日本にもいるぞ! サソリ③

▲マダラサソリの子育て。お母さんサソリの背中に小さな赤ちゃんサソリがたくさん乗っている。生まれたときからちゃんとサソリらしい姿をしているぞ。

……ちょっと待った!!
まだもう一種類のサソリ、ヤエヤマサソリが残っているぞ!
こっちはどうだ!?
めちゃくちゃ危なかったりするんじゃないか?


ヤエヤマサソリはスマートなマダラサソリとは正反対な姿をしたサソリだ。

体は黒っぽくて胴体も脚も短く、ずんぐりむっくりしている。
けれどハサミはザリガニのように太くてがっしりしていて、戦車のような迫力がある。

…ただ、ものすごく体が小さい。
大きなものでも2センチメートルほどしかないのだ。怖いというより……なんかカワイイんですけど。

さらに! 毒針も小さい!!
細くて短い尾の先にチョコンと小さな白ごまのような毒針がくっついている。
何これ!?
こんなちっちゃい針で身を守れるの?



▲左:ゴマつぶみたいなしょぼい毒針
▲右:ペンチのようにパワフルなハサミで、大きなエサも逃がさずおさえこむ!

なんだか心配になってヤエヤマサソリをつまみ上げてみると、一生けんめいに指先へ毒針をつき立ててくる。
…でもやっぱり刺さらない。

どうやら、ヤエヤマサソリの毒針は敵から身を守るためというより、もっぱらエサとなる小さな虫を捕まえるために使われるものらしい。

ちなみに、ヤエヤマサソリの好物もマダラサソリと同じくシロアリ。
ヤエヤマサソリの体格だと、シロアリもかなり大きな獲物だ。
ザリガニのようにパワフルで頑丈なハサミは、暴れるシロアリを押さえこんで捕まえるのに役立っているのだろう。
また、この大きくて力強いハサミがあるからこそ、敵と戦う時に毒針をたよらずにすんでいるのかもしれない。

そういえば、ヤエヤマサソリはカラッとした場所にいるマダラサソリとは反対に森に転がる倒木の下など、ジメジメした場所でよく見つかる。
そのため、家の中に入りこんでくることはほとんどない。



▲ヤエヤマサソリは暗くジメッとした森の中、しかも石の下や朽木の中にいることが多い。フツーに生活している人ならまず出会わない。

ということは、そもそもふつうに生活してさえいれば、ぼくたち人間とヤエヤマサソリが出会うことはまずない。
そのうえ毒針もほとんど役に立たないとなると、このサソリに刺される事故はほぼおこらないということになる。
こうなっては、もはやこのサソリを危険な生きものとしてあつかうことはできない。
▲ペットにしたいくらいキュートだよね!

……サソリのくせに情けないけど、そういうところもやっぱりカワイイなあ〜。
みんなもいつか八重山の島を旅行することがあれば、このやさしくてカッコよくて、そしてカワイイ日本のサソリたちを探してみてほしい。
その時は本当に危ないムカデやハチ、毒ヘビにはじゅうぶん気をつけようね!


〜日本にもいるぞ! サソリ③ おわり〜