驚きの事実を発見! カタツムリがアジサイにいる本当の理由とは?

【ちょっとマニアな生きもののふしぎ】サイエンスライター・柴田佳秀先生が見つけた生きもののふしぎ

サイエンスライター:柴田 佳秀

カタツムリとアジサイの関係とは?

カタツムリの一種、ミスジマイマイ
カタツムリとアジサイの取り合わせって定番ですよね。梅雨の描写としてテレビなどでよく見る絵柄です。でも、実際にその光景を見た記憶が私にはありませんでした。インターネットで検索してみると、「アジサイにカタツムリなんかいない、あれはウソです」なんて書いてあるものもあります。
カタツムリがよくいるアジサイ
本当にそうなのかな? と思って、ある日、私は近所の林にあるアジサイがある場所へ行ってみました。すると、すぐにカタツムリの一種であるミスジマイマイが、葉の裏にくっついているのを見つけました。やっぱりいるんだな~と思って、さらによく探してみると、あっちにもこっちにも10匹も見つけてしまいました。確実にアジサイにカタツムリはいたのです。“アジサイにカタツムリはいない”、なんてウソだということがわかりました。

カタツムリはアジサイの葉を食べない⁉︎

それにしても、どうしてカタツムリがアジサイにいるのかという新たな疑問が湧いてきました。10匹もいるんですから、なにか用事があるのは間違いありません。一番可能性があるのはアジサイの葉っぱを食べるためではないか。

そう思って、カタツムリを飼育し、アジサイの葉を与えて確かめてみたのです。するとカタツムリは、何日待ってもいっこうに葉を食べません。お腹が空いていないのかと思って、ニンジンを与えるとすぐに食べましたからその可能性はありません。けっきょくカタツムリはアジサイの葉を全く食べませんでした。
葉の裏で休むカタツムリ
じつはアジサイにカタツムリはいないという話は、葉に毒があるから食べないという理由がだいたい書かれています。中には葉に置くと逃げ出すとさえ書いてあるサイトもありました。

でも、アジサイにカタツムリはいますし、葉から逃げ出すことはありません。きっと用事があるからアジサイにいるのです。しかし、この何故が解けないまま5年の月日が過ぎました。

そして数年前の春、とつぜん、その疑問の答えが見つかりました。

「そうだ。雨の日に観察に行けばいいんだ」と急に思いつき、雨が降る中アジサイを見に行ったのです。これまでは昼間の晴れているときばかり観察に出かけていたので、カタツムリは葉の裏などでじっと動かずに休んでいました。

なので、カタツムリが行動しているところを観察したことがなかったのです。

行ってみるとカタツムリは、アジサイで盛んに活動していました。よく見ると葉の上ではなく、すべてが茶色い枝にとまっています。そして、どうやら何かを食べているようなのです。
茶色い枝の上にいるカタツムリ
そこで、またカタツムリを飼育して、アジサイの茶色い枝を与えてみたら、なんと枝の皮をガシガシと音をたてて食べ始めたのです。また、枝の皮と同じ色の茶色の糞をしました。カタツムリは食べた物がダイレクトに糞に現れるので、何を食べたのかすぐにわかります。このことから、アジサイにカタツムリが訪れるのは、茶色の枝の皮を食べるためということが判明したのです。
枝を食べる飼育カタツムリ
糞をするカタツムリ
やはり、現場で対象物をじっくり観察する。これが謎を解くカギだったのです。こんな簡単なことが思いつかなかったのは、まだまだ修行が足りないなあ~と反省した次第。

そして、新たにどうしてカタツムリはアジサイの茶色い枝を好んで食べるのか、その理由が知りたくなります。枝には毒がないのか、何か特別なおいしいものでも含まれているのでしょうか。もしかしたら、カタツムリの大好物である炭酸カルシウムが多いのかもしれません。

今度はこの謎を解決するために、何か方法を考えようと思っています。謎が謎を呼ぶ。生き物研究ではよくあることなので。
写真提供/柴田佳秀

巻き貝のなかま「カタツムリ」が掲載されているMOVE

しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。