2022.04.17

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脱ランドセル派が狙う「新リュック型」  “軽い、丈夫、安い”の最新技術

最旬!ラン活2023〜#4 脱ランドセル派のリュック型通学鞄編〜

ライター:遠藤 るりこ

ライフスタイルが変わり、多様性が求められるようになった時代、ランドセルのあり方にも変化が。親子が求める、新しい通学鞄とは? 写真提供:ZACARI

一般社団法人 日本鞄協会ランドセル工業会によると、ランドセルの発祥は明治10年の学習院初等科から。一般的に小学生へ普及したのはそれからすこしあとの明治20年ごろだとされています。

日本の小学生=ランドセルというのが定番となってから、実に1世紀以上経つのです。

伝統的で日本独自の文化であるランドセルですが、ここ数年で「新しい通学鞄の選択肢」を提案する動きも出てきています。

50年以上前に子どもの安全を考え開発された黄色い鞄「ランリック」をはじめ、新しい提案をするリュック型・通学鞄「ZACARI(ザカリ)」、「エルゴランセル(ERGORANSEL)」、「NuLAND〈ニューランド〉」の3ブランドに、開発エピソードと子どもたちへの想いをうかいがいました。
※連載全5回の4回目(#1#2#3を読む)。

始まりは校長先生からの依頼

「子どもの通学鞄にランドセル以外の選択肢を」という動きは、実は今に始まったことではありません。創業69年、京都の学生用品メーカーの株式会社マルヤス(以下マルヤス)は1968年から道路危険標識をモチーフにした黄色い鞄「ランリック」を発売しています。

「一般家庭にランドセルが普及したと言っても、実はさまざまな課題がありました。革製であることによる重さや、値段の高級化による保護者の経済的負担、さらに、交通事故の心配などです。

そんななか、当時の長岡京市立長岡第三小学校(京都府)の校長先生が、『軽くて安価で、安全な物を作ってほしい』と、弊社に依頼をしてきたのです。こういった経緯があり、『ランリック』の開発が進められました」(マルヤスPR・鈴木康弘さん)

出来上がったのは、とてもシンプルな作りの黄色い鞄。視認性に優れた黄色と黒の安全配色(道路危険標識の色)であり、背負って歩いているととてもよく目立ちます。

発売当時、一般的なランドセルは重さ1.5kgなのにランリックは300g、価格はランドセルが5,000〜1万円に対し、ランリックは590円という安価も実現できました。

「ランリックは、依頼を受けた小学校をはじめ、いろいろな小学校で起用されるようになりました。今では『自分が使っていたから、ぜひ子どもにも使わせたい』という親御さんもいらっしゃいます。親子三代でランリックというご家庭もあるんですよ」(マルヤス・鈴木さん)

革製で箱型のランドセルから脱したランリック。学校単位での発注が多く、前ポケットには校章を入れられる。 写真提供:マルヤス

ランリックに機能性をくわえ、一般的なランドセルを求めている親子にも馴染みのあるデザインに近づけたのが2006年に発売された「ランリックⅡ」(12,540円〜・税込)です。

「Dカンやチェストストラップ、両サイドにポケットが付いていたりと、さまざまな機能を追加しました。コンセプトである『健康と安全』を守りながら、現代の子どもたちに合うように改良を重ねていっています」(マルヤス・鈴木さん)

育ちざかりの小学生に もっと開放的な通学鞄を!

