子どもだけじゃない 「大人も好きなことをする」で広がる〔民間学童〕「こどもリビング」の好循環

#3 民間学童こどもリビングから地域に広がっていく「好きなこと・やりたいこと」が軸のつながり

コクリコサポートエディターズ:笹川 かおり

写真:こどもリビング

9歳と3歳の男の子きょうだいを育てているエニママのライター・笹川かおりです。

我が家の長男が通う学童保育施設「こどもリビング」のオーナー・田中鉄太郎(たなかてつたろう/以下てつさん)さんと、スタッフの二宮蓮夢(にのみやれん/以下れんさん)さんへのインタビュー記は、今回が最後になります。

最終回・第3回のテーマは「子どもも大人も好きなこと・やりたいことをする」です。

【第1回】
2男児ママが民間学童保育施設「こどもリビング」に学ぶ子どもの自由と規律の両立
【第2回】
なんでもやっていい 民間学童保育施設「こどもリビング」の子ども市場 ママの取材でわかったこと

田中鉄太郎(たなか てつたろう)プロフィール
株式会社ウィズチャイルド代表。保育士・国際モンテッソーリ教師・調理師・食育指導士。東京都多摩市で、学童保育とコミュニティカフェの融合施設『こどもリビング』のほか、東京都認証保育所4園、企業主導型保育園1園を経営。

二宮蓮夢(にのみや れん)プロフィール
早稲田大学院人間科学研究科(修士課程)卒業。こどもリビングのコミュニティマネージャーとして、こどもたちが地域と緩やかに繫がりながら成長していくことを目指して多様な活動を展開している。

#1・#2では、こどもリビングに通う子どもたちが責任をともなう「本当の自由」について学びながら、自分たちの好きなことややりたいことに日々取り組んでいることをお話ししました。

しかしどうやら、こどもリビングで好きなこと・やりたいことをしているのは子どもたちだけではなく、スタッフさんや遊びの達人(※)の方々などの大人たちも同様のようだ……と筆者が気づいたのは、長男が通いはじめて1ヵ月ほど過ぎたころ。ちょっとした雑談の端々から、やりたいことや得意なことをこどもリビングで実現できていることが伝わってきます。

そんなみなさんはいつもリラックスしたたたずまいで穏やか、そして自然体。接しているとなんとなく肩の力が抜けて、心がほっと安らぎます。そんな大人たちが運営している場所だ、ということは、私がこどもリビングを信頼している理由の1つでもあるのです。

スタッフも利用者も、みんなが自分のやりたいこと・好きなことを尊重してもらえる……。#3では、こどもリビングがそんな場所になった背景についてお話をうかがいました。

※遊びの達人……こどもリビングに定期的に関わる自然遊びや工作、おもちゃ遊びなどの道に精通した地域のみなさん

子どもも大人も、本当にやりたいことは今すぐどんどんやったほうがいい

──こどもリビングには本当に、「好きなことややりたいことをなんでもしていいよ」という空気がありますね。

てつさん:

今の社会は、子どもだというだけで、いろいろと制限をかけていますよね。私自身、子どものころに「制限されているな」と感じていたし、それに対して反発心のようなものもあったんですね。だから、こういう場所をつくったのかもしれません。

だけど、今は「会社をつくりたい」と思い立ったらすぐにつくれてしまう時代ですよね。本当にやりたいことがあれば、子どもでもどんどんやればいいんじゃないかなと思うんです。

学生生活を経て社会人……というルートをたどらなくても、明日から社会人でもいい。極端な話、中学生をやりながら社会人、というような生きかたもあっていいと思っているし、そういう世界をつくりたいな、と。

モンテッソーリの言葉に、「地球の平和を願うなら、こどもからはじめなさい」という言葉があるんです。子どもは平和を望んでいるもので、噓をついたりだましたり、ましてや誰かに何かしてやろうなどということは、ほとんど考えていないものなんですね。

その純粋なままの子どもたちにさまざまな判断を任せていけば、必ず平和な方向に向かっていくものなんだと思います。

中2階のスペースで何やら集中している様子の、筆者の長男。 写真:こどもリビング 

──子どもたちが自分の好きなこと・やりたいことをしているのはもちろんなのですが、スタッフさんや「遊びの達人」の方々といった大人たちも、みなさんそれぞれがやりたいことをこどもリビングでしているように見えます。

てつさん:

そうですね。好きなことややりたいことがあるかどうか、は、一緒に働いてもらうかどうかを決める際に重視するポイントの1つです。

我々の仕事は「保育」と一言でくくられてしまいがちなのですが、そのなかでやりたいことは、人によって実はバラバラだったりします。保育を通してどのように「やりたいこと」を実現したいのか? という部分が具体的じゃないと、実際に組織のなかで実現するのは難しいものなんです。でも、具体的にやりたいことがある人は、その「やりたいこと」が満たされればオッケーだからシンプルなんですね。

たとえばれんさんもコウジ(保育スタッフのフロレス光地さん)も、やりたいことがたくさんあってここ(こどもリビング)にいてくれています。子どもの一番近くで接している大人が、自分のこと・やりたいことをやれていれば、「好きなこと、やりたいことをもっとやっていいんだよ」ということが、言わずとも子どもたちにも伝わるものだと思っています。

元大工のコウジさんは、木で何かをつくるのが好きで得意なのだそう。黙々と木工の仕事に取り組むコウジさんの姿を、筆者もよくお見かけします。 写真:こどもリビング

──たしかに、いくら言葉で「好きなことをしてね」と言われても、それを言う大人がぜんぜん楽しそうじゃなかったり仕事をイヤそうにしていたりしたら、なんとなく察してしまうかもしれませんよね。れんさんは地域の人々と子どもたちをつなげる活動がしたくてこどもリビングに就職したそうですが、実際どうですか?

