知られざる意外な経歴!? 大人気キャラ「うさぎとくま」が生まれるまで
SNS発! わかるさんがイラストレーターになるまでとなってからのこと
2024.04.12
今ではX(旧Twitter)フォロワー数22万人超えの(2024年3月現在)わかるさんですが、どのようにして大人気イラストレーターになったのでしょうか。意外なきっかけと経歴をおうかがいしました。
また、作品制作からSNSの更新、海外展開にいたるまで、ほとんどすべてを自分一人でやっているというわかるさん。ファンはもちろん、イラストレーター志望の方も必見のロングインタビューです。
目次
ヴィレヴァンのアルバイトで、絵を描く習慣が戻ってきた!?
わかるさん:絵を描くのは子どものころから好きでした。小学生のころ、習い事としてアートスクールで水彩や油絵などを描いていました。他にもスイミングやピアノなどもしていましたが、習い事の中では一番楽しみに通っていた記憶があります。
私は石川県出身なんですが、周りにイラストレーターの方がいなかったのもあり、絵を描くことが好きだから仕事にしようという発想はなかったです。イメージがわかないというか。特にしたいことがないタイプの子どもで、将来の夢とかもなかったです。
中学校ではバレーボール部に入り、絵を描くことをしなくなってしまいました。高校卒業後は歯科衛生士の専門学校に行ったんですけど……。
──歯科衛生士! イラストレーターとはだいぶ違う感じがしますが、どうしてその進路を選んだのでしょう?
わかるさん:手に職がいいだろうということで、漠然と医療系に進むだろうっていうのは自分の中にありました。ちょうど友達が歯科衛生士の学校見学に行くのについていって、そのままじゃあ私もこれにしようぐらいの感じでした。晴れて歯科衛生士になったものの、当時付き合っていた方と結婚することになり、彼が転勤族ですぐに三重県に引っ越すことに。歯科衛生士は2年弱ぐらいでやめちゃったんです。
転勤族ということで三重では定職につきづらく、今までと違うことをしてみようと思って、ヴィレヴァン(ヴィレッジヴァンガード/書籍と雑貨の複合店)でアルバイトを始めました。そのときはもう絵を描く習慣がまったくなかったのですが、ヴィレヴァンってポップに手書きで文字を書いたり、絵を描いたりするじゃないですか。
──たしかに、よく見ます。
わかるさん:それで、あ! 自分は絵を描くことが好きだった!と思い出しました。そして、描く習慣が戻ってきました。さらに、生まれ育った地元から離れたせいで友だちもいなかったので、BOOKOFFにずっとひとりで通っていたんです(笑)。週3~4日ぐらいBOOKOFFにいて、漫画を読んだり、雑誌を読んだり、人の絵を見る習慣もできていました。
ちょうどそれくらいのタイミングだったと思うのですが、クリエイターズスタンプといって、LINEスタンプがだれでも出せるようになったんです。ためしに出してみたのですが、特にそんなに売れることもありませんでした。
──それはご自分で調べて販売したんですか?
わかるさん:はい、自分で調べてやりました。そのときに初めて板タブ(専用のペンとタブレットでPC上にイラストを描くツール)で絵を描いて、申請して……。なんとかできたけれど、今見ると線がよれよれだったりします。
──そのころにはもう、SNSはやっていましたか?
わかるさん:いえ、Twitter(現X)を始めたのはそのあとです。LINEスタンプも売れないし、名古屋のイベントスタッフみたいな短期のアルバイトを始めたんですが、三重から名古屋への移動時間が暇だったんですよね。それで、匿名の「わかる」っていう名前で、Twitterを始めました。
最初はイラストを載せていなかったんです。でもその当時、「Twitterの絵が書籍になる」みたいなことがちょっと流行っていた時期でした。だんだん、自分もなにかやればできるんじゃないかなって思うようになって、絵を載せたりするようになりました。
ちょっとずつフォロワーさんが増えていったころでしたが、今度は横浜に引っ越すことになりました。Twitterで知り合った人がイラストレーターだったんですけど、引っ越しを機に会って、イラストレーターってこうやってやるんだって話を聞いたんです。
──イラストレーターとしてのノウハウは、そこで学んだのですね。
わかるさん:そうですね。Photoshopってこうやって使えばいいんだとか、仕事のメールってこうやって送るんだみたいなことをまったく知らなかったので。そうこうするうちに、少しずつTwitterにあげていた絵がいつのまにかたまってきて、フォロワーさんも10万人ぐらいになったころでしょうか。「書籍を出しませんか?」と何社かに声をかけていただき、1冊の本にしていただきました(『今日は早めに帰りたい』KADOKAWA刊)。
それまではクライアントワーク(クライアントからの発注を受け、要望に沿った作品を納品すること)などもよくわかっておらず、全然できない状態だったんですが、本が出版されたことで「この本にある絵は描けるよね」っていうのがわかりやすくなりました。そのあたりから依頼が増えてきたと思います。依頼してくれる人も私がまだいろいろわかっていないことを理解して、いろいろ教えてくれました。
データの作り方や納品の仕方でわからない部分があれば必ず質問して、少しずつできるようになっていきました。今はたぶん……それなりにできるようになったんじゃないかなと。本を読んだり、ネットで調べたりしながら、だんだんとこうなりました。
代表作の「うさぎとくま」が生まれたきっかけ
わかるさん:いえ、もう今は販売停止してるんですけど、……ひとがたのキャラクターです。その次が歯のスタンプ。その次がうさぎとくまで、うさぎとくまから板タブを使って書き始めました。それまでは手描きの絵をスキャンしていました。
──最初のひとがたのスタンプは、いつごろつくったか覚えていますか?
