感情を表す言葉を教えて「気持ちを表現できる子ども」に育てる方法

日本人はマイナスの感情表現が苦手 他人の感情にも敏感になるには?

講談社こども教室

五感発達クラス レッスン風景

子育てに正解はありません。100組の親子がいれば、100組の子育てがあります。
たくさんの子どもたちと向き合い多くの経験を重ねて来た「こども教室」のベテラン講師が、「子育てと学びのヒント」をお伝えします。

言葉を話し始め、二語文、三語文が出るようになると、子どもたちは一気に世界を広げ、周囲とのコミュニケ―ションを取ることを楽しむようになります。

他者を理解するためには、心の動きや感情を表す言葉を覚えることが必要です。

感情を表す言葉を子どもに教える方法を、講談社こども教室で使用している教具やレッスン内容をご紹介しながら、お伝えします。今回の講師は、池山尚子さんです。

「講談社こども教室」は0歳から未就学児対象の「幼児知育コース」、小学生を対象とした「国語・算数コース」、0歳からの「英語・英会話コース」を運営する知育教室です。

乳幼児が感情を表す言葉を習得するには

乳幼児が言葉を覚えていく過程で、実際に目で見られる物の名称や、触れたり持ったりできる物の状態については、周囲の大人は、教えやすく、さほど意識をしなくても、言葉を教えることができています。

たとえば、
「これは、りんご。赤いりんご」
「大きなトラックが走っているね。大きな荷物を運んでいるよ」

などと、子どもに示しながら伝えることができます。

子どもも、
「りんご、赤いね」
「りんごは丸い」
「あそこに、大きいトラック」

と、実際に使うことで、言葉の意味や響きを覚えていきます。

では、目に見えないもの、心の動き、感情についてはどうでしょう。

感情を言葉で表現し、それを子どもに伝えようと考えてみたことはありますか?
子どもは、どのようにして、感情を表す言葉を覚えていくのでしょう。

五感発達クラス 使用教具ソフトキューブ

食事をしている時に、子どもがニコニコしながら食べていたら、
「おいしいね」
と声をかけていますね。

お気に入りのおもちゃで楽しそうに遊んでいれば、大人は、
「楽しいね]「嬉しいね」
と知らず知らずのうちに言葉にして表現していることでしょう。

家族で出かけた後に、
「今日は楽しかったね」
と、大人同士が言葉をかけあっていれば、このような状態を、「楽しい」と表現するのだ、ということを子どもたちは理解していくことができます。

こうして、プラスの感情については、さほど意識しなくても、大人は子どもに伝えていることができているように見受けられます。

日本人はマイナスの感情表現が苦手!

一方、マイナスの感情についてはどうでしょう。

子どもが、大事なおもちゃを友だちに取られてしまう場面を考えてみましょう。
「貸してあげようよ。あとでまた返してもらえばいいのよ」
「そんなことで泣かないのよ」

と、感情の表現を伝えるどころか、対処の仕方を口にしてしまっていませんか?

転んでけがをしてしまった場面では、
「泣かなかったね、強いね」
「ちょっと血が出ちゃったけど、がまんできるよね」

と、ここでも、気持ちを収めるような言葉がけをしていることが多いのではないでしょうか。

おもちゃを取られたら、悔しい、つらい。けがをしたら、痛い、悲しい
このようなマイナスの感情を、その都度、言葉にして表現することで、子どもたちは、複雑な感情を知ることになるのです。

ところが、周囲との調和を気にする日本人の多くは、マイナスの感情を表現することより、抑えこむことを優先しているような印象です。

若者が「ムカつく」「やばい」ですべての感情を表現することが流行りのような時期がありました。これも、若者たちが、面白がって使っていたというよりも、感情を表現する語彙が不足していた、知らなかったせいではないのでしょうか。

マイナスの感情を言語化して、今、こうしてモヤモヤしているこの気持ちを「悔しい」というのだ、「腹立たしい」と表すのだ、ということを、まず伝えなければなりません。

その後、こういう気持ちの時、どのように対処したらいいのか、解消するにはどうしたらいいのかを教えるようにしていきたいものです。

感情表現が豊かになると

プラスであれマイナスであれ、感情を表す言葉を知っていると、他人の感情にも敏感になります。

クラスメートが泣いていれば、(彼女は、今、悔しくて泣いているのだろうな)(悲しいことがあったのだろうな)と想像したり、理解したりすることができるようになります。

学年が進めば、自分に何ができるだろうか、ということを考えられるようになっていきます。こうして、他人に共感すること、友だちを支援することにつながれば、温かい雰囲気の中で子どもたちは育ち合っていけます。

私が25年指導にあたっている「講談社こども教室」にある英語・英会話コースでは、感情表現の単語を示す絵カードがあり、それを1枚1枚見ながら発音するというレッスンが含まれています。子どもたちは、身ぶり手ぶりを使って、感情の英単語を繰り返し発音します。

使用教具 英語・英会話クラス

また、幼児知育コースの1歳児のクラスに、福笑いのような表情を作る教材があります。たれ目にして、口角をあげれば、笑っているような表情、つり目にして、口角を下げれば、怒ったような表情。

五感発達クラス おでかけぱるくんマグネット

これらを顔の輪郭の台紙に置いて、
「笑っているね、楽しそうだね。」
「怒っているよ、プンプンしているね。」

と講師が表現することで、表情から感情を読み取ることを教えています。

2歳児のクラスでは、公園で遊んでいる場面をマグネットで表現する教材がありますが、子ども二人が喧嘩をしている様子を示し、
「二人とも、イライラしているみたいだよ」
「怒っているね」

と、講師は言葉にして子どもたちに示します。

入園準備クラス マグネットあそび


1、2歳児にとっては、まだまだ簡単に理解できることではありませんが、大切なことは、伝え続けることです。わからないから教えないのではなく、わからなくても言葉にし続けていれば、子どもたちには伝わっていくものです。

そして、自分の思いが表現できる年齢のクラスでは、レッスンの始まりに、生徒一人ひとりがスピーチをします。テーマに沿って話し、まとめとして、どんな気持ちだったかを発表してもらうようにしています。

教室 レッスン風景 スピーチ

最初のうちは、
「楽しかったです」
「面白かったです」

という表現が多いのですが、だんだん、
「悔しかった」
「恥ずかしかった」
「イライラした」
「頭にきた」

など、バラエティに富んだ表現ができるようになっていきます。

このようにして、感情を言葉にして表現することを子どもたちに伝え続けることで、子どもたちは、自分の感情にも、他人の感情にも敏感になり、感性豊かな大人に成長していくのです。​​

池山 尚子
講談社こども教室 講師歴25年
教室で出会った親子の心に寄り添い、楽しいレッスンを心掛けている
元気な子、個性的な子の指導を得意とする

講談社こども教室

0歳から12歳まで、 "遊びながら学び考える"経験をたくさん積む場所「講談社こども教室」を全国で運営しています。幼児知育だけでなく英語や国語・算数を通じて、一生を支える学びの基礎を身につけるお手伝いは、経験豊富な講師陣が担います。長年にわたる「どの子も伸ばせる」経験をもとに、お母さまお父さまの気持ちに寄り添い、お子さまの将来の可能性を広げる視点で記事をお届けします。 講談社こども教室 https://www.kodansha-pal.co.jp

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