制作日記 第2回
「講談社絵本新人賞にみやもとさんが応募した作品『福の神』が選ばれました」
やったー!! 新人賞やてぇ! ほんまにぃ!?
で、そのあとなにがおこるのでしょうか。制作日記第2回はそのあたりのお話から始めたいと思います。
金屛風の贈賞式
講談社絵本新人賞の贈呈式は金屛風の前でとても盛大に催していただきました。審査員の先生にご挨拶に行くと、新人にしては年配なのと、ネクタイをしめているせいか講談社のお偉いさんに間違われたりして、服のチョイスが違っちゃったかなと思いました(笑)。
受賞のスピーチは、人前で話すのが苦手な僕にとっては針のむしろのような時間でしたが、佳作の方々は堂々としていてとても素敵なお話を聞くことができました。
式の後、審査員の4人の先生方から作品に対して感想、アドバイスをいただく時間がありました。
苅田澄子先生からは、終わりに近い場面の鬼が寂しそう。
北見葉胡先生からも、終わりに近い場面は鬼がちょっとかわいそうな気がする。
三浦太郎先生からは、主人公の顔をど真ん中においた表紙にもっと工夫を!
藤本ともひこ先生から、登場する家族が元気をなくす場面の表現が絵本というより漫画的だから他に表現方法を考えてみては。
他にもいろいろとお話しいただき、たいへんありがたく貴重な時間でした。
和歌山に住んでいるため、東京でのスケジュールは大忙し。贈呈式後、講談社の本社ビルに場所をかえて担当編集者と出版に向けての打ち合わせをしました(ちなみに担当編集者は新人賞受賞の連絡をいただいた声の主、僕にとっての福の神が担当してくださることになりました)。
打ち合わせの際、担当編集者の福の神から編集部の年賀状のイラストを描くよう指令が出ました。家に帰ってから張り切って何枚か描き、主人公の鬼の青くんと福の神がハイタッチしている絵に決まりました。のちのち、このハイタッチの絵がもとになり、受賞作の絵本の表紙を飾ることになったのです。
鬼と福の神はこうしてできた!
ここからは鬼と福の神のキャラクター設定がどう決まったかをお話ししたいと思います。
鬼といえば、いかつい顔で身体が大きく、乱暴者、悪の権化というイメージです。
ですが、鬼を調べてみると、場所によっては神様だったり、厄除けだったり、悪い鬼ばかりではないみたいです。鬼の字が入った苗字もたくさんありますよね。
そんな身近な鬼、いろんな顔を持つ鬼のことが気になり、以前、鬼のお話をひとつ作りました。
『あな』という未発表の作品です。その『あな』には赤鬼と青鬼が出てきます。
赤鬼は丸顔、青鬼は四角い顔、どちらが主役かというと丸顔の赤鬼。でも、描いていて好きになったのは少しとぼけた青鬼のほうでした。
ここでまた、映画『スターウォーズ』に例えればルーク・スカイウォーカーより脇役のハン・ソロ船長のほうが人気が出たのと一緒です。
のちに『ハン・ソロ』がスピンオフで映画化されていますよね。
まさに『あな』のスピンオフが、今回の応募作品『福の神』なのです。
青鬼は『福の神』で主役をつかんだのでした。
青鬼の名前はいまでは青くんですがお話ができた当初、名前はなかったのです。
僕は先にテキストを考えてから、絵をつけて行く場合が多く、『福の神』もテキストが先で絵は後でした。ラフの段階で、青鬼の家がでてくる場面があり、入り口の上に看板を描いてました。看板には何を描くかは決めていなかったので、「○○庵」みたいな感じにしようかと考えましたが、なかなかよい名が浮かびません。
えーい、青鬼だから青くんでいいや。
こんなノリで看板には青くんと描き入れ、青鬼の名前は青くんに決まったのです。
対する福の神の名前ですが、これもまったく考えていませんでした。ところが打ち合わせのとき担当編集者の福の神から、
「青鬼もよいのですが私はこの福の神のキャラがかわいくて、気に入っています。福の神に名前があるのですか?」
「いいえ、ありません」
「そうなんですか。私、勝手に福ちゃんって呼んでいます!」
そういういきさつもあって、呼びやすくてぼくも福の神を福ちゃんと呼ぶようになりました。やがて本編でも「ふくちゃん」の名前が登場するようになります。
ふくちゃんのキャラクター設定は、気がつけばこんなふうになっていたというのが正直なところです。容姿は福の神といえばふくよかなお顔立ちのお多福さんというイメージ。ふくちゃんの性格は、ぼくの身近な人たちがしっかりちゃっかりした人が多いので、見ていたら自然とそうなったのだと思います。もちろん良い意味で。そこは強調しておきます(笑)。
ともあれ、こうして鬼と福の神のキャラクターが出来上がっていきました。
タイトル変更の長い旅が始まった
担当編集者福の神が
「タイトルを変えませんか」
の一言でなんと『福の神』が名前を変えることになったのです。
長ーい、長ーい、命名変更作業の始まりです。
このつづきはまた次回。
講談社絵本新人賞 受賞作既刊
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第43回新人賞受賞作『ぎょうざが いなくなり さがしています』玉田美知子・作
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第42回新人賞受賞作『タコとだいこん』伊佐久美・作
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第41回新人賞受賞作『にんじゃいぬタロー』渡辺陽子・作
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第40回新人賞受賞作『まよなかのせおよぎ』近藤未奈・作
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第39回新人賞受賞作『いっぺん やって みたかってん』はっとりひろき・作
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第38回新人賞受賞作『おじいちゃんの ふしぎなピアノ』はまぎしかなえ・作
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第37回新人賞受賞作『ピカゴロウ』ひろただいさく・ひろたみどり・作
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第36回新人賞受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』石川基子・作
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第35回新人賞受賞作『てがみぼうやのゆくところ』加藤晶子・作
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第34回新人賞受賞作『きいのいえで』種村有希子・作
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第34回佳作受賞作『それなら いい いえ ありますよ』澤野秋文・作
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第33回新人賞受賞作『シールの かくれんぼ』定岡フミヤ・作
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第33回佳作受賞作『おにぎりにんじゃ』北村裕花・作
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第32回新人賞受賞作『ぼくと おおはしくん』くせさなえ・作
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第30回新人賞受賞作『あっぱれ! てるてる王子』コマヤスカン・作
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第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』シゲタサヤカ・作
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第29回新人賞受賞作『たこやきかぞく』にしもとやすこ・作
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第28回新人賞受賞作『つぎはぎ おばあさん きょうも おおいそがし』たかしまなおこ・作
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第27回新人賞受賞作『おもちのきもち』かがくいひろし・作
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第25回新人賞受賞作『ミーちゃんですヨ!』なかややすひこ・作
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第25回佳作受賞作『いぬの ムーバウ いいね いいね』高畠那生・作
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第24回新人賞受賞作『むしゃむしゃ武者』藤川智子・作
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第21回新人賞受賞作『ガボンバのバット』牛窪良太・作
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第20回新人賞受賞作『かみをきってみようかな』足立寿美子・作
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第19回新人賞受賞作『トカゲのすむしま』串井てつお・作
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第18回新人賞受賞作『ハワイの3にんぐみ』笹尾俊一・作
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第16回新人賞受賞作『しろへびでんせつ』山下ケンジ・作
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第14回新人賞受賞作『ふしぎなカーニバル』あきやまただし・作
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第5回新人賞受賞作『新装版 ばあちゃんのえんがわ』野村たかあき・作
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第2回新人賞受賞作『新装版 ゆきのひ』佐々木潔・作
みやもと かずあき
和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。
和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。