2022.02.21

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絵本作家デビューまで残り6ヵ月! まさかの全ページ描きなおし事件

第42回 講談社絵本新人賞受賞・伊佐久美の『タコとだいこん』制作日記第2回

第2回 タコの足は8本です!

新人絵本作家の登竜門として知られる「講談社絵本新人賞」。
1979年に創設され、歴代受賞者にはかがくいひろし氏、シゲタサヤカ氏(佳作)、石川基子氏など、絵本界の綺羅星のような才能を輩出しています。新人賞受賞作品は、単行本として刊行されるため、絵本作家デビューを目指す多くの人が、こぞって応募します(21年度は579作品が集まりました)。

第42回講談社絵本新人賞を受賞した伊佐久美氏。受賞からデビューまでの裏側を、受賞者自身に「制作日記」形式でルポしてもらいました。創作の裏側が覗ける貴重な同時進行ドキュメントをお届けします。

第1回「はじめまして」はこちらから


こんにちは。皆さんお元気でお過ごしでしょうか?
今回は、絵の描きなおしについてのお話です。

贈呈式の日、選考委員の先生方や編集部の方々に共通して言われたことが三つありました。

一つめは、「この表紙じゃ、本屋さんに並んでても手に取ってもらえないねえ。」でした。

はい。私もそう思います!

本になるなんて夢にも思ってもいなかったので、表紙はどうでもいいやと最後の最後にパパっと描いたのでした。選考するために必ず中身は見てもらえるんだし……と、いいかげんなものでした。まさかこんなことになるとは。

二つめは、「なんでこの大根だけ葉っぱがついてないの?」

タコが大根を食べたいと思いついたシーンで、大根を一本、画面の真ん中に描いたのですが、それに葉っぱがなかったのです。

葉っぱ。最初はありました。でもどうにもおさまりが悪くて、あれこれ試しているうちに、なんだかうっとうしくなって、切っちゃったのです。そう言いわけをしたら、選考委員の木坂先生と松成先生はギャー! と叫んで大笑いしてくださいました。喜んでいただけて良かったです。

家に帰って探したら、切った葉っぱの残骸が出てきました。これではもう使えませんね~残念。

「スーパーに売っている大根」と言われた大根の絵と、切っちゃった葉っぱの残骸

三つめは、「話の最後の方、見開きで絵を描けばいいのに。」でした。

自分でも最後の方がちんまり、尻すぼみになっているなあ。と思っていました。片ページは絵で、片ページは文字のみ、それが続いて終わります。

そこに大きな見開き絵を持ってくるのは唐突な感じがして、どうしてもできなかったのです。どうしたら良いのかわからず、そのまま応募してしまいました。

でもやっぱり見開き絵の方がいい! 編集者のNさんとも相談して前後の構成から考えなおすことになりました。というわけで、大根の葉っぱと、表紙と、見開き絵の三つは描きなおし決定です。

さらにNさんから注意がありました。

「タコの足は八本描いてください。」

子どもが読むものなので、そこはきちんとしなくてはいけないそうなのです。絵を見かえしてみると、足のたりないタコがたくさんいました。なんと五本足のタコまで! いけませんね~。

『トレーシングペーパーにくっつくタコ問題』もありました。

またまた絵を見かえしてみると、どの絵のタコもみごとにトレーシングペーパーにくっついていました。結果、全ページの絵を描きなおすことになりました。

ところで『トレーシングペーパーにくっつくタコ問題』ですが、原因がわかりました!

仕上げにと塗っていたニスが、仕上げ用でなかったのです。容器に「作品の仕上げ用としては適しません」と書いてありました。説明書きはきちんと読まなくてはいけませんね~。

トレーシングペーパーに張り付く原因となったニス。使用法には、きちんと「仕上げ用ではない」と記載アリ

足の数はたりないわ、トレーシングペーパーにくっつくわ、まったく困ったタコだなあ。と思っていましたが、全部いいかげんな私のせいでした。

ごめんね。タコ。

ではまた来月お会いしましょう♪

いさ くみ

伊佐 久美

1970年生まれ、東京都在住。東京造形大学デザイン学科卒業。製版会社、デザイン事務所勤務を経て、2002年よりぬいぐるみ、雑貨等の制作...

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