Miyamoto
絵本作家

和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。

和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。