れんさん:

#2でお話しした「わくわくマルシェ」はまさに、地域の人々と子どもたちをつなげる活動の1つとして私が発案し、子どもたちと一緒に企画したイベントです。

実は、「わくわくマルシェ」での子どもたちのパフォーマンスショーがきっかけで、地域のイベントでもパフォーマンスをさせていただけるようになってきたんです。これまでに2回ほど、オファーを受けた子どもたちがイベントに出演しました。

「自分たちの活動で身近な人だけでなく、地域の方にも喜んでもらえるんだ」と子どもたちの自信や喜びにもなっているようですし、そんな子どもたちの様子を見ると私も嬉しくなります。

私自身がこどもリビングでやりたいことを実現できているので、子どもたちにも同じように、そういう環境をつくってあげなきゃな、という意識で日々います。

──てつさんの「好きなこと、やりたいことをしていいんだよ」という気持ちが、こどもリビングに関わる大人たちを通して子どもまで連鎖していくわけですね!

てつさん:

そう、まさにそれなんです。こどもリビングでは、あちこちでそういう連鎖が起きているんですよ。好きなことをして満たされている大人がいて、それに触発された子どもの1人が輝き出したら、その子を見たほかの子がまた……というように。とても理想的な在りかただなと思っています。

地域の大人と「やりたいこと」でつながる

──「遊びの達人」の遠藤さん(遠藤正さん)さんは、ご自身の興味・関心ごとがこどもリビングで活かせるかも……と考えて、 ご自分からアプローチしたとおっしゃっていました。こどもリビングに何かを感じた方が、講師として子どもとかかわってくれているのって、保護者としてとても素敵だなと思っています。

てつさん:
遠藤さんがモンテッソーリの教具に興味を持ったことがきっかけに、うちに「何か一緒にできないか」と声をかけてくださいました。かれこれ8年ほどお付き合いしています。

現在は「木工と植栽の達人」として、木工や畑づくりの体験イベント講師を担当してくれています。

──こどもリビングと遠藤さんは、得意なことややりたいことがきっかけでつながったんですね。とても理想的な広がりかただなぁと、お話を聞いていて思いました。

れんさん:
遠藤さんはこどもリビングの近所にお住まいなので、単にこどもリビングで遊びの達人として子どもに接してくださるだけでなく、遠藤さんとの関わりが「子どもたちと地域のつながり」でもあると考えているんです。

たとえば帰り道に、こどもリビング以外の場所で遠藤さんに偶然会って、「こんにちは」とか「元気?」とか、ちょっと言葉を交わす。このあたりを、そういう大人がたくさんいる地域にしていけたらいいなと思っています。

子どもたちにウリの収穫方法を教える、「遊びの達人」の遠藤さん。 写真:こどもリビング
親子で参加した、遠藤さんの木工作イベント。糸のこが3台も用意されており、気の済むまで存分に楽しむことができました。 写真:笹川かおり

「好きなこと・やりたいことをする」は連鎖して広がっていく

こどもリビングに通ってからの長男に感じる一番の変化は、「なにかに夢中になる時間が増えた」ことです。

こどもリビングではお友達とトコトン遊び、帰宅後は読書や工作に没頭する……というように、自らやりたいことを見つけて集中する時間が多くなりました。

子どもには、とにかくたっぷり好きなことを楽しんでほしい、毎日心ゆくまで遊んでほしいと私は考えているので、この変化を本当に嬉しく思っています。

そして……てつさんとれんさんの今回のお話をうかがって、「私もこの『好きなことをする』連鎖に加われば、我が子たちにもいい影響がおよびそうだし、私自身の人生も楽しくなって一石二鳥なのでは?」とひらめいた私。

10代のころからずっとやってみたかったイタリア語を、この取材後にはじめてみました。アプリを使って隙間時間におこなう程度のゆるいものですが、「この雑用が終わったらイタリア語やろう」などと考えるのが楽しく、生活に張りあいが出たのを感じています(私の様子を見ていた長男が興味をもって、同じアプリでフランス語をはじめたという嬉しいオマケも!)。

こどもリビングから長男と私が受け取った「やりたいこと・好きなことをする」ことの連鎖が、まだ小さい3歳の次男や、毎日仕事で忙しく過ごしている夫にもいつか届いていけばいいなと願っているところです。

こどもリビング
住所:東京都多摩市一ノ宮2ー45-3
電話:042-400-6461
カフェ営業時間:月〜金9:00〜15:00、土9:00~17:00
HP:https://www.with-child-living.com/
アクセス:京王線 聖蹟桜ヶ丘駅より徒歩5分
※学童保育についてはお電話にてお問い合わせください

ささがわ かおり

笹川 かおり

Kaori Sasagawa
AnyMaMa(エニママ)ライター

AnyMaMa(エニママ)ライター兼コクリコ・サポート・エディター 東京都の多摩エリアで2男児(2014年、2020年生まれ)を育て...

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コクリコサポートエディターズ(CSE)は、コクリコの第2編集部。コクリコと、ママの社会復帰を支援するサービス「AnyMaMa(エニママ...