ニース&モナコ取材旅行記 ~オーシャンズ2の冒険~ 第7回

はやみねかおる先生と担当編集が行く珍道中の旅!

第7回

Scene04 10月27日(土曜日) かじのろわいやる。(後編)

昼食も終え、いよいよカジノへ!

入り口で、黒服から手荷物検査とボディチェックを受ける。後で思い出したのだが、そのときぼくは刃物を持っていた。でも、没収されることなく入場できた。

いいのだろうか?(※良い子はぜったいにマネしないでね!)

入ったすぐのところまでは無料。奥に進むには、17ユーロ必要となる。この17ユーロのうち、7ユーロが入場料に当たり、10ユーロでカクテルを飲むかルーレットやカードで遊ぶか選ぶことができる。
カジノ・ド・モンテカルロのエントランス・ホール。
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いつもルーレット台などが置かれてる場所やレストランは、工事の関係で入れない。そのぶん、ふだんは入ることのできない奥の部屋へ入れてもらう。

カードの台が4つ。ルーレット台が2つ。あと、隣にカクテルを提供しているバー。

ぼくは、しばらくルーレットを見る。フランス語を話すおばさんが、丸いチップを数字の書かれたルーレット台に何枚か置いた。

ディーラーがルーレットを回し、ボールを入れる。

賭け方は、簡単に書くと2つ。ルーレットには、数字の書かれたポケットがついているので、ボールが落ちるポケットの数字を予想して賭ける方法。

もうひとつは、数字には赤か黒の色がついているので、どちらかの色に賭ける方法。勢いよく回っていたルーレットが止まり、ボールがポケットに落ちる。おばさんの賭けた数字ではない。

3人の高齢のクルピエが、グラウンド整備に使うトンボを小さくしたようなレーキで、チップを集める。

〈解説〉
⇒「クルピエ」はディーラーを指すフランス語で、ルーレットなどのカジノゲームを進行する人たちのこと。


おばさんを見ていると、ルーレット盤を4つに分割して、数字のグループを作って賭けているようだ。なかなか頭のいい賭け方だと思う。

でも、ディーラーのほうが、一枚上手。3回に1回ぐらい勝たせて、最終的にはチップを全部奪い取ってしまった。(このおばさんは、あとでブラックジャックもやっていたが、やっぱり全部取られていた)

ディーラーが、ぼくに、「いかがですか?」と賭けるように誘ってくるが、ぼくは笑顔で断る。「赤の20」を連続で出したり、いいタイミングで「0」を出すディーラーと、勝負する気にはならない。

しばらく見ていて、生涯ルーレットはやらないほうがいいという結論を出す。(人間、堅実に働くのが大切だと思います)

午後7時からは、タキシード着用の真剣なカジノが開かれる。一般客相手のディラーでも、あれだけの技術を持ってるんだ。7時からのカジノを想像すると、ちょっと怖くなる。

背後に見えるのが、モナコGPで使われるヘアピン

山室さんも垂水さんも、ギャンブルには手を出さない。10ユーロでカクテルを飲むことにする。垂水さんが、6ユーロプラスしてドライマティーニを注文する。ぼくも真似をして、6ユーロ追加する。

ドライマティーニは美味しかったけど、量が少ない。二口で、飲み干してしまった。(あと、高い……)。

山室さんは、ギムレットを注文する。

「早すぎませんか?」

ぼくの台詞、山室さんはわかってくれたけど、若い垂水さんには通じなかった。

ぼくは、チップは丸いコインのような形のものだけだと思っていた。ところが、入り口の人が教えてくれたところによると、高額チップは丸くなく、長方形の札のような形をしていた。

カジノを出るとき、2000ユーロを賭けている客がいた。1ユーロ130円とすると、26万円! 一勝負に、26万円!