わかるさん:2015年ぐらいだったと思います。
──もうすぐ10年になるのですね! 今まで何種類くらいのLINEスタンプを販売されたんですか。
わかるさん:何種類だろう。数えてみないとわかりませんが、30種類くらいでしょうか。販売停止したものもあるので……。
※後ほど確認したところ、絵文字もあわせると43件販売中でした!(2024年3月現在)
──「うさぎとくま」のキャラクターが生まれたきっかけはありますか?
わかるさん:あんまり覚えてないんですけど、たしか、キャラクターを2個つくろうとしてたんですよね。対になる表現が好きなので、耳の長さと色だけがちがうキャラクターがいたら面白いんじゃないかって思ったのが始まりだったかと。
笑っている目も、上下を逆さまにしたら目をつぶっているように見えるじゃないですか。対になる何かが、すっきりしていて好きなんですよね。そうやってつくった記憶があります。
ため込みNG! わかるさんのビジネスの流儀
わかるさん:基本的には私ひとりですが、不定期で展示の準備やグッズ制作、撮影を手伝ってくれるアシスタントがいます。
──ギャラリーとのやりとりやスケジュール調整、グッズの納品、請求書の発行など、事務的なこともアシスタントさんではなく、わかるさんがやっているんですか?
わかるさん:はい。
──なるほど。ちょっと偏見かもしれないですが、クリエイターさんの中には作品づくり以外で、仕事のためにしないといけない事務作業は苦手……という方もいらっしゃるのではないかと思います。わかるさんはそういうことも得意だったんでしょうか。
わかるさん:どうだろう。面倒くさいは面倒くさいんですけど、わりと苦ではないタイプかもしれません。
──ほぼおひとりでお仕事を続けるにあたり、大切にしていることはありますか?
わかるさん:メールやお問い合わせはなるべく早く返すようにしています。なんでもため込まないのが一番。ためちゃうとこちらも大変ですし、返事が遅いと相手も嫌な思いをさせてしまうので。ちょっと面倒くさいことも、早めに返す。仕事の依頼をしてくださる方も、例えばこの二人でどちらに依頼しようって迷ったときに、レスポンスが早かったり頼みやすいほうを選びたくなるんじゃないかなと思うので。
──ちょうどわかるさんとやりとりをされている方から、わかるさんは連絡をするとすぐお返事をくださって本当にありがたいという話をうかがいました。そういったことはやはりとても大切ですね。
すべてはSNSから始まった!? わかるさんにとってのSNSとは。
わかるさん:そうですね。横の繫がりで少しずつ知り合いが増えていくっていう感じです。でも、そんな頻繁に会うわけではないです。
──そういう繫がりから、グループ展を開いたりするのでしょうか。
わかるさん:グループ展はキュレーター(展覧会の企画者)の方が何人かを集めて開催するので、出ている人も知っていたり知らなかったりします。横の繫がりでとかではないですね。
──今はX以外もSNSをやられていると思うんですが、どういう使い分けをされていますか?
わかるさん:インスタは海外からの問い合わせが多いので、本が出るようなちょっと特別なときは日本語で投稿するんですけど、普段は英語も使ってやるようにしてます。
──インスタは、イラストや書籍の紹介の意味合いが強いのですね。Xではイラストの投稿以外にも、日々の発信をするという形でしょうか。
わかるさん:以前はそうですね。でも今はもうそういったことはほとんどしないですね。Threads(スレッズ/テキストに特化したSNSのひとつ)のほうがわりと日常っぽいかもしれないです。
──イラストでも日常でも、発信することはお好きですか?
