隕石衝突後も恐竜は生きていた？　最新研究から見る「恐竜絶滅」のナゾ

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より解説します

2024.02.14

恐竜は隕石衝突後、すぐに絶滅してしまったのか？　最新研究から解説します

今からおよそ２億3000万年まえに現れ、地球の覇者となった恐竜たち。その驚くべき姿や生態で、大人から子どもまで、私たちを魅了し続ける恐竜ですが、彼らの時代は約6600万年前に突然終わりを迎えました。そのとき、一体何が起こったのでしょうか？講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より解説します。

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より

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直径10kmもの隕石が落下！　その凄まじい衝撃の内容とは……？

約6600万年前、私たちがよく知るティラノサウルスやトリケラトプスが生きていた白亜紀末期。メキシコのユカタン半島近くに、直径10kmもの隕石が落下しました。その衝撃は凄まじく、衝突地点の近くは、衝撃と高音によって恐竜たちが一瞬で消滅しました。

また、隕石の衝突によって、最大で高さ300ｍに及ぶ津波が発生、恐竜たちは無常にも波に飲み込まれます。

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より

そして、衝撃によって、宇宙まで巻き上げられたちりが、地球に再び落下、その摩擦熱で森林火災が発生しました。地球上の至るところで起きた森林火災で、多くの恐竜が焼け死んでしまいます。

隕石衝突後も恐竜は生きていた？

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より

さらにその後、落下しなかったちりが厚い層となって太陽光を遮り、地球を急激な寒冷化が襲いました。いわゆる「衝突の冬」と呼ばれる現象で、まず植物が生えなくなり、続いて植物食の恐竜が死に、さらに彼らをえさにしていた肉食恐竜も息絶えました。隕石衝突の後、さまざまな不幸の連鎖によって、恐竜たちは絶滅した、と考えられてきたのです。

ところが近年、この隕石衝突後も恐竜たちが生きていたのではないか、という研究が世界中で発表されています。もし、隕石の衝突によりすべての恐竜が絶滅したなら、世界のどこかで大量に恐竜の骨が見つかるはずです。しかし、今のところそういった証拠は発見されておらず、逆に隕石衝突後も恐竜たちが生き残っていたのではないか、と考えられる証拠がいくつも出てきているのです。

現在のアメリカ・アラスカ州にあるデナリ国立公園は、恐竜時代には北極圏にあたる場所です。そこで、植物食恐竜であるハドロサウルスの仲間の親子の足跡の化石が発見されました。当時、アメリカ最北端のアラスカは、今よりは暖かいものの、冬は寒く厳しい環境でした。大人の恐竜だけなら暖かい南へ移動することが可能だったかもしれませんが、子どもと一緒では難しかったでしょう。つまり、気温の低い地域に暮らす、寒さに適応する恐竜がいた可能性があるのです。そういう恐竜がいたのであれば、衝突の冬の厳しい環境を乗り越え、その後何十年、何百年と生きていてもふしぎではありません。

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より

また、隕石衝突後の災害は、北半球の被害が大きく、南半球は比較的小さかったと考えられています。当時、南アメリカ、南極、オーストラリアは陸でつながっていました。現在は冬の平均気温がマイナス20度の南極も、比較的温暖で、インペロバーターやトリニサウラなどの恐竜が暮らしていました。

南極の近くでは、隕石衝突後から500万年後のシダの仲間の植物の化石が発見されていることから、南下して被害を逃れ、生き延びることができた恐竜がいた可能性もあります。

講談社の動く図鑑MOVE「恐竜２最新研究新訂版」より

しかし、隕石衝突後に生き延びる恐竜たちがいたとしても、いずれ絶滅してしまったことは、紛れもない事実です。数々の新種恐竜の発見に携わり、「ダイナソー小林」の異名を持つ北海道大学の小林快次教授はこう言っています。

「わたしが発掘調査をしているアラスカはとても寒い地域ですが、恐竜たちが生きていた時代は、季節によってはあたたかかったと考えられています。南極も同じような気候だったので、隕石衝突後も、もともとすずしいところにくらしていた恐竜であれば、『衝突の冬』を生き延びていた可能性があります。しかし、生きのこっていた恐竜たちにも、隕石衝突後には大きな環境の変化がおとずれたでしょう。恐竜にも食べ物の好みがあり、その食べ物がなくなってしまったことで、数十年、数百年、数千年単位で恐竜が減り、絶滅してしまったとされています」（『講談社の動く図鑑MOVE 恐竜２最新研究新訂版』p83）

最後の恐竜は、いつ、どこで息絶えたのか。新たな証拠が見つかり、さらに研究が進めば、そのナゾが解き明かされる日が来るかもしれません。