1円でも安いインスタントラーメン5袋セットを探すことに人生を賭けているぼくに、カジノは縁のない世界だということがわかった。 

カジノを出て、隣にある小さめのカジノも見る。こちらは入場料もなく、山室さん曰く「パチンコ屋さんみたいなものですね」。

確かに、雰囲気が違う。

ディーラーは不在で、客は、機械相手にギャンブルを楽しんでいる。金が賭けられてなかったら、ゲームセンターと変わらない。ルーレットも、テレビゲームのように、モニタの中で回っていた。

100番のバスで、ニースに帰る。考えてみたら、フランスからモナコ公国と、国から国に行っていたわけだ。でも、バスで気軽に行き来できるため、隣町に遊びに行ったような感じ。

ニースに帰ってから、本屋さんへ。垂水さん曰く「オタク向けの品揃えです」。たしかに、日本で人気のマンガが揃っている。少女マンガは、知らないもののほうが多かった。

不思議だったのは、「はじめの一歩」のフランス語版。119巻が置いてあったのだが、1巻から118巻までは、どこにもない。お店の人に言ったら、出してもらえたのだろうか?

何を買うか迷った末、『さすらいエマノン』と孤独のグルメの『ヴェネツィア』を買った。旅先で本を買うのは、実に久しぶり(荷物が重くなるので、本は買わないようにしてるんです)。

垂水さんと一緒にとる最後の夕食。

彼のおかげで、ニース住人の生の声を聞くことができた。それは、ガイドブックには載っていないような貴重な情報(ひょっとすると載ってるかもしれないけど、ぼくはガイドブックを読まないので――)。

ただ残念なのは、ぼくに受け止めるだけの知性や教養、記憶力がなかったこと……。

本当にすみません。

もし、もう一度、はやみねを案内してくださるのなら、今度は奥さんとモン・サン=ミシェルを見にくるので、よろしくお願いします。

ホテルの部屋に戻ると、今日もサルサの店は賑やかに営業している。そういえば、朝、山室さんが「部屋にポルターガイストが出るんです……」と言っていた。

山室さんは、心霊現象の類いが苦手の人。明日の朝、どうだったのかを訊くのが楽しみだ。
27日のヘルスケア
 ウォーキング+ランニングの距離   16.3km
 歩数   2万7091歩
オーシャンズ2の冒険は、まだまだ続きます。
※この連載は、2018年の「ニース&モナコ取材旅行記」を再構成したものです。
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はやみね かおる

小説家

1964年、三重県に生まれる。三重大学教育学部を卒業後、小学校の教師となり、クラスの本ぎらいの子どもたちを夢中にさせる本をさがすうちに、みずから書きはじめる。「怪盗道化師」で第30回講談社児童文学新人賞に入選。 「名探偵夢水清志郎事件ノート」「怪盗クイーン」「都会のトム&ソーヤ」「少年名探偵虹北恭助の冒険」などのシリーズのほか、『バイバイ スクール』『オタカラウォーズ』『ぼくと未来屋の夏』『令夢の世界はスリップする』(以上、すべて講談社)『モナミシリーズ』(角川つばさ文庫)『奇譚ルーム』(朝日新聞出版)などの作品がある。 子ども自身が選ぶ、うつのみやこども賞を4回受賞。漫画版「名探偵夢水清志郎事件ノート」(原作/はやみねかおる、漫画/えぬえけい 講談社)で第33回講談社漫画賞(児童部門)受賞。第61回野間児童文芸賞特別賞受賞。

1964年、三重県に生まれる。三重大学教育学部を卒業後、小学校の教師となり、クラスの本ぎらいの子どもたちを夢中にさせる本をさがすうちに、みずから書きはじめる。「怪盗道化師」で第30回講談社児童文学新人賞に入選。 「名探偵夢水清志郎事件ノート」「怪盗クイーン」「都会のトム&ソーヤ」「少年名探偵虹北恭助の冒険」などのシリーズのほか、『バイバイ スクール』『オタカラウォーズ』『ぼくと未来屋の夏』『令夢の世界はスリップする』(以上、すべて講談社)『モナミシリーズ』(角川つばさ文庫)『奇譚ルーム』(朝日新聞出版)などの作品がある。 子ども自身が選ぶ、うつのみやこども賞を4回受賞。漫画版「名探偵夢水清志郎事件ノート」(原作/はやみねかおる、漫画/えぬえけい 講談社)で第33回講談社漫画賞(児童部門)受賞。第61回野間児童文芸賞特別賞受賞。