前回の日記で「だいたいの構想は出来ている」なんて書きましたが、そうすんなりと案が通るはずもなく、一から新しい案を考える事になり、装丁を手がけて下さるデザイナーの田中久子さんとOさんと3人で打ち合わせを行いました。
やはり大事な表紙ということもあって、かなり手こずってしまいました。短期間で描かなくてはならず、手当たり次第ラフを出してはボツになるということが続きました。
題名が入るバランスだとか、人物の大きさだとか、何が入りすぎて何が足りないという風に考えがまとまらなくなり、中心に来るものが定まらないのでどこにもピントが合わない絵になってしまうということを繰り返しました。やっとこの方向で……となった時には、今度は私自身が納得がいかず、考える時間をもう少し頂く事に……。
「夜空はこのくらい入った方がいい」とか、途中でOさんから頂いた助言をイメージ出来ずにいたのですが、落ち着いて詰めていくと「なるほど、こういうことか!」と理解出来るようになり、最終的には自然なかたちで収まるべきところに辿り着けたのでした。限られた時間の中で、考える時間を作って下さり、辛抱強く待って下さった田中さんとOさんには感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました。
表紙全体については、裏表紙まで繫がった一続きの絵にするか、表と裏で分けるかということでも悩みましたが、裏に配置したい絵が良い感じに描けたので、それが採用されることになりました。
表の絵だけを描いていた時は「表紙」のことばかり考えていましたが、裏表紙の絵を描いていて「本」という形になることを大きく意識しました。この絵が本のこの場所にあったらいいな、そうしたら絵本がとても愛しくなるな、と思ったのです。背表紙や、表紙の端を内側に折り込んだ袖と呼ばれる部分に置くカットを描いている時も、絵本に対する愛着がどんどん増してきて、この絵本を読んでくれる人もそうであったら嬉しいな、絵を見つけて喜んでくれたらいいな、という気持ちでいっぱいになりました。
表紙を描くことと絵本の形にしていく工程は、今まで原画を仕上げるところまでで終わっていた私にとって未知の領域でした。当たり前の話ですが、物語があって、絵があって、というだけが絵本作りではないのですね。
本という形にしていくことこそ絵本を作る楽しさなのだと、ここまで来て初めて分かりました。
近藤 未奈
多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業後、おもに個展での作品発表を中心に活動。 2018年、第40回講談社絵本新人賞を受賞し、はじめての絵本となる『まよなかのせおよぎ』を刊行。東京都在住。
多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業後、おもに個展での作品発表を中心に活動。 2018年、第40回講談社絵本新人賞を受賞し、はじめての絵本となる『まよなかのせおよぎ』を刊行。東京都在住。