2021.03.10

絵本新人賞受賞・近藤未奈の『まよなかのせおよぎ』制作日記

第40回 講談社絵本新人賞受賞作家の受賞からデビューまで 第2回「ことばを探し求めて」

著者:近藤 未奈

※この記事は、講談社絵本通信(2019年2月)掲載の記事を再構成したものです。

こんにちは。2月は寒暖の差が激しかったですね。私はほとんど缶詰状態ですが、夜明け前の寒空に輝く月と星を眺めては、今日も頑張ろう! と、作業に向かう日々です。

今回は、まずテキスト(絵本の文章)について書こうと思います。
私にとっては最大の難所であるテキスト作り。これより難しい事があるだろうか、と絵本を作る度に思ってしまいます。

今作は女の子の短い台詞のみの構成になっているので、女の子の、しかも子供の使う言葉だけで進行していきます。応募時からさんざん悩みましたが、今現在も変わらず悩み続けています。図書館で絵本を読み、児童向けの言葉の表現の本や詩も参考にしましたが、なかなか光は見えません。

深みにはまりそうなので、気分を変えて外を歩きながら考ることに。頭の中に絵を浮かべながら、女の子の気持ちになって言葉を繰り返し発します。かなり怪しい人ですが、体が動いている方が気持ちを言葉にしやすいような気がします。実際、少しずつですが進み始めました。

取り敢えずの締め切り日、まだしっくりこないところを残したまま、Oさんにメールでテキストを送り、修正をしながら何度もメールでやりとりをしますが、思うように進まずまたもや深みにはまりそうに。胃がキリキリし始め、どんどん気持ちが沈んでいく中、絶妙のタイミングでOさんから電話が!

「大丈夫、良くなってきてますよ!」ああ、まさに天の声。
Oさん曰く、読んだ時と声に出した時に気持ちがいいかが大事で、絵がこれだけ描いてあるのだから余計な飾りの言葉に頼らなくて大丈夫、とのこと。

子供らしい可愛い言い回しとか、印象に残るようにとか、確かに飾ることに必死になっていました。それと、途中で絵とテキストを切り離して別々に考えてしまっていることにも気付きました。
言葉を考える事に囚われすぎて絵への意識が薄れてしまい、絵とテキストを合わせた時に何かぴったりはまっていない、しっくりこないという違和感が出てきてしまったのです。絵とテキストが本当の意味で一体になるまでまだまだ粘らなくてはいけません。

自分が陥っている状況を把握したところで、テキストを念頭に置きながら再びラフ制作に戻ります。
始めにも書いたように、今作はテキストが短い台詞のみなので、登場人物の体の動きや表情に説得力が必要です。何度も修正した小さいサイズのラフを原寸大のラフにしていくのですが、大きくなるとバランスがかなり変わるのでその微調整にとても時間がかかりました。納得のいくまで何度も描き直し、見直し、また描き直し、その繰り返しです。

ここまでくると完全に自分が絵本の世界の中で生きているような感覚になります。

『まよなかのせおよぎ』のラフ

原寸大のラフ。長い時間をかけてここまできました。
出来上がった原寸大ラフをOさんに見てもらい、OKが出たところで遂に本描きに入る……はずだったのですが、途中でまた直したいところが出てきて、本描きと修正作業を並行します。そして今やっと本描きだけに集中しています。程よい緊張感とワクワクした気持ちでいっぱいです。どんな仕上がりになるのか、自分でも本当に楽しみです。

次回には原画が出来上がっていることを願って……。それではまた。

こちらができあがった絵本です。

夜、眠れない女の子がふと窓の外を見ると、空中で背泳ぎしている人が。おどろいて夢中で追いかけていくと……。眠りについた街で、ひそやかに繰り広げられる、ここちよい浮遊感と静けさが漂う物語。

『まよなかのせおよぎ』 
作:近藤未奈 講談社

著者紹介

近藤 未奈 こんどう みな

多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業後、おもに個展での作品発表を中心に活動。2018年、第40回講談社絵本新人賞を受賞し、はじめての絵本となる『まよなかのせおよぎ』を刊行。東京都在住。