あの日、あの時、胸躍らせて目撃したのは何だったのか? 今回取り上げるのは「1月12日」(2013年)。
心理カウンセラーである南風原(はいばら)仁、トラベルカルチャー誌のライターである渡良瀬絵美子、バー「トビラ」のマスターである白山正平が、怪獣の関わる不可思議な事件を調査していく。
どこかに向かって、ひたすら歩き続ける怪獣・ニルワニエが現れた。だが、ニルワニエをめぐり、怪獣保護を訴える市民団体と、怪獣排除を訴える人々が衝突してしまう。ニルワニエの目的とは?
街を行進する怪獣
以前、超常現象の研究を行っていた仁は、怪獣の残した粘液を採取。一方、トビラで中継映像を見ていた絵美子と正平は、怪獣が街の破壊を避けるようにして歩いていることに気づく。だが、現場では怪獣に物を投げつける人々が現れてしまった。この社会では、怪獣による被害が確かに存在しており、怪獣を嫌悪する人々も一定数いるのだ。
すると、その騒動に小林という男性が出くわした。小林は、怪獣災害で妻と娘を亡くしており、仁のカウンセリングを受けていた患者だった。小林は仁に電話で「もうカウンセリングはいい」と伝えると、怪獣の後を追ったのだった。
仁は、怪獣の残した体液に含まれる細胞が、かつて霊場として敬われていた「竜ヶ森」のある方角に移動しようとしていることを突きとめる。怪獣の目的地は竜ヶ森だったのだ。一方、怪獣の周りには、怪獣保護を訴える市民団体も集まってきた。彼らは、怪獣排斥を訴える人々と衝突。ふたつのグループは言い合いになる。だが、当の怪獣はそんな人間同士の争いを気にする素振りも見せず、ただ歩みを進めるのだった。