2021.08.04

ホントは仲よくしたいのに…「妻への不満がたまったとき」おすすめの3冊

大人に効く絵本〔10〕絵本専門士・井上まどか

寄稿家:井上まどか

仕事&育児の日々はパパだって当然疲れるし、ママへ不満がたまることも。イラだった視点がふっと変わるような3冊を紹介。  写真:アフロ 

美しい絵に癒やされたり、ハッと気付かされたりと、大人にとっても感動がいっぱいの絵本。この連載では、“絵本のプロ”がパパママにこそ読んでほしい絵本をテーマに合わせてピックアップ。第10回は、絵本専門士・井上まどかさんが「妻への不満がたまったパパ」におすすめの3冊を紹介します。

子育てのおもしろさも苦労もわかち合おう

――妻に不満があるパパのための絵本は、何をポイントに選びましたか?

毎日、家族のために一生懸命働いているパパ。ときには、ママに不満を持つこともあるかもしれません。でも、子育てに専念しているママも、仕事をしながら子育てしているママも、みんな、家族のために一生懸命です。パパが不満をためることなく、<夫婦円満でいるにはどうすればいいか>をポイントに選んでみました。3冊とも視点は違いますが、どの絵本も、改めて夫婦の仲を見直すきっかけになったらと思います。パパだけでなく、夫婦で一緒に読むのもおすすめですよ。

最初にご紹介するのは、『いっさいはん』(作・絵:minchi)。1歳半ぐらいの子どもに見られる、奇妙でおもしろい“あるある行動”を描いた絵本で、この時期ならではの子育ての悩みやおもしろさが切り取られています。お子さんがちょうど1歳半ぐらいなら「わかるわかる!」と共感するでしょうし、お子さんがもう少し大きいと「あの頃は大変だったなぁ」と懐かしく感じると思います」

――「しずかにしてるときは だいたいちらかしてる」「おきにいりの ふくは まいにちでも きようとする」「いれものが あったら なにかを つめる」……たしかに過ぎ去ってみると、どれもかわいいアクションです(笑)。

子どもの成長って、あっという間です。当時は子育てに必死で気付かなかったけれど、絵本をきっかけにパパとママが「こんなことしてたね」「この過程があったから、今があるんだよね」と、お子さんの成長を一緒に振り返れたらいいですよね。

そしてパパは、<ママが毎日していることって何だろう>と、改めて考えてみてはいかがでしょうか?「ママの仕事って、こんなにたくさんあるのか」「ママも大変なんだな」ということがわかれば、ママに対する不満も少しは解消されるような気がします。

――夫婦ゲンカの原因には、<ママの負担している家事・育児がパパに見えていない>というのも多そうです。

そうですよね。子育てのおもしろさも苦労も、パパとママでしっかり共有できたら、夫婦の仲はもっとよくなるかもしれませんね。

著者がSNSで公開していた1歳半の“あるある行動”イラストを絵本化。子育て経験者なら誰もが共感してしまう『いっさいはん』(作・絵:minchi/岩崎書店)。

パパとママが出会ったのは運命

続いてご紹介するのは、『100年たったら』(文:石井睦美、絵:あべ弘士)です。草原にひとりで住んでいた孤独なライオンのもとに、ある日、飛べなくなった一羽の鳥がやってきます。ふたりは寄り添うように一緒に暮らし始めるのですが、鳥が力尽き、やがて別れが……。悲しみに暮れるライオンに鳥が言います。

「また あえるよ」
「いつ?」
「ねえ、いつさ?」
「うーん、そうだね、100年たったら」

100年たったら、また会おう。そう約束して、輪廻転生を繰り返すライオンと鳥。あるときは貝と波、あるときはおばあちゃんと花、またあるときは……。100年たっても、なかなか思いあう関係になれないふたりでしたが、ついに奇跡が起こります。

初めて会ったのに、会ったことがあるかもしれないという感覚。ライオンと鳥は、互いに思いあう気持ちが強かったから、まためぐりあえたのではないでしょうか。本当に輪廻転生があるかはわかりませんが、パパとママが出会えたのは、偶然ではなく運命。絵本を通してそう思うことができたら、ママへのイライラなんて、ちっぽけに感じるかもしれませんね。

――「運命」や「奇跡」という言葉は、文字だけだと大げさな感じもありますが、絵本だと、すっと心に入ってから不思議です。素直に涙が出ました。

大人が読んで、グッとくる絵本ですよね。パパからママへ、ママからパパへの贈り物にするのもすてきだと思いますよ。

ひとりぼっちで暮らしていたライオンと、飛べなくなった鳥。ふたりがたどる、切なく壮大な物語『100年たったら』(文:石井睦美、絵:あべ弘士/アリス館)。

「ごめんね」のひと言で仲直りはできる

最後は、お子さんと一緒に読んでほしい絵本として『ごめんね ともだち』(作:内田麟太郎、絵:降矢なな)をご紹介します。オオカミとキツネによる大人気シリーズ『おれたち、ともだち!』の4作目です。仲よしのオオカミとキツネでしたが、ある日、些細なことで初めて大ゲンカをしてしまいます。本当は仲直りがしたいのに、「ごめんね」となかなか口に出せないふたり。もどかしいやり取りが続きます。

パパとママの普段のケンカも、原因はきっと些細なことですよね? 仲直りしたくても、どう切り出したらいいのかわからない。オオカミとキツネに、自分を重ねてしまうパパもきっといらっしゃるはずです。

――夫婦でも友達でも、距離が近ければ近いほど、素直に「ごめんね」や「ありがとう」が言いにくかったりしますね。

本当にその通りです。親しい仲だからこそ、つい意地を張ってしまったり、思ってもないことを口にしたり、言ったことを後悔したり。でも、そういうケンカができる仲なのだから、「ごめんね」が言えるきっかけさえあれば、仲直りできると思うのです。オオカミとキツネの場合は、ある意外なきっかけで仲直りできました。では、パパとママは……?

お子さんも、お友達とケンカしたとき、照れや恥ずかしさから「ごめんね」が言えないこともありますよね。親子で一緒に読んで「お友達とケンカしたとき、どうやって仲直りする?」「ごめんねって言える?」と、話し合ってみるのもよいのではないでしょうか。

ささいなことがきっかけで大ゲンカをしてしまったオオカミとキツネ。あの一言がなかなか言えなくて……。『ごめんね ともだち』(作:内田麟太郎、絵:降矢なな/偕成社)。

取材・文/星野早百合

寄稿家紹介

井上まどか いのうえまどか

絵本カフェ「ムッチーズカフェ」店長。絵本専門士、保育士、幼稚園教諭一種、認定心理士の資格を保有。都内の公立保育園に9年間勤務した後、“夢と魔法の王国”での自称・お姉さんを経て、2016年、大人のための絵本カフェ「ムッチーズカフェ」をオープン。2020年11月には、東京・西荻窪にリニューアルオープンを果たす。絵本コラムを多数執筆し、雑誌『たのしい幼稚園』(講談社)では、おすすめの絵本を紹介する連載『たのしい絵本館』を担当。2021年度より、「認定絵本士養成講座」(国立青少年教育振興機構)の講師も務める。

ムッチーズカフェ 公式サイト https://mucchis-cafe.jimdofree.com/
ムッチーズカフェ Twitter  https://twitter.com/mucchiscafe