本気の「ハイジ展」が浜松市美術館で ほら♪ あの子に会ってきた!
スイスでも見られない原作の挿絵やなつかしいアニメのセル画や絵コンテがいっぱい!
2022.07.15
火であぶって溶かしたチーズを食べたり、わらのベッドに寝てみたり。アルプスでの暮らしに憧れたものです。
アニメに詳しい方なら、高畑勲や宮崎駿、小田部羊一と、錚々たる面々が制作に入っていたことを思い出されるかもしれません。
そのハイジの「本気の展覧会」が浜松市美術館であると聞き、さっそく伺ってきました。
スイスでも見ることができない原作の挿絵を展示
『ハイジ』の原作者は、ヨハンナ・シュピーリというスイス人の女性の作家です。1880年(明治13年)にハイジの物語を発表し、人気を博しました。少女小説の分野で、大学で学ぶ女性の物語をはじめて書いた作家といわれています。
1階の展示では、作家シュピーリと原作本、そして、各国語版の展示があります。
貴重なものが目白オシなのですが、なかでも、原作本についたはじめての挿絵、プファイファーの原画の展示に目が釘付けに。
プファイファーは、ルートヴィヒ2世の依頼で馬の絵を描いていたほど、動物を描くことに定評があった画家。山の牧場でヤギとたわむれるハイジがかわいすぎます…!
画家にあてたシュピーリの直筆の手紙も展示されていて、この挿絵をすばらしいと喜んでいるのがわかり、こちらまでうれしくなります。
そして、この絵は、原作者が暮らしたスイスのチューリヒにあるシュピーリ文書館や、生まれ故郷ヒルツェル村のシュピーリ記念館でも見ることができず、本邦どころか、世界初公開!
浜松市美術館の学芸員さんが、手ずからスイスから運んできたと聞き、この展示にかける本気度が伝わってきました。
テレビアニメ放映の前も「ハイジ」は人気者だった
「少女の友」や「少女クラブ」などの雑誌や文学全集などでも次々に紹介され、人気となったハイジ。蕗谷虹児や松本かつぢ、高橋真琴など一世を風靡した画家たちの描くハイジの絵もたっぷり見ることができます。
これがまたどれもかわいいのです…!
2階では、伝説のアニメのできるまでを紹介
総合演出を手がけた高畑勲や、画面構成の宮崎駿、キャラクターデザインの小田部羊一など、メインスタッフのスイスロケの様子も写真で紹介され、楽しくも真剣な雰囲気が伝わってきます。
アニメを作るために現地ロケをするというのは、はじめての試みであり、そこまでしたからこそ、世界中の人たちから「これぞスイス!」と言われる作品になったのだなあと深く納得しました。
絵コンテやセル画など、見ただけで「あ、あのシーン!」と思い浮かぶものが惜しげもなく並べられており、当時のアニメがどのように作られていたのかもわかります。
制作の際に実際に使われていたデスクなども展示されていて、興味はつきません。
また、主題歌のあのヨーデルをうたった方の写真や収録エピソード、歌詞を依頼された岸田衿子さん直筆の原稿などもあり、これほどの手間ひまをかけて作られたものを何も知らずに楽しんでいたことに感謝の念がわいてきました。
大好きだったテレビアニメーションの原作やその歴史、制作者たちの思いにふれることができ、大満足の展覧会でした。
2022年9月11日までの開催です。気になる方はぜひ、夏休みに出かけてみてくださいね。