わかるさん:いや、実は全然。どちらかというとあんまり目立ちたくないので。
──そうなんですか!? じゃあどちらかというと、お仕事のためにSNSをやっているっていう感じですか?
わかるさん:いろんな投稿をして、ちょっと面白がってもらえるみたいなのがすごい嬉しかったので、楽しくてやってた部分ももちろんあります。
あとは7年前ぐらいにオーストラリアに留学したんですが、そのタイミングでイラストレーターになろうと思ったんです。仕事を持っていけるじゃないですか、現地で働かなくても。それでSNSを利用したのが、たぶん一番大きいですね。
キャラクターの「ニコニコ」のわけは「誘い笑い」
わかるさん:一番初めのスタンプのときから、ニコニコを描いてましたね。
──ひとがたのキャラクターのときから!
わかるさん:そうですね。あと高校生か専門学生くらいのとき、人の似顔絵を描くのは好きで、その似顔絵も笑った顔で描いていました。
──それから今もずっとニコニコを描き続けていて、何か「思い」のようなものがあるのですか?
わかるさん:笑顔の絵を描くのが好きっていうのが一番で、あと私はSNSに投稿するところから始めていて、LINEスタンプとかコミュニケーションのひとつとしてイラストをつくっている部分が多いので……なんだろう。「誘い笑い」のようなニュアンスが強いのかなと思います。
──わかるさんのように、SNSなどで自分の作品を投稿して、クリエイターとして活躍していきたいという方がたくさんいらっしゃると思います。そういう方に向けて、アドバイスやメッセージをいただけたら嬉しいです。
わかるさん:ここ10年くらいでSNSを活用して、イラストレーター、作家として活動できるようになった方はとても多いと思います。
わたしの場合も、LINEクリエイターズスタンプブーム、Twitterからの書籍化ブームなどなど、いくつかのブームにやや乗れたことが大きいと思います。どれも成功までの結果を残せなかったので、やや乗れたぐらいですが(笑)。今まで継続してお仕事をいただけているのはそのおかげかなと感じています。
同年代くらいの他のクリエイターさんを見ても、何かしらのブームに乗れたという方は多いと感じます。ブームひとつひとつは一過性のものなので今は再現性がないものですが、次に乗れそうなブームが来たときはチャンスだと思って気後れせずに乗ってみるのも良いかもしれませんね。
あとは、自分自身の使える時間、したいこと、得意なこと、好きではないけど平気なことを生かして、今の世の中での自分の役割や、イラストを通しての人とのつながり方を見つけていくことが大切かなと個人的には思います。
──なるほどですね。とても参考になりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
0歳から楽しめる、みんなが笑顔になれる絵本!
わかるさんが手がけた、初めての赤ちゃん絵本が発売中。
キャラクターにつられて、お母さんもお父さんも赤ちゃんも、み~んなニコニコになれちゃいます。
わかる
ニコニコした顔をシンプルな線で表現したイラストが特徴の、平成生まれのイラストレーター・アーティスト。うさぎとくまのゆるいつぶやきのLINEスタンプで、若者から大人まで、一気に全国的な人気に。その活動は国内だけにとどまらず、ロンドン・スペイン・韓国など、海外での展覧会も開催、好評を博している。著書に「今日は早めに帰りたい」(KADOKAWA)「疲れたあなたをほめる本」(ポプラ社)「感情を育てる じぶんのきもち」(大泉書店)など。また、Xはフォロワー数22万6000人(2023年10月現在)など、SNS上のファンも多数抱え、グッズが完売するなど話題に事欠かない。
ニコニコした顔をシンプルな線で表現したイラストが特徴の、平成生まれのイラストレーター・アーティスト。うさぎとくまのゆるいつぶやきのLINEスタンプで、若者から大人まで、一気に全国的な人気に。その活動は国内だけにとどまらず、ロンドン・スペイン・韓国など、海外での展覧会も開催、好評を博している。著書に「今日は早めに帰りたい」(KADOKAWA)「疲れたあなたをほめる本」(ポプラ社)「感情を育てる じぶんのきもち」(大泉書店)など。また、Xはフォロワー数22万6000人(2023年10月現在)など、SNS上のファンも多数抱え、グッズが完売するなど話題に事欠かない。