「ランドセルじゃないんです。通学はいのう(背嚢)と呼んでください」と笑いながら語るのは、「ZACARI(ザカリ)」デザイナーの緒方義志さん。

「ZACARIの名は、『○○盛り』という言葉に由来しています。元気な育ちざかりの子どもたちが、飛んだり跳ねたり走ったりすることをできるだけ妨げない通学鞄を作りたいと思いました」(ZACARI・緒方さん)

「ZACARI 通学はいのう」39,600円(税込)。全8色。4月18日より公式ウェブストアにて予約受付開始。 写真提供:ZACARI

リュックのようにカジュアルな使い心地でありながら、機能性と利便性にはとことんこだわった、「通学はいのう」(39,600円・税込)。メインの素材には、耐久性に優れたナイロン繊維・コーデュラを使用。多少、雑に扱っても気にならない丈夫な素材です。

「ランドセルの様式に縛られない、快適で実用的なスタイルを具現化すべく、基本仕様から“かぶせ”をはずしました。便利なポケットをたくさん搭載した機能的で遊び心のあるデザインが最大の特徴です」(ZACARI・緒方さん)

ZACARIは、2022年に立ち上がったばかりの新しいブランド。開発期間中の試用段階でモニターとして使用した子どもたちに感想を聞いてみたところ、さまざまな「楽しい!」の声が届いたといいます。

毎日何度も開閉するファスナーの引っ張りには、関東唯一の真田紐師「市村藤斎製」の真田紐を装備(写真中央)。ほかにも、タブレットが入る内部のパッド入りポケット(写真中央右)や、別売りで「かぶせ(写真左下)」や、雨カバー「かっぱ(写真右下)」などの装備もあり、楽しい仕掛けがたくさんだ。 写真提供:ZACARI

「4種類のポーチのようなポケットが全部で6つ付いているので、『自分だけの収納作戦が楽しめる』と、子どもたちから好評でした。『背中のクッションが気持ちいい』、『たくさん荷物を入れて走っても肩が痛くならない』などの“背負い心地の良さ”についての感想もうれしかったですね。

日々の生活や学校、通学のあり方などが変化し、多様化しています。冒険的で自由な意志を持った先駆者として、慣例にとらわれない新しい通学かばんのスタイルを楽しんでいただきたいです」(ZACARI・緒方さん)

娘のために開発 登山リュックのテクノロジーを搭載

小学校入学を控えたご自身の娘さんのために、と開発されたのが「エルゴランセル(ERGORANSEL)」のランドセル(55,000円・税込)。開発者である平田あんなさんは、二児のママです。

「固定概念をなくし、子どもの身体を第一に考えて行き着いた答えが、『ランドセルに登山リュックのテクノロジーを搭載する』というアイデアでした」(エルゴランセル代表・平田さん)

ナイロン製のリュック系ランドセルでありながら、高級感ある仕上がりなのが、エルゴランセルの大きな特徴です。ランドセルのモチーフである箱型を継承し、かぶせを採用しています。

「エルゴランセルのランドセル」55,000円(税込)。2023年度向けは全6色。公式オンラインショップで発売中。 写真提供:エルゴランセル

「我が娘を想った時に、一般的なランドセルと見た目が大きく違うと、周りからからかわれないかが心配になりました。

ランドセルは、日本のユニークで素晴らしい文化。そのランドセルらしさも出来るだけ残しながら背負いやすく、高学年になっても恥ずかしくない現代的なデザインを心がけました」(エルゴランセル・平田さん)

「軽さだけでいうと、エルゴランセルよりもっと軽いものはたくさんあるはず」と平田さん。こだわったのは、鞄自体の総重量でなく、「軽く感じること」、「身体にフィットすること」という点です。

「登山リュックのテクノロジーとして、具体的には『身体にそった3D肩ベルト』、『胸ベルト』、『腰バンド』、『スタビライザーストラップ』などを搭載しています。いずれも身体にフィットし、子どもへの負担を軽減させるものです。

身体のあたる箇所、肩や背中には通気性がよくクッション性の高いメッシュ素材を採用し、高温多湿な日本の気候に合わせているんですよ」(エルゴランセル・平田さん)

ランドセルの良さを損なわず、安全性や丈夫さ、機能性もあきらめなかった結果、このデザインに。かぶせ部分には、ランドセルでも多くの実績がある人工皮革を採用。 写真提供:エルゴランセル

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