高濱正伸先生が考える 子どもの“苦手意識”を克服する方法とは

子どもの苦手に向き合うヒント〜高濱正伸の 毎日子育てガッツポーズ〜

花まる学習会代表の高濱正伸先生。  撮影:嶋田礼奈
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子どもの「好き、嫌い」は、自我の目覚めとともに、多岐にわたっていきますよね。乳幼児期は、食べ物の好き嫌いを、なんとか克服させてきました。

同じように、これからぶち当たるであろう「算数は嫌い」「体育は苦手」といった‶嫌い″‶苦手″も、親の努力でなんとか回避できるものなのでしょうか……。教えてください、高濱先生!

(「たのしい幼稚園」2月号(2020年12月26日発売)掲載)より

‶苦手″をコンプレックスにしてしまわない

そもそも‶苦手″と感じるスタートは、他人との比較です。

どんな分野にでも、‶できる″人と‶できない″人が半数ずつくらい存在するものなので、スーパーマンでもない限り、他者と比べて劣っている分野があることは、しかたがないこと。人より上手にできないと感じることはあって当然。ただ、その‶苦手″をコンプレックスにして、心を縛ってしまわないようにすることが大切なのです。

サッカー教室に通っている子どもが「Aくんはリフティングが10回できるのに僕は……」と感じるところまではいいんです。肝心なのは、リフティングができないことがコンプレックスになって、サッカー自体を嫌いにならないようにすることです。そのためには、親や周囲の対応が重要になってきます!

多くの親が‶やらかして″しまう対応はふたつ。

①「Aくんって上手ね……」と、遠い目をしてさびしそうにつぶやいてしまうこと。これは、子どもにとって大ショック。子どもは、だれよりもお母さんにほめられたり、認められたりしたくてがんばっている生き物。リフティングができないことはたいしたことじゃないと思っていたのに、暗い気持ちになって「サッカーはやめる」というところまでいっきに落ち込んでしまう場合もあります。

②「いいじゃない! 〇くんの走っている姿かっこいいよ。ママ好きだな」と、変にやさしく、抽象的にほめる対応。お母さんとしては、元気づけているつもりなのですが、子どもはそれを「配慮」と見抜き、‶できない自分″が‶かわいそうなヤツ″なんだという意識にさせられてしまうことが少なくありません。

ある時、とても優秀な姉を持つ青年が、幼少期に受けた心の傷を吐露してくれました。いつものように姉の優秀さを褒めちぎる親戚に対してお母さんが、傍らにいた彼に目をやりながら「でも、この子はとてもやさしい子なんです」と言ったそうです。

彼は「‶でも″って? 僕のいいところはやさしいとこだけ!?」と、ひどく傷つき、心を閉ざしていったというのです。

子どもの心はとても繊細で敏感。お母さんは、何とか彼のことも話題にして気持ちよくさせてあげようと思ったのかもしれません。でも、逆効果になってしまうことがある。

このお母さんには、「この子は、メカに強いの。将来が楽しみだわ」などと、具体的な‶能力″でほめてあげてほしかったなと思いました。

直球でほめる!

何かできないことが見つかってくやしそうにしているときには、「でもここは……」と、むりやり‶ほめどころ″を見つけるのではなく、その場面では「くやしかったね」と、ただただ気持ちに寄り添って共感し、ぎゅっとしてあげるだけでいい。

そして、別の分野で本当にすばらしい面を見つけたり、子ども自身の‶伸び″や‶成果″が見つけられたりしたときに全力でほめたたえればいいんです! 

「クロールのフォームがすばらしいよ」など、子どもは何かひとつでも自信が持てて、好きな分野を見つけられれば、心を閉ざすことなく、前に進んでいく力を持ち続けられるものです!
配慮≠真心
まだできないことには、共感を。
落ち込んだ子どもの心は、自然に戻ってきます。
そして、別の分野でまっすぐほめる!=自信になる
写真協力:花まる学習会
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