月の裏側なぞ

月をよく観察すると、暗いしみのような部分が見えますね。
日本では、ウサギが餅つきをしているように見える、と昔から言われてきました。
この暗い部分は、月をおおう地殻がとくに薄い部分です。もし月に水があったら、海の底になっている場所なのです。

月は、いつも表側を地球に向けています。そのため、私たちは月の裏側を見ることはできません。
しかし、宇宙船で月の向こうへ行けば、月の裏側を見ることができますね。
月の裏側は、表側とは様子がちがいます。

下の図は、左が月の表側、右が月の裏側の画像になります。
写真提供:NASA

月の裏側は、海の底になるような、地殻の薄い部分がほとんどなく、表側にくらべると、全体的に地殻が厚いのです。
どうして月の裏側は、月の表側より地殻が厚いのでしょうか?

これまでは、月の表側にだけ、たまたま小さな天体がぶつかったためではないかと考えられてきました。
ぶつかったことによって、表側の地殻が取りのぞかれてしまったというのです。

ところが、宇宙の彼方にある、地球と月のような関係の星を調べてみると、次のような仮説も考えられることがわかってきました。
それは月の誕生に関係しています。

月は、生まれてまもない地球に大きな天体がぶつかったのがきっかけで誕生したと考えられています。ぶつかったときに、天体の破片やちりが飛び散り、それらが集まって月ができたというのです。
このとき地球は、火の玉のようにとても熱くなっていました。月も、生まれたての時はとても熱くて、どろどろに溶けた岩石や、金属を含む濃い空気でおおわれていました。

月はゆっくりと冷えていきました。ただし、表側だけは、地球からの熱に照らされて、熱いままでした。一方で、月の裏側は、どんどん冷えていきます。
ある種の物質は、より冷たいほうへ集まる性質があります。そのため、月の裏側には、表側よりもたくさんの物質が集まっていったのです。
さらに冷えると、どろどろだった岩石や空気中の金属は冷えてかたまり、地殻になりました。月の裏側には、表側よりたくさんの物質が集まっていたので、それだけ厚い地殻ができあがったというわけです。

これが、月の裏側にまつわるなぞの最新の仮説です。
身近な月にもまだまだわからないことがあって、おもしろいですね。

■関連:「宇宙」34-